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上州スポット
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15.10.26.(日) 湯桧曽川

  1. 湯桧曽川」・・・。響きのいい呼び名である。関越自動車道を水上ICで下り、国道291号を北上する。川の名称の由来となった湯桧曽温泉を通過する。鄙びた湯治場を通り抜けた辺りに、「湯の陣」という近代的な建物もある。狭隘な谷筋を抜けると少し開けた場所に土合駅だ。踏切を渡って急な道を登って行くと、谷川岳ロープウェー土合口駅に着く。

    湯桧曽川位置図
    湯桧曽川位置図(mapion)

  1. 駅の手前に立体駐車場があって車はここに預ける。駐車料金500円はかなり安い。今回はロープウェー駅からマチガ沢までの往復ルートと芝倉沢までの時計廻りルートを選んだ。

    湯桧曽川周回図
    湯桧曽川周回図(カシミール3D)

  1. ロープウェー駅を出発して、すぐに谷川岳への西黒尾根登山口がある。これを見過ごして、一ノ倉沢まで舗装道路の車道を歩く。行楽シーズンは一般車は通行止めとなる。湯桧曽川を右下に俯瞰しながら、ほぼ同じ勾配で散策するコースである。
  2. マチガ沢は谷川岳から流れ下る沢だ。トマノ耳オキノ耳の双耳峰は雲が垂れ込めている。落石に覆われた万年雪が見える。
  3. 一ノ倉沢も同様であった。舗装道路はここで尽きる。この先は砂利道だ。

    マチガ沢
    マチガ沢

    一ノ倉沢
    一ノ倉沢
  1. 沢の砂防堤を渡った先には、垂直の岩が屏風状に連なっている。ここに遭難者のレリーフがいくつも嵌め込まれている。昭和40年代が多い。まさにロッククライミング華やかなりし頃である。多数の若者が墜落して命を落としている。その頃の同年代者が中高年の登山者として今あちこちの山を楽しんでいるのだ。

  2. しばらく行くと、「旧清水越国道の石垣」なる標柱がある。成る程、若干崩れかかった苔むす石積みがあった。旧国道(清水街道)として、江戸時代には盛んに往来していたのだろう。

  3. 現在の国道291号がこれに置き換えられたものと思っていい。国道291号は起点が前橋市、終点が柏崎市として指定されている。経由地は沼田市ー六日町ー小千谷市である。道路マップを見ると、未整備区間は、清水峠(1,441m)をピークとする南北区間、すなわち上越国境(くにざかい)の山岳部である。関越自動車道がある現在、国道291号の全通は幻に終わるのであろうか。

    遭難レリーフ
    遭難レリーフ

    旧国道の標柱
    旧国道の標柱

  1. 旧国道をこのまま進めば、蓬峠さらには清水峠に行ける。今回は周回コースなので、標識の右を辿る。急な斜面を下ると間もなく低地の林間に二つの山小屋が見えた。

    清水峠標識
    右の斜面を下る

  1. JR見張小屋紅芝寮(こうしりょう)である。前者はJR東日本の送電線の保守点検をする為の管理小屋であり、後者は東京都武蔵野市の成蹊学園が1932年9月に建設したもので、成蹊教育実践の場として利用されている。双方とも使用目的は違っても、役割の重要性は極めて重いものがある。照葉の林間に調和した佇まいである。

    JR見張小屋
    JR見張小屋

    紅芝寮
    紅芝寮

  1. 周回コースはここで折り返す。湯桧曽川を左に、着かず離れずの道である。そろそろ枯葉の落ちた小道をガマ蛙がカサコソと動いていく。

    ガマ蛙
    ガマ蛙

    幽ノ沢付近
    幽ノ沢付近

  1. 一ノ倉沢の岩壁は雲に隠れていた。出合いから沢の上部は紅葉のさ中にあった。

    みちしるべ
    センスのいい標識

    照葉の一ノ倉
    照葉の一ノ倉沢
  1. 一ノ倉沢の出合いは広川原になっている。水量によっては中州ともなる場所には、ヤナギの木が生えている。それらの木の根元には、夥しい数の流木がからんでいる。上流から流れて来たものだ。根が付いているということは、鉄砲水によって根こそぎ押し倒されたことを物語っている。

  2. 思い出すのは、2000年8月6日に、埼玉県のサッカー少年団一行や、大学生6人が鉄砲水に襲われた事故である。茂倉岳(1977.8m)山頂付近に降った雨水が芝倉沢の残雪を崩壊し、自然のダムを形成して水をドンドン溜める。やがて雪のダムは持ちこたえられなくなって一気に流下し、雪塊もろとも湯檜曽川に流入したというのが鉄砲水の原因である。

  3. 谷川岳の峰々は、巨大な岩壁群が連なっている。降った雨はほとんどが表流水で、滝のように一気に沢に流れ込む。降った雪はホッパーさながら容赦なく谷筋に抛り込まれるのである。2,000mに満たない山であるが、万年雪ができるゆえんだ。

  4. この事故を教訓に水上町は、更なる注意喚起の立札を設置した。

    流木
    夥しい数の流木

    鉄砲水注意
    鉄砲水注意の札
  1. 今回はマチガ沢出合いから旧国道に戻って、谷川岳ロープウェー土合口駅に戻る。このマチガ沢でも、鉄砲水によって、そこかしこの立ち木が薙ぎ倒されているのが数多く見られた。

マチガ沢出合
マチガ沢出合付近

ロープウェー駅付近
ロープウェー駅付近
  1. 今回の周回コースは特別なアルバイトを要せず、トレッキングのようなものである。紅葉を楽しみ、遭難者を追悼し、江戸時代の往還に想いをはせ、水源地の清冽な流れに心満たされる。そんな散策もあっていい。

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