このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

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八ッ場ダム/シリーズ6<2017.9.22>
ーダム建設に翻弄される長野原町ー

<初めに>
 「八ッ場ダムファン倶楽部会員」として、今回は3回目の見学取材である。どういう訳か参加者は7人だけだった。予約するころに天候不順が続いたせいかもしれない。それに長靴を履いて単管足場を歩き回るというので恐れをなしたのであろう。現地へ着いたときに小雨が降り出して、レインウェアを持ってこなかった僕達夫婦も腰が引けたのである。

<見学行>
 現地到着が早かったので国道145号の茂四郎トンネルを抜けて、直ぐに左の無料展望台に上がった。吾妻川の左岸に小高い場所があり、ダム本体を高みから見下ろすことができる。「やんば見放台」とひょうきんなネーミングである。しかし全景が分り、しかも絶景である。手摺には工事の解説パネルが掲示されていて、理解に役立っている。左岸の台地にセメント・骨材・コンクリートサイトがあり、右岸までケーブルクレーンが張られている。


セメント・骨材・コンクリートサイト

やんば見放台

 やんば見放台から吾妻川のダムサイトが見える。クレーンや、各種の機械が動いている。コンクリートの打設は、ダム高116mに対して約30%(35m)を突破しているとのこと。


見放台からの展望

 見放台から上流側の八ッ場を見る。真ん中の橋脚の下にコンクリートサイトが茶色く見えるが、ここは旧川原湯温泉駅があったところ。真ん中の橋脚と右側の橋脚の間に吾妻川を渡る廃線となった鉄橋が見える。


見放台から上流側

 「道の駅やんばふるさと館」に着いたころ小雨が降ってきた。見学バスにたったの7人が同乗し、不動大橋を右岸に渡る。
 警備員が侵入防止柵を開けてバスは吾妻川へ下りていく。不動大橋のほぼ真下に着いた。やがて湖水の底に埋まる。そのままバスは下流に移動。長野原町の遺跡発掘調査団が広範囲に発掘を行なっている。土地買収が行なわれたことによって、湖底に沈む前に悉皆調査を行なっているのだ。この調査によって、天明三年の浅間山大爆発の新事実が大量に明らかにされる筈だ。
 広範囲の撮影の為、人物がほとんど見えない。写真はケシ粒の大きさになってしまった。


広範囲の発掘1



広範囲の発掘2

 河床の村はもはや廃村になり、バス停留所が残っている。旧国道の橋も健在である。


バス停留所

橋と柵とガードレール

 吾妻川沿いの旧国道は浸食崖で景色の良い場所であるが、もうこの景色は見られなくなる。車窓から撮ったので、バス天井の照明器具が写ってしまった。


橋が見える

トンネルが見える

 別の場所でも発掘調査が行なわれていた。


これも発掘現場

 ダムサイトに着いた。足場だらけである。19日に報道陣に公開されたのがこの場所。グリーンの台車の上からゆっくりとスライドされて二つの放流管が設置された。


二つの放流管/上流側から見る

 放流管とは洪水調節が目的である。大雨が予測されたときに、予めダムの貯水量を減らしておけば、大雨のときの増水を防げる。


二つの放流管/斜め右上流側から見る

 ダムの底に仮排水路なるものがある。湖水側から放流側に設けたもので、築堤が高くなっていくに従い、ダムに水が貯まるのを防ぐためのものである。ダムの築堤が完成すれば、仮排水路は不要になるので、コンクリートを充填して塞いでしまう。


湖水側から放流側の自然光が見える

 放流側左岸には水力発電所の工事が行なわれている。上毛かるたに「♪理想の電化に電源群馬」という札がある。また一つ自然エネルギーの電気が生産されるのだ。発電所の方流水は吾妻峡を潤すことになる。右側の崖は小蓬莱(しょうほうらい)の見晴台でダムと対峙する位置にある。


左:発電所/右:小蓬莱

 ダムサイトから引き上げてバスに乗り、上流側に戻る。車窓から廃村になった旧国道を眺める。発掘現場の至近距離には旧JRの踏切りが残っている。


旧JRの踏切り

 バスの後窓から下流側を見る。手前に旧JRの鉄橋、すぐ向うに八ッ場大橋。吾妻川の拠水林に挟まれた浸食崖を早瀬が流れ下っている。
 旧国道沿いに旧やんば資料館が残っている。閉鎖されているが、壊すのは勿体無い感じ。


八ッ場大橋

旧やんば資料館

 旧道を高みに上がると第一小学校の古い校舎が残っていた。新校舎は道の駅やんばふるさと館の上にある林地区の河岸段丘に新築移転されている。


旧第一小学校

<終りに>
 今回の見学は迷路のような単管足場を歩き回って、いささかハードだった。しかし、気がついたら雨もやんでいて助かった。得る物は大きく、昔の懐かしい風景の記憶も取り戻せた。次回の見学が楽しみである。

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