このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください





西武101系の早すぎる落日





西武101系
競艇場前にて






■西武鉄道 101系電車

 西武 101系のデビューは昭和44(1969)年のこと。これは同年10月14日の秩父線開業にあわせたもので、初代レッドアロー5000系や私鉄唯一の六軸駆動電気機関車E851と同期の車両である。5000系やE851は既に現役を退いているから、 101系に落日が訪れても決して不思議ではないかもしれない。

西武101系
競艇場前にて


 しかしながら、他の大手私鉄では、さらに旧い車両がまだ第一線で活躍しているところも多い。西武 101系が駆逐されていくことには、相応の理由があるはずだ。

西武101系
競艇場前−是政間にて






■明るい電車

 幼少時代の筆者にとって、鉄道とは東武7300・7800・8000系であり、国鉄キハ30・35であった。それぞれ好きな車両で思い入れが強い。とはいえ、野暮ったく垢抜けしない車両であることは否定のしようのない事実であり、一抹ものたりなさが伴ったこともまた確かなのであった。

西武101系
競艇場前−是政間にて(車内)


 そんな筆者にとって、たまに乗る西武電車は新鮮だった。とにかく明るい。開放された前面展望は、どこかの遊園地にでも行っているような、まさに別世界のものだった。東武や国鉄の車両では、運転室直後は壁か小窓で、しかも日中でもカーテンを降ろしてしまう運転士が当時は多かったから、前面展望などないに等しかったのだ。

西武101系
競艇場前−是政間にて


 黄一色という塗装に当時は抵抗感があった(※)から、なかなか好きにはなれなかったものの、心の奥底に強烈な憧れが残る車両ではあった。

※黄は黄金や実る稲穂を示す豊饒の色、という認識が当時はなかった。長じた今となっては、最も好きな色の一つである。





■まさに「新型電車」の旧型化

 先に記したとおり、 101系は秩父線のような急勾配区間での運行を想定した車両であり、性能面では今日でも充分通用するはずだ。そして、西武鉄道とは、高速性能よりもむしろ高加減速性能が求められる路線・ダイヤ構成となっている。 101系は出力こそ高いものの、出足が鈍くダイヤを阻害する面があるのかもしれない。

西武101系
是政にて(車内)


 西武鉄道は近年の要覧において、「当社では、『人と環境にやさしい鉄道』を目指して、旧型車両を廃車し、その代替車両として、お年寄りやお体の不自由なお客さまに配慮したバリアフリー対応の省エネルギー車両を新造しています」と、会社としての意志を明確に表明している。注目に値するのは、今日的基準と比べ 101系は旧型車であると、西武鉄道みずからが認めている点がまず一つ。もう一点は、三扉車 101系を置換する新車が地上線専用でありながら四扉を採用した、という事実にある。

 西武鉄道全体を見渡しても複々線化されるのは池袋線練馬−石神井公園間わずか 4.9kmのみ(予定区間含む)にすぎない。輸送力増強を図るオプションとして増発には明らかに限界があり、増結にも上限が見えてきたとすれば車両側で対応していくしかない。 101系はロングシート車ではあるが、三扉車のためラッシュ時対応に難がある。第一線の車両は首都圏スタンダードの四扉車にあわせていくのが自然な流れであろう。

西武101系
是政にて


 西武 101系とは、それぞれの鉄道が独自規格を追求した最終世代の車両といえる。その 101系が若齢にして駆逐されつつある状況は、技術体系における真理──規格統一という方向性──を示唆している。もともと同じ鉄道である以上は、多様な規格が併存していた状況を尋常とは形容できない。ローカル規格の乱立は、鉄道という交通機関の価値を毀損してしまう。相互直通運転の発達により、日本の鉄道の技術体系はようやく正常化しつつある。その大波のなか、 101系は西武の第一線を去っていく。





表紙に戻る





このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください