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15.9.15 日光白根山 - 前回の本白根山(もとしらねさん)に続いて、今回は「日光白根山」をご紹介しよう。この山塊は「草津白根山」に対応した名称である。図-1を見ると分かるように、群馬県と栃木県の県境は、山塊の背骨すなわち分水界によって定められている。
- 日光白根山登山コースは山頂ロープウェー駅→大日如来→白根山→座禅山→山頂ロープウェー駅とする(次図参照)。
図-2.日光白根山周遊コース(カシミール3D) |
- 今年の変な天候は、殊に山岳部にお天道様が現れる日が少なかった。昨日群馬県平野部が久々に強い日差しが甦ったので、今日は前から決めていた、日光白根山を目指した。
- ところが丸沼高原スキー場のロープウェーに乗って山頂駅(2,000m)までくると、どうも様相が芳しくない。山頂に雲が垂れ込めて来たらしい。左から北峰・主峰・南峰であるが、その北峰から雲がかかり始めている。
ロープウェー山頂駅より白根山
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- 8時出発。歩を速めてオオシラビソの樹林帯を進む。この辺は熔岩台地で傾斜が緩く歩きやすい。冷たい過冷却の空気が顔を濡らす。サルオガセもじっとりと湿って、ミルク色の霧が濃淡を作って静かに漂って行く。遠くの景色は見えようも無かった。
- 樹林帯を抜けた所で休憩を取ったが、依然として雲の中。急斜面のザレ場になって、ひたすら高度を上げる。ザラザラと靴が後ずさりして、今度は噴出する汗で下着が肌にまとわりついた。
- 今頃の季節は高山植物は少ない。樹林帯にはカニコウモリの群落が見られたが、ハンゴウソウは黄花が終わりに近づいていた。そんな中で慰めになったのが、金色に輝く熔岩であった。岩の表面に金箔のように張り付いている夥しい数の薄膜状の苔が、自ら光を発しているかのように不思議な色合いを呈しているのである。
- やがて斜面が丸みを帯びて勾配が小さくなった頃、突如として鳥居とホコラが現れた。ここが南峰であろう。濃いガスで見えないが、この辺に山頂がある筈だ。岩稜でウロチョロしたが分からず、ここはやはりコンパスと地形図の出番と心得た。しばらくするとガスが薄くなって見計らった方角に山頂が姿を現した。
ガスの山頂に人が群れる |
- 山頂に9時45分着、いやに早く着いてしまった。狭い岩稜の頂きに、「日光白根山2,578m」の小さな標識が立っていた。今ここは厚い雲の中にある。
山頂の視界はミルクの様相
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- 山頂は狭いので、北峰と呼ばれる岩稜に移動した。まだ10時を廻ったばかりだが、早い昼食にした。ここで少し時間をかければ、そのうちにガスが消えるかもしれないというわけだ。実際期待どおりになって、眼下に大キレットが現れた。次第に遠望も利いてきて、左手の五色山(2,379m)から右手の前白根山(2,373m)の緩やかな稜線も見えてきた。
- 僕は全く気が付かなかったのであるが、傍らにいた男性が「中禅寺湖も見えますね。」という。前白根山の右手に白く見える空だとばかり思っていたのが、成る程、湖を長手方向に見ていたから空と勘違いしたというわけだ。これと同じことを小学校の遠足で体験したことが思い出された。長野県の塩尻峠で、青空だと思ったのが実は諏訪湖であったことを。
雲の切れ目に前白根山を捉える |
- ガスは更に薄くなって、左手に弥陀ケ池、右手に五色沼も姿を現した。この池沼は白根山ー座禅山ー五色山ー前白根山によって縁取られた、外輪山の中にある火口湖である。白根山は明治22年(1889)が最後の噴火である。
弥陀ケ池
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五色沼 |
- 白根山の北斜面は、裸岩の点在したゴウロの道だ。歩行による落石をしばしば発生させる危険地帯である。あちこちのキレットを眺めつつ高度を下げると、低木帯に変わる。振り返って山頂を見上げると、再びガスに覆われてきた。
山頂北斜面の大キレット
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樹林帯から山頂側を振り返る
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- 弥陀ケ池が近くなってきた。樹林の道を枝を除けつつ下る。ダケカンバ、山桜が多く山頂北斜面を雪崩れる雪圧で幹が地上を這っている。
弥陀ケ池の左に座禅山 |
圧雪で幹が這う |
- 鞍部から座禅山に向かう。割と平坦な斜面を上り切ると、底の見えない火口である。火口壁は木に覆われているが不気味であった。
座禅山は地獄穴
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ここを過ぎるとシラビソ樹林に変わる。雲が垂れ込めてきて、眼鏡が水滴に濡れてきた。倒木が夥しい。朽ちて苔むし、若木に世代交代している様が観察できる。熔岩の洞穴にはヒカリゴケが発生している。
倒木に苔むすシラビソ樹海
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ロープウェー山頂駅に戻ったのは12時であった。
(標準のコースタイムは4時間20分である。)
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