このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

墨田区 真言宗智山派墨田山吉祥院
多聞寺1
狸塚のいわれ

昔、江戸幕府が開かれる前のころ、
今の多聞寺の辺りは隅田川の河原の中で、
草木が生い茂るとても寂しいところでした。
そこには、大きな池があり、
一度見るだけで気を失い、
何ヶ月も寝込んでしまうという毒蛇がひそんでいました。
また、牛松と呼ばれる、
大人が五人でかかえるほどの松の大木がありました。
この松の根元には大きな穴があり、
妖怪狸がすみつき人々をたぶらかしていたのです。
そこで、鑁海(ばんかい)和尚と村人たちは、
人も寄りつくこともできないような、恐ろしいこの場所に、
お堂を建てて妖怪たちを追い払うことにしました。
まず、大きな松を切り倒し、
穴をふさぎ、
それから、
池を埋めてしまいました。
するとどうでしょう、
大地がとどろき、空から土が降ってきたり、
いたずらはひどくなるばかりです。
ある晩のことでした。
和尚さんの夢の中に、
天まで届くような大入道があらわれて、
「おい、ここはわしのものじゃ。
さっさと出て行け!
さもないと、村人たちを食ってしまうぞ。」
と、おどかすのでした。
和尚さんはびっくりして、
一心にご本尊さまを拝みました。
やがて、ご本尊毘沙門天のお使いが現れて、
妖怪狸に話しました。
「おまえの悪さは、いつか
おまえをほろぼすことになるぞ。」
次の朝、
二匹の狸がお堂の前で死んでいました。
これを見つけた和尚さんと村人たちは、
狸がかわいそうになりました。
そして、
切り倒してしまった松の木や、
埋めてしまった池への供養のためにもと、
塚を築いたのでした。

 

このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください