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八ッ場ダム/シリーズ2<27.9.23>
ーダム建設に翻弄される長野原町ー

 頃は青葉繁る時期、平成22年(2010)に八ッ場(やんば)ダムを取材してから5年目の再訪となった。関越自動車道の渋川ICから利根川支流の吾妻川に沿って、国道353号を西へ向かう。前回と違うのは国道145号とJR吾妻線が 東吾妻町においてルートが変ったことだ。国道は吾妻川の左岸側を、鉄道は右岸側を、いずれもダムの水面標高よりも高い位置に通された。

 その新国道を長野原町に入る。茂四郎トンネルを抜けて、直ぐに左折する。そこにはダム本体工事のケーブルクレーンやクローラクレーンなどが稼動している光景があった。吾妻川の両岸が迫り、狭隘な吾妻峡の上流地点である。
 その工事現場を見下ろす第二展望台が最近完成した。展望台からすぐ眼前に見えるのは、左岸のコンクリートを打設するために岩盤を露出させる作業である。
 右岸も同様の工事が行なわれているのだが、日が当たらないため写真の撮影はできなかった。


ダム本体工事(第二展望台から)

 同じ展望台から上流側を見ると、すでに完成している八ッ場(やんば)大橋が見える。


撤去された居住地(第二展望台から)

 中央の整地された部分には旧国道と旧鉄道が通っていた。新国道は橋の右側に移り、新鉄道は橋の左側に敷設された。住民は両岸の高みに移住している。離村した住民も多い。

 第一展望台は八ッ場大橋の橋上にあり、整地された旧居住地が真下に俯瞰できる。左側は拠水林に囲まれた吾妻川である。


旧居住地が眼下に見える(第一展望台から)

 これらの場所はダム完成後に水没することになる。その意味では、この写真は貴重な記憶遺産になるに違いない。
 八ッ場大橋の上流側に出来たのが不動大橋(供用前の2号橋)である。そして左岸の橋のたもとに出来たのが、道の駅八ッ場ふるさと舘。この写真はふるさと舘の足湯から撮ったものである。


不動大橋

 道の駅から新国道145号を上流側に行けば、丸岩大橋を渡って有名な浅間酒造の前を通り、草津方面に至る。

 2014.年8月、八ッ場ダム本体工事を清水建設JVが落札。同年10月1日、JR吾妻線の付け替え工事完了に伴い、河原湯温泉の新駅開業。27年1月、ダムの基礎掘削のための発破作業開始。強制収容を視野に入れた土地収用手続を開始。

 前回の取材以後、土地水没地区の居住民は逐次両岸の代替地に移転、または離村している。

 現在、問題になっていることがある。新居住地の整地に毒性の強い建設資材が使われた事件である。六価クロムやフッ素が含まれた鉄鋼スラグが使われたのである。発覚したのは、2014.年1月末。名古屋市に本社のある大同特殊鋼渋川工場が元凶である。そして1年半後の2015.9.11、群馬県が告発し、県警が強制捜査に乗り出したことが新聞で報じられた。今後の推移が注目されている。

【2015.11.14報道】
 11月13日、国・県・渋川市による有害鉄鋼スラグ問題の連絡会議が開催された。鉄鋼スラグは各所に使われているが、このうち八ッ場ダムの代替地や水没地で環境基準を超える有害物質が検出された4箇所を含む計5箇所について、スラグを撤去したことが報告された。さらに他の民有地など5箇所についても撤去を進めているという。

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