このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

 

■保存機材の選定基準■

 梅小路蒸気機関車館の保存機材を選定するにあたっては、下記の三基準が適用されたとされている。

   ・国産機であり、かつ改造機でないこと。
   ・その時代を代表する形式であること。
   ・同形式中の最若番であること。

 C60・D60・D61・D62は軸重軽減改造を受けたのみの機材であるため、保存の対象にならなかったことがわかる。このほか、 C54は当時既に現存機がなく、保存対象になりようがなかった。 C50は8620と事実上同形機であるため、選定されなかったものと思われる。

 このあたりまでは比較的わかりやすい。しかし、他の機材選定には曖昧な点がいくつか残されている。次項ではその点を指摘したい。

 

■保存機材の選定に対する疑問■

(1) C55・C57が双方選定されたのはなぜか?
 C55・C57は、ボイラー圧や動輪形状などが異なるだけで、事実上は同型機といえるものである。しかも C55は製作両数もさして多くなく、時代を代表しているとはいいにくい。本来 C57に包含されるべき機材とみなすのは、 C55にとって厳しすぎるであろうか。

(2) E10が選定されなかったのはなぜか?
  E10はマイナーな存在ながら、国鉄最後の(即ち日本最後の)純新製機材である。これを保存機材に含めないというのは、如何なものであろうか。

(3) B20が選定され C12が選定されなかったのはなぜか?
  B20は入換機で、製作両数はわずか15両にすぎない。入換機には保存する価値がないとまではいわないが、他の保存機材と比べるとかなりの遜色があることは確かである。入換には第一線を退いた機材が充てられることが多かったが、この機材は入換専用機であり、第一線の運用には充てようがなかった。
 これと比べ C12は、ローカル線が主体とはいえ本線での運用が豊富にあり、製作両数も 293両と多い。入換に充当される機会も多かった。かような C12が選定されず B20が選定されたというのは、著しくバランスを欠くように思われる。

(4) C61・C62の技術的価値
 C61・C62は特急列車の牽引に充てられる機会が多く、まさに花形と形容されるべき機材であった。その観点からすれば、保存機材に選定されたのは当然である。
 その一方で、双方とも新規性のない機材であることもまた確かである。 D52のボイラーを C59に載せたのが C62であるし、 D51のボイラーを C57に載せたのが C61である。本来異なる設計の貨物機と旅客機とをつなげた苦労はあっても、要素技術は完成されつくしていたといえる。
 だから保存する価値がない、というわけではない。しかし、原型機材の評価が相対的に低下している懸念がある。特にD52・C59に対する評価は、もっと高くてもよいはずだ。

 

■考察■

 以上から、梅小路の保存機材の選定にあたっては、もうひとつの基準−−その機材に対する人気−−が介在していたことを指摘できる。

 例えば C62では、トップナンバーが現存していたにも関わらず、C622が保存機材として選定されている。同機は除煙板にツバメマークを備え、世論から圧倒的に支持されていたため、国鉄当局もそれを無視するわけにいかず、トップナンバーではなくC622を選定したという。しかし、ツバメマークは単なる装飾にすぎず、その機材の本質的価値とはなんら関係がない。かような装飾が選定基準を左右したからには、梅小路の保存機材はある種の人気投票を経てきたと理解すべきであろう。 C55が C57に包含されなかったのも、同様の理由と思われる。

 保存事業を継続するには世論の支持が必要であるため、機材選定が人気に左右されるのは当然のことにすぎないかもしれない。しかし、人気は人気として、その機材の本質的な価値は確実に伝えられなければならない。その努力は、どこまでなされているだろうか。

 筆者の私見により、技術史的な観点及び営業運転での貢献度から、梅小路の保存機材に順位を与えるとすれば、下記のとおりになる。

   筆頭グループ:9600・D51・D52・C57・C58・C59
   第二グループ:8620・D50・C51・C53・C61・C62

 これら上位グループの中で、本線運転が可能な機材はほとんどない。梅小路のみならず全国を見渡してみても、可動機が存在するのは8620・D51・C57・C58 に限られる。現在の可動機の最大勢力は、「動かしやすい」 C11である。

 「動かしやすさ」が優先されるのは、保存事業における企業性を考えればやむをえない面はある。C623のように保存事業そのものが頓挫してしまっては意味がないからだ。それでも、現状のままではいかにも不足であるのは間違いない。

 大井川鉄道のように「蒸気機関車というメカニズムの保存」に徹するのも、ひとつの答であろう。タンク機・タンク機亜種ばかりを揃えているのは「動かしやすさ」を優先するため、しかしそれは、蒸気機関車というメカニズムそのものを保存していくためには許容される、という明確な割り切りがなされている。

 梅小路蒸気機関車館には「蒸気機関車を貴重な交通文化財として末永く後世に伝える」という明確な目的がある。これ自体は誰もが肯定できる尊貴な目的である。また、梅小路ほど多数の機材を揃えた箇所は他にはない。それだけに、なぜその機材が保存されているのか、明確な位置づけがなされてしかるべきであろう。

 現状では、その機材の来歴まではわかっても、その機材の価値・位置づけまではわからない。蒸気機関車の技術的価値・営業への貢献度などを体系化し、なんのための保存かを改めて定義してもよいように思う。

 

 

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