このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

 

■よくない典型■

 蒸気機関車ではないが、鉄道車両・建造物保存の一種の典型といえるので、ここに紹介したい。敢えて名前は出さないが、この写真を見ればどの保存事業を指すか、一目瞭然であろう。

  

 これら機関車の保存については、問題はまったくない。保存に値するだけの鉄道史上の意義は充分備えているし、また屋内での保存であるため、機材の状態を良好に保ちながら後世に遺し伝えることができる。

 ところが、以下の車両あたりから、かなりあやしくなってくる。

 

 この特急型車両が保存に値するかといえば、意義づけは案外難しい。同系の車両は全国に多数存在しているので、その意味においては価値ある車両ではある。しかし、かような汎用型車両に急勾配用の特殊装備をつけたというだけで、どれだけの「保存上の価値」が付加されるというのだろうか。

 しかも露天での保存で、この段階で既に汚れが目立つ。永い保存に耐えられる状況とは到底いえない。電車の外板は薄い。十数年も経てばすっかり錆び朽ちてしまうだろう。

 

 この写真の機材・車両群に関しては、なにをかいわんやである。鉄道史上重要なものも確かに存在する。しかし、あまりにも脈略がないではないか。極端にいえば、偶然解体を免れた機材・車両を集めただけではないのか。あるいは、子供じみた感覚でコレクションすることだけに喜びを見出しているようにも見える。保存するにあたっての哲学が、これら機材・車両を見渡す限り、まったく感じられない。

 そのうえ露天保存とあっては、状況は最悪である。機関車はまだいいにせよ、客車などはかなり早い段階から痛むだろう。

 だから敢えて問いたい。なぜ、これらの機材・車両を保存しているのですか、と。廃止された区間を懐かしむだけでは、廃車になった機材・車両を懐かしむだけでは、すぐ荒み廃れ、忘却されてしまう。保存事業を継続するためには、なんらかの哲学が要る。

 筆者ら家族はこの場所に行き、記念写真は撮った。しかし、それ以上の感慨を得ることはなかった。機材・車両選定基準が不明確、露天のため保存状況が劣悪、展示館には歴史に関する記述がほとんどない、等々。筆者などは、保存とは名ばかりのあまりな至らなさに驚きあきれ、むなしさすら覚えた。

 わずかな救いは ED421の存在である。この機材の存在感は大きく、鎮座しているだけでその背後にある歴史が感じとれる。実物教育の好例である。しかし、せっかくの好素材も、多数の機材・車両に囲まれ稀釈されている。否、ED421 を囲む機材・車両群は、もともと相応の価値を持っている。それらの価値が運営者によって顕彰されていないことが、最も憾みとすべき点であろう。今はともかく、十年より先の将来展望が気がかりである。

 

 

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