このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

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12.11.4.(日) 一ノ倉沢

  1. 今年は紅葉の時期が一週間ほど遅れた。僕の住んでいるところから見える赤城山の染まり具合から、頃よしと判断し一ノ倉沢を訪問した。
  2. 関越自動車道は、紅葉狩りの渋滞が予想された。僕は高崎インターチェンジを6時頃ゲートイン。北上する車の列に加わった。この時間帯は埼玉県のナンバーが多い。中には東京・神奈川・千葉県の車もいる。それらの車が競うように僕の車を追い越していく。渋川伊香保インターチェンジから山岳部に入る。ここから80km区間となるが、その速度は落ちない。しかし、各インターチェンジで下りる車が分散的に増加して、水上インターチェンジの出口ゲートは10台程度で渋滞は避けられた。
  3. 上越国境(くにざかい)の連峰は、鮮やかな青空に明瞭な稜線を描いている。一ノ倉沢は谷川岳のロッククライミングの拠点である。その谷川岳は熊谷市辺りからも遠望できる。北上するに従ってその姿が大きくなると、猫のような双耳峰が見えて来た。
  4. 水上インターチェンジを下りて国道291号線に出ると、そこは高台になっている。そして真正面に双耳峰が迫っていた。オキの耳・トマの耳である。
  5. 水上温泉・湯檜曽温泉を通過して、上越線の「どあい(土合)」駅前に至るも人影なし。更に谷川岳ロープウェイ駅に走らせると、駐車場はかなりの車であった。
  6. ここで判断を必要とした。一ノ倉沢まで車で行くか歩くかである。結局このまま車を走らせることにした。一つの理由は、山を照らす太陽の射し具合から、早く行くべきだと計算したからである。
  7. ロープウェイ駅から、砂利道の林道になる。幅員は狭くなってカーブの連続である。昨夜の雨でところどころに水溜りがある。歩いている人もいるので低速で走る。
  8. 林道はほぼ等高線に沿っている。どこもかしこも紅葉の原生林が広がっている。ブナ・トチ・サワグルミ・キハダ等々、照葉もさりながら逆光を受けた幹が、黒く沈んでアクセントをつけている。澄んだ空気を突き刺すように、透明の陽光が森に降り注ぐ。黄色の葉がその光を透過して、あらたな光源となっているが如くである。

    照葉の峡谷
    照葉の峡谷


  9. はるかな谷底は湯檜曽川の渓流である。今夏、埼玉県の子供たちが鉄砲水で遭難している。その悲劇を包んで、季節の移り変りは確実に時を刻んでいる。
  10. 林道を4kmほど走ると、その行き止まりが一ノ倉沢の駐車場になっている。ほぼ満車であったが幸い停めることができた。
  11. 一ノ倉沢の岩壁は強烈な朝日で輝いている。すでに多くの人がカメラを向けていた。光線は岩壁に対して鋭角に射している。岩肌の凹部は濃い陰影を投げている。それらのコントラストは時間とともに変化していく。同位置に三脚を固定して、何回となくシャッターを切るのである。

    一ノ倉
    一ノ倉の岩壁


  12. 山は晩秋のたたずまいであるが、もうすぐ初冠雪を迎えるであろう。ガレには残雪のブロックが見えるが、まさに万年雪となるのだ。
  13. 昭和30年台初頭は、ロッククライミングの黎明期であった。ナイロンザイルが登場し、多くの若者が競い合って岩壁に取り付いた。そして数多くの命が露と消えた。
  14. 一ノ倉沢の細い流れを渡った先に、衝立状の鏡面岩がある。壁面には、命をなくしたクライマーの慰霊レリーフが何枚も嵌め込まれている。
  15. 一ノ倉沢を後にして、「どあい」駅を見学する。「日本一のモグラ駅」として宣伝している。マイカーが普及していない頃は、たいへん賑わっていたに違いない。谷川岳の登山口であるからだ。ニックネームのよってきたるデータは次のとおり。

    地中階段の長さ・段数338m462段

    地下ホーム
    地下ホームから地上出口を見上げる

    連絡通路の長さ・段数143m 24段
    下りホームの標高583.0m
    駅舎の標高653.7m
    駅舎・下りホームの標高差 70.7m


  16. たまたま下り8時32分の列車が到着した。驚いたことに21名の観光客が降りた。登山ないしはトレッキングの客である。僕はせいぜい1、2名だろうと思っていたのである。中には再来のグループもいた。
  17. 僕はこのあと、水上町から関越自動車道の谷川岳PA付近から、仏岩トンネルを貫けて猿ケ京温泉に至る山岳道路を走った。この道路もすばらしい紅葉で、連なる山並みがまた美しい。トンネル坑口の駐車場には4,5台の車しかいない。ライダーにとっても絶好のツーリングコースになるだろうと思われた。
  18. 今回のコース沿いには沢山の温泉がある。露天風呂に散る木の葉を愛でて帰られてはいかがであろうか。

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