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八ッ場ダム/シリーズ7<2017.11.17>
ーダム建設に翻弄される長野原町ー

<初めに>
 今回は「八ッ場ダムファン倶楽部」ではなく、一般向けの見学である。紅葉時期でもあり、アクセツは下流域にある東吾妻町の吾妻峡からとなった。

<見学行>
 見学の集合場所はダムに近い、旧熊の茶屋と指示された。そこまではJR東の吾妻線岩島駅からシャトルバスが運行されているので、それを利用する手もあるが、僕らは吾妻峡橋を右岸に渡った所にある十二沢パーキングに行くことにした。

 予定より早くパーキングに着いたが、途中の十二沢で30匹ほどのニホンザルのお出迎えを受けた。餌やりをする人がいないらしく、警戒心が強くて車の窓を開けるとすぐ逃げてしまう。やっと撮れた一枚である。


十二沢の猿

 僕らは十二沢パーキングに車を置いて、紅葉を楽しみながら集合場所に向かった。すでに紅葉の盛りは過ぎている。JR東日本・旧吾妻線の軌道が見える。日本一短い樽沢トンネルや架線・保線用通路なども見える。
 渓谷に下りる遊歩道は前回(2017.9.22)来たときには、仮設のパイプ足場だったのが、いまは見事に歩きやすい舗装道路になっていた。
 猿橋を左岸に渡って左に折れる。


日本一短い樽沢トンネル

猿橋

 前方の山は落葉が進んで岩肌が露出している。旧国道添いの遊歩道を上流側を辿り、10分ほどして旧熊の茶屋の集合場所に着いた。旧熊の茶屋は以前は熊を飼っていたことがある。国土交通省の引率をしてくれる職員の説明を聞き、ヘルメットをかぶり出発。


急峻な岩壁

見学の注意事項を説明

 仮設階段のゲートを開けて上の線路まで上がって行く。そこに道陸神トンネルがあった。道陸神(どうろくじん)というのは道祖神のようなものである。長さは432.40m


銘板拡大

進入禁止になっている

 ハレーションしている先にダムサイトがある。廃線跡ではあるが、遺物はそのまま残っている。


バス停留所

 JR東日本の廃線跡を歩いて程なくダムサイトに着いた。線路の下には旧国道145号線、現在はダムの工事用道路になっている。線路の先にあるのはコンクリート打設の廃水を再利用するための処理施設。


線路と道路

 コンクリート打設場所へ最接近。下流側-群馬県企業局の八ッ場発電所の先に陽射しを受ける小蓬莱。身を反転すると仮設展望台の後方は、ダム本体。上流側に晩秋の川原湯地区が見える。


発電所

見学風景

 右側(左岸)から左側(右岸)までケーブルクレーンのワイヤーが張られている。ひっきりなしにコンクリートを運搬するバケットが行き来する。中央上部に直方体の2本の構築物が建っているが、右側の1本はコントロール室であり、女性技術者がクレーン操作をしているという。

 コンクリート打設は、ダムの高さ116mに対して3割を超えているそうだ。


右岸側

左岸側

 これで今日の見学は終りである。左手(左岸)の自然林は喬木の紅葉が綺麗だった。帰路につく狭い仮設見学路には、次の見学グループが待機していた。


喬木の紅葉

見学の順番待ち

 スタート地点に戻り解散。ここから駐車場までは最後の紅葉を楽しむ。吾妻渓谷の一番狭い所に架かっている橋が鹿飛橋。鹿が飛び越えられる程の狭さを象徴している。裸木の隙間から真下によく見える。


鹿飛橋の降り口

鹿飛橋

 実は、八ッ場ダムの当初計画はこの地点であった。しかし東吾妻町の吾妻峡を守るべきだという強い抗議のもとに、600m上流に移動させることで決着した。そのことによって3/4が残ることになった。鹿飛橋や小蓬莱の観光スポットも沈まずにすんだのである。

 紅葉の終期ではあるが、少しはその名残もあった。


吾妻峡の看板

拠水林の紅葉



鹿飛橋下流の怒涛

猿橋



猿橋上流の暗闇

十二沢の白絹の滝

<終りに>
 ダムの完成予定は平成32年度である。完成の半年ほど前から湛水を始めるそうだ。そして多目的ダムとして、洪水調節・流水の正常な機能の維持・水道及び工業用水の新たな確保並びに発電等の運用が始められて完成となる。それまでこのシリーズを取材したい。

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