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八ッ場ダム/シリーズ9<2018.3.25>
ーダム建設に翻弄される長野原町ー

<初めに>
 今回の見学は、吾妻川沿いの旧国道145号を10kmほど歩くという。ダム完成後は水没する地域である。降雪の心配が無くなる時期でもないのに大丈夫かな〜と心配したが、とにかく参加のメールを送信した。案の定2週間ほど前に三日間ほど山沿いの降雪があり、県土整備部防災情報のライブカメラを見ても雪が舞っていた。ところが、予定日3日前から5月上旬の天候が続き、積雪もいっきに溶けてしまった。

<見学行>
 前橋南ICから渋川ICまで順調に走る。前方の新潟県境の谷川岳が、青空の下に純白に輝いている。集合地の《なるほど!やんば資料館》には1時間も早くに着いてしまった。車を隣りのJV事務所の駐車場に置いて、資料館広場に集合する。受付で点呼をとってヘルメットを受けとってかぶる。全員が揃うまで資料館を見学する。小さい建物ながら内容が充実していて飽きない。
 出発時間を10分ほど遅れて、集団の祈念写真を撮ったが、なんと参加人数は150名という大部隊であった。
 不動大橋の手前から立入り禁止フェンスを開けて吾妻川に下りていく。帰りの道は別コースになるので、シャッターチャンスを逃さないように走り回るので大変である。先頭に解説者がスピーカーで怒鳴っているが、全く聞こえない。

 ダムコンクリートの骨材を運搬するベルトコンベアを間近に見る。左手の山の反対側から運ばれてきて、吾妻川へと下って行く。


解説者の声が聞こえない

ベルトコンベア

 ベルトコンベアは右へ90度転換する。ここからダムサイトまでは常にベルトコンベアにお付き合いだ。
 目の前にゴミ山みたいに見えるのはそうではなく、自然の地形そのものブある。ブッシュを伐採し、大木を切り倒した跡である。こいう姿は随所に見られる。


右へ90度転換

伐採地

 その先の上流側に見えるのは不動大橋。橋を渡ると「道の駅八ッ場ふるさと館」がある。

 段丘に下りた所に、埋設物発掘の現場がある。群馬県埋蔵文化財調査事業団によるもので、細長く広範囲に掘削が行なわれている。民家のあった場所である。

 その背後の杉の木の影に橋梁が2本、橋の向うに旧JR東日本の線路が見える。その線路跡を利用してベルトコンベアが左から右へ敷かれている。茶色く見えるのがそれだ。橋梁とトンネルによって構成されている。国鉄時代の岩壁を貫く難工事に想いを馳せる。


埋設物発掘の現場

 左岸の支流に架かる新国道145号の橋梁が見える。広葉樹はまだ芽吹きがない。

 歩行ルートは不動大橋の下を右岸から左岸に斜めに横切る。そして下流に向かって舗装された旧国道145号を下って行くと八ッ場大橋。


橋梁の白い点は乗用車

旧国道145号

 歩行を早めて下流側に急ぐ。やがてベルトコンベアがここで転換して、左岸天端の骨材サイトに上っていく。後方に八ッ場大橋の橋脚と橋桁と高塔が見える。


ベルトコンベアは右手高みへ

 吾妻川の河床は流量が少ない。拠水林はすっかり伐採されている。

 八ッ場大橋の周囲は、なにやら重機が多い。


吾妻川上流側眺望

八ッ場大橋の右岸眺望

 少し下流側に「やんば館」があるが、すでに閉鎖されている。入口の看板を見ると「トイレ休憩お気軽に」と書かれている。昔、旧国道には公衆便所が少なかったので、車の通りがかりによく立ち寄ったことがあり懐かしい。


道路沿いの看板

やんば館正面

 バス停も残っている。「バスのりば・上湯原」とあり、脇には時刻表もある。


バスのりば


標識

 吾妻川は奇岩怪石があり、目を楽しませる。


右岸側


右岸側

 国道や鉄道の開削には切立つ岩を砕き、擁壁・橋梁・トンネルなどを多用している。難関工事だったことが偲ばれる。


旧国道145号


旧JR東 吾妻線

 トンネルを抜けると、しだいに平地が多くなり、やがて八ッ場大橋。


旧国道トンネル


八ッ場大橋

 八ッ場大橋の橋脚周辺に工事用の仮設構築物が多いが、名前も用途もほとんど解からない。見学者の隊列が長過ぎて、解説者がいないに等しい。ダムを造るということが、いかに広い場所と、種々雑多な機械と作業員とが必要かを物語っている。まさにビックプロジェクトである。


橋脚周辺


ベルトコンベアとサイロ

 ベルトコンベアは、山の中腹にある骨材サイロに上って行く。この辺が旧川原湯温泉駅があった所だ。
 昔、重機のいる辺りから右側の斜面に向かって散策路が延びており、吾妻川の右岸を歩いて紅葉を楽しむことができた。


旧川原湯温泉駅付近

 ダムサイトに到着。ここから20人ほどのグループに分かれて、替わりばんこに見学を始めることになる。グループ分けの意味は見学場所が狭いからだ。


ダムサイト

 足場の直下約30mの位置に「堤外仮排水路」がある。つまりダム堤体の工事をしている期間に、吾妻川の上流から流れてくる水のほかに、堤体そのものの工事廃水とがある。その両方をダム下流に放出しなければならない。そのために堤体最下部に設けたトンネルが「堤外仮排水路」と呼ばれるものである。


堤外仮排水路へ降りていく

 上から真下を覗くと吾妻川の流れが輝いて見える。見学者の足元下を流れて右にカーブし、ダム本体下部のトンネルを通ってダム下流の吾妻峡に供給される。


足元下を流れる


吾妻川の流れが右から左へ流れ込む

 上を見上げると何段もの階段に見学者がギューギュー詰めだ。高低差約30m。地震が起きたらどうなるだろうかと心配になった。


昇降のすれ違いも容易ではない

<終りに>
 ダムのコンクリート打設は、見上げるような高さになった。工程は順調に進行しているようだ。次回の見学が待ち遠しい。

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