このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
群馬県南牧村(なんもくむら)の御柱 -2016.4.17- 御柱といえば信州諏訪大社の御柱祭が有名だ。テレビで放映し新聞やインターネットでも報道される。 しかし、時が近づくにつれ、氏子たちはそわそわと腰が落ち着かなくなってきた。御柱祭の内容は諏訪大社とほとんど同じで、寅年と申年の6年ごとに行われる。2016年はその申年である。地元の氏子は20名程しかいなかったが、各メディアへの前宣伝が功を奏して、村内外からの参加希望者が400人ほど集まったという。 上信越自動車道の下仁田ICを降り、ひたすら道路標識を頼りに南牧村を目指す。砥沢の集落を過ぎて、南牧村民族資料館の手前を右に分岐して、県道201号を北進する。勾配が増して、曲がりくねった狭隘な道をどん詰まりまで走る。やたらカーブミラーが多く徐行の繰り返しである。 漸く前方に色とりどりの法被を着た人だかりが見えた。星尾諏訪神社であることは明らかだ。祭事開始は8:30と聞いていたので、木落坂の線ヶ滝に直行する。県道は終点となり、結構広い駐車場があった。 駐車場に車を置いて周辺を見回すと、山肌はすべて杉の森である。荒船山(1,422.5m)と奇峰の立岩(1,265m)への登山口になっている。
歩いて100mほど下ると、「線ヶ滝」の説明板や東屋と大日如来の立像が立っている。線ヶ滝の観瀑台と直下に螺旋階段の展望台もある。この滝は群馬県指定天然記念物である。南牧川支流の星尾川の流れを切って走る断層帯に沿って形成された断崖にかかる落差35mの滝である。地質学に興味のある人ならずとも一見に値する。ちょうどアカヤシオの花が咲いていた。
東屋から道路を挟んで山側を見ると、切り倒された杉の大木が切口を道路側に見せていた。これが新しい御柱であり、同時に木落坂であろう。道路から石段を上ると小さな祠があった。星尾諏訪神社の奥社である。早い時間に着いたので、祭事の関係者は誰もいなかった。昨年11月に切り倒して木落坂の上にロープで固定されていたのだろう。
祭事は8:30に始まった。実行委員長の祭事に関する歴史と意義の解説があり、宮司による祝詞お祓いの後、木落としの態勢に入った。
道の反対側に大日如来の立像があり、それを目標にして引っぱらせた。
狙いどおりに突き出されて、一瞬の元に路肩に突き刺さった。これより里曳きであるが、柱を梃子で操作して道なりに向きを変える。氏子が威勢のいい木遣り唄と掛け声のもとに、里曳きが開始された。
カーブが多く、その度に勢子が梃子で切り返す。技と体力を必要とし危険を伴うため、氏子は大変だったに違いない。案の定、手綱ロープが切れて、高齢の勢子が転倒し、眼鏡をとばされた。幸い頬骨が切れた程度で、引き続き、勢子役を全うしたのだから流石である。全行程を人力で引くのは困難なため、人家のない所はクレーン車で牽引した。つづら折れで坂道を下って行く。上の道から眺める。
この辺りから後方に奇峰-立岩が見える。南牧村星尾地区は山奥で、古民家が多い。
諏訪神社まで約1.7kmの道のりは賑やかな行列ができた。
神社の脇まで曳かれてきた御柱は、集落の人たちによって皮剥ぎが行なわれた。皮は縁起物として家に持ち帰れる。先端部分は7角形の角錐に削られ、氏子の子供達によってクレヨンで7色に塗られた。
神社を眺める山道から左手に立岩が見える。右手に神社
狭い境内だが正面に鳥居がある。それをくぐると参道の右側に6年前に建てられた旧御柱が立っている。これを撤去する作業が始まる。
旧御柱をクレーンで吊り上げ支持し、チェーンソーで根元を輪切りにする。
根っこが残り、本体を吊り上げ道路側に旋廻する。
次に残った根っこの撤去。これもクレーンで道路側に移動する。その穴は埋め戻し、その隣りに新柱用の穴を新たに掘削する。その理由は撤去された穴は、軟弱になっているからである。新しい穴は強固な地盤で約1.5mの深さに手掘りした。
その頃には、新柱の皮剥ぎは終了していた。クレーで吊り上げ、新しい穴の上に慎重に旋回していく。梃子で制御しながら慎重にクレーンを操作する。
柱は次第に垂直に近づき、遂に柱の根元が底に到達する。さらに左右前後から建ち具合を確認し、その上で、石を投げ込む。ワイヤーを緩めると、それがソメイヨシノの梢に当たり、花吹雪が舞い上がり、観衆から一斉に拍手と万歳が沸き起こった。
この後、地表の地均しをし、竹と注連縄で飾って宮司のお祓いと祝詞で建御柱の祭事が13:30頃に無事終了した。
氏子総代長の掛川宏一郎氏(79歳)は51回目の御柱祭が無事終了したことの感謝を述べ、かつ52回目に向けて伝統文化の継承を維持すべく、今回と同じく村外の人たちにも協力を呼びかけた。 |
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