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13.10.21 照葉峡 - 関越自動車道を北上し、水上インターチェンジを下りる。すでに流出ランプウェイの中ほどから車がつながっており、出口ブースに達するのにしばらく時間がかかった。首都圏の県外車が多い。
- インターチェンジから水上温泉はすぐそこだ。草津・伊香保と並んで上州の三大温泉地を誇っている。前二者の場合は通り抜けの観光道路を擁しているのに対して、水上温泉の場合は国道291号線が谷川連峰によって行く手を阻まれて行き止まりであるだけに、集客力の点で分が悪い。しかし、山岳美を味わうには絶好のロケーションである。
- ルートの選択は大きく分けて二つある。一つは国道291号を北上する谷川岳方面、もう一つは途中から分岐して利根川本流を遡上する奥利根方面である。この時期、各支流の上流側から逐次、紅葉前線が下降してくる。どこを訪れるかは人それぞれの選択となる。妻と僕は奥利根方面を目差した。
- 上州の名峰、武尊山(2,158m)を軸として、時計廻りに周遊するのである。これはもう、贅の限りを尽しているコースといっていい。道はオール舗装である。途中に三箇所のダム湖があり、憩いの場を提供してくれる。
- 沿道には鄙びた温泉地と民宿が看板を出している。今はキノコと川魚で秋の収穫祭的な料理を味わえる。藤原湖を過ぎて洞元湖までくると、路肩に車を止めて写真を撮っている人が多い。湖岸道路の幅員も広いので交通渋滞の心配もない。湖面に鏡面反射する紅葉が、えも言われぬ錦を織りなしてくれるのである。
洞元湖
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- すでにここから奈良俣ダムが見えている。堤高で国内第二位のロックフィルダムである。ダムの直下から道は右に折れて東に向かう。利根川の支流—湯ノ小屋川の渓流を右に見ながら高度をあげて行く。この峡谷を照葉(てりは)峡という。紅葉狩りの一番の見所である。旅行誌等で「狸のお宿」として紹介されている温泉宿もある。
奈良俣ダム
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狸のお宿の入口
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- 渓谷の紅葉はまさに最盛期であった。途中、寄り道の形でならまた湖を見学する。奈良俣ダムの堰堤上に巨大な岩石を並べて鎖を張り、眺望たぐいまれな展望台になっている。ダムの上下を結ぶ石畳のアプローチもあって、歩行できるようになっている。現に何人かの人たちが下のほうに豆粒のように歩いているのが見えた。ダムの上流は満々と水を湛えた湖だ。下流は紅葉に燃える渓谷がくねくねと続いているのである。ダムサイトには、資料館やオートキャンプ場があって楽しい。
照葉峡1
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照葉峡2
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- 再び周遊コースに戻って、照葉峡を遡上するかのごとく走行する。道幅は次第に狭くなって対向車とのすれ違いが困難なところもあるが、それも大した距離ではなく、上に行くとまた広くなる。今日は、地元関係者が交互通行の規制をしており、さほど渋滞は起きなかった。なんせ少し待たされても、その間、渓流美を楽しんでいればよいのである。
- 高度を増し標高1,400m辺りが紅葉線の上限となっっていた。山肌には枯葉が積もり、窓を開けると冷たい風が肌に沁みる。それにしてもブナの原生林のなんと美しいことか。樹木の葉が落ちると樹林帯の見通しが良くなって、山の稜線まで累々と連なる大樹の森に、神々しいまでのオーラを感ずるのである。
ブナの原生林
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- 順調に高度を上げて、やがて坤六(こんろく)峠に着く。標高約1,620m、北の方角、樹幹越しに尾瀬ヶ原の流域を囲む山々が見える。稜線が緑色に輝いているのは、笹の葉に日差しが反射しているのであろう。東西に長い稜線の西側のピークは至仏山である。
- 坤六峠は分水嶺で川の流れは逆になるが、いくつもの支流を集めて片品川となり、沼田市付近で利根川本流に合流する。この間、再び紅葉の渓谷を堪能することになる。途中、尾瀬の入口となる鳩待峠への分岐があり、この辺りから道は緩やかになる。唐松林が黄色に染まってこれもまた美しい。ここで持参の握り飯で昼食を摂った。
唐松林
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- ここからさらに下ると沼田までの間に三つの大きな分岐があって、尾瀬沼・日光・赤城山各方面へのアプローチになっている。幹線は国道120号、途中、吹割(ふきわれ)の滝という名瀑がある。これは平成12年にNHKの大河ドラマ、葵 徳川三代の導入画面に登場していたので思い出していただきたい。この近くには国道120号線沿いで一番大きな老神温泉がある。
- 結局、僕たちは沼田市に出ないで、赤城山の北面から南面に抜ける山岳道路を走り、ここでもみたび紅葉をめでて走行距離207kmのツーリングを終えた。
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