このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
「新型電車」の旧型化【国鉄→JR編】
■少数派への道
103系は、ようやく少数派になりつつある。
10両編成以上の 103系が残る路線といえば、常磐快速線と京葉線及び東西線直通車のみである。塗色はまだ各パターン残っているが、黄緑(旧山手線色)は川越線にしか残っておらず、絶滅の危機に瀕している。青(旧京浜東北線色)も京葉線だけだから、そろそろ危ない。エメラルドグリーン(常磐快速線色)はこの線独自の塗色であり、ここでの置換が完了すれば消滅する運命である。黄(旧総武・中央緩行線色)とオレンジ(中央快速線色)は最後まで残りそうな模様であり、仮に絶滅しても青を含め 201系に継承されていくと思われる。
以上はJR東日本管内の状況で、JR西日本ではさらにしぶとく生き長らえる可能性がある。更新工事を受けて播但線などに転じたものもあり、完全な置換まではまだ間がありそうだ。さりながら、広島付近の山陽本線で長距離運用に就く 103系を見ると、どうにも悲しくなってしまう。いくらなんでも、埼京線以上にミスマッチである。
■「新型電車」の旧型化
「新型電車」の定義は、今日もなお生きてはいる。しかしながら、さらに新型(正確には新世代と呼ぶべきか)の電車が続々と登場している状況では、必ずしも適切な定義とはいえまい。「新型電車」はもはや旧型化し、たそがれの道を歩み、消え去ろうとしている。
その状況は、実は 201系・ 205系とて変わらない。 201系は試作車・若番車から廃車が始まるであろう。山手線には新系列車が投入され、余剰となる 205系は各地に転配のうえ、 103系を置換する計画があると聞く。おそらくあと十年もすれば、主要5路線から「新型電車」の影は消え去り、ことごとく「新世代電車」となっているだろう。
■ 103系に対する評価
103系は最大両数を誇る系列で、その意味では鉄道史上に残りえるものである。しかしながら、性能・内装・外観とも最低レベルであり、しかも本来 103系の運用が適切でない路線にまで広く運用されたのは、 103系の価値を決定づけるほどの大問題であった。長期間製造されたにも関わらず、見るべき改良が施されなかった点はさらに問題である。 103系の基本は 101系を踏襲しているから、通勤電車の設計はおよそ30年近く進歩しなかったとさえいえる。
103系の置換は速やかに促進されるべきである。今まで置換が遅々として進まなかったのは、主に 103系の数が圧倒的に多かったことに起因する。これはこれでやむをえない。だが、既に時代は旋回した。完全置換は、時間の問題にしなければなるまい。
信越本線長野−北長野間(平成13(2001)年)
103系のおそらく唯一の功績は、切妻デザインの標準形を確立した点であろうか。写真は荷物電車クモニ 143で、前面の造作は 103系高運転台車と酷似していることがわかる。基本的構造は全く同一といってもよい。ところが、デザインとしての総体は、オリジナルの 103系と比べ格段に質の高い出来となっている。ライトを全て腰部に配置する、たったそれだけのことで 103系にはない安定感を得ているのである。
こうしてみると、 103系が劣る部分とは些少な要因の積み重ねにすぎない、といえそうだ。 103系の不幸は、全体の水準が及第点に達しないまま、濫造され続けたことであったかもしれない。
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