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施設名称 日本煉瓦製造株式会社旧煉瓦製造施設 備前渠(びぜんきょ)鉄橋
設計者名 チャールズ・アセトン・W・ポーナル
施工者名 本間鉄道工業事務所
建 築 年 明治28(1895)年
形 式 ポーナル型プレートガーダー橋(1スパン、全長15.7m)
煉瓦橋台
所 在 地 備前渠用水(埼玉県深谷市上敷免290番地先)
備 考 ◆構造形式:鉄製単桁橋、煉瓦造単アーチ橋附属
◆指定基準:(二)技術的に優秀なもの
日本煉瓦製造会社は、自社の製品を東京へ運ぶために、利根川の舟運を使っていた。しかし増産体制が確立されると、舟運では輸送力の不足と遅さが問題になった。その結果、煉瓦の在庫が大量に発生し、煉瓦の保管場所がなくなってしまったので、明治26(1893)年5月には生産を縮小せざるをえなくなってしまった。煉瓦を迅速かつ大量に輸送するためには、新たな輸送方法を確立する必要があった。 これに対して渋沢栄一は、輸送のための専用列車を走らせる事を提案した。そして明治28(1895)年、工場から日本鉄道(現在のJR高崎線)の深谷駅までの約4kmの区間に、上敷免鉄道(日本初の民間専用線、昭和50年に廃線)が敷設された。
敷設工事は、本間英一郎が請け負った。本間は本間鉄道工業事務所の経営者で、総武鉄道株式会社の取締役でもあった。
※明治26(1893)年に建設された信越線(碓氷峠区間の鉄道施設)の工事責任者も本間である。
この路線は、いくつかの水路を渡らなければならなかった。そのひとつの備前渠(びぜんきょ)用水に架けられたのが、備前渠鉄橋である。上敷免鉄道に設けられた鉄橋は3つ(備前渠鉄橋・唐沢川鉄橋・福川鉄橋)あるが、その中の最長の鉄橋で15.7メートル(約50フィート)ある。
この鉄橋は、ポーナル型プレートガーダー橋という形式である。ポーナルという名称は、ある人物の名前から由来する。その人物とは、チャールズ・アセトン・W・ポーナルである。彼は、明治時代中期に鉄道院のお抱え外国人として来日し、当時の日本の鉄道橋の標準設計を確立した技術者である。群馬県松井田町の碓氷峠鉄道橋梁群(煉瓦アーチ)、愛知県大府市の石ヶ瀬川橋梁(プレートガーダー)や岐阜県大垣市の揖斐川橋梁(ワーレントラス)など、数多くの鉄道橋を設計している。
プレートガーダー橋とは、I字形の鋼板を橋桁とする形式。プレートガーダー橋の中でも、ポーナル型は英国式とも呼ばれ、桁の補剛材(スティフナー:右の写真では縦方向に5本が見える)の端がJ字に曲がっているのが特徴である。日本の鉄道創生期を代表する桁の形式であり、主に中小橋梁に採用された。
以下のように、数多くのポーナル型プレートガーダー橋が残っており、今でも現役の鉄道橋として活躍している。
◆秩父鉄道
埼玉県内:奈良堰用水橋梁 玉井堰用水橋梁 逆川橋梁 大麻生(おおあそう)堰用水橋梁
◆東武鉄道 伊勢崎線
群馬県内:谷田川橋梁
埼玉県内:青毛堀川橋梁 第二青毛堀橋梁 備前前堀川橋梁 備前堀川橋梁 姫宮落川橋梁 笠原沼落橋梁 千間堀橋梁
元荒川橋梁(歩行者専用橋として活用)
◆東武鉄道 越生線
埼玉県内:毛呂川橋梁(高野鉄道からの転用?)
◆JR東日本 両毛線
栃木県内:第2犀川橋梁
備前渠鉄橋の橋台の煉瓦は、日本煉瓦製造の製品である。平均実測寸法は 225×108×58mm である。煉瓦の積み方はイギリス積み。橋台の桁支承部には、建設当時のままに床石が残っている。
上敷免鉄道の線路跡はレールが取り外され、現在は「あかね通り」と名づけられた遊歩道になっている。なおレール(ベルギー製)は、日本煉瓦史料館の脇に、大量に保存されている。
← 鉄橋の上はアスファルト舗装になっている
参考文献一覧
◆ 国指定文化財等データベース
( http://www.bunka.go.jp/bsys/index.asp )
◆ 備前渠鉄橋
( http://www.geocities.jp/fukadasoft/bridges/bizen/index.html )
◆ 備前渠鉄橋 (現地の説明板)
( http://www.geocities.jp/fukadasoft/bridges/bizen/setumei.html )
◆ 鉄道橋(その1)
( http://www.geocities.jp/fukadasoft/bridges/tetudou/index.html )
◆ 鉄道橋(その2)
( http://www.geocities.jp/fukadasoft/bridges/tetudou/index2.html )
◆ 鉄道橋(その3)
( http://www.geocities.jp/fukadasoft/bridges/tetudou/index3.html )
◆ 深谷市内の国指定等の文化財
( http://www.education.fukaya.saitama.jp/bunkazai/national01.htm )
◆ 産業技術遺産探訪〜旧・日本煉瓦製造会社・煉瓦製造施設
( http://www.gijyutu.com/ooki/tanken/tanken2000/nichiren/nichiren.htm )
【 作成:2007(平成19)年10月5日 】
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