このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

 

第4章 熊本市電の将来展望

 

■超低床電車はこれからの標準

 ハイグレードな車両を導入すると、驚きと感動をもって迎えてもらえるが、時が経つにつれてそれが標準仕様になってしまう。これは当事者にとって荷が重い。

 路面電車の新車は、数が少ないため、ただでさえ単価が高い。まして超低床電車となれば、さらに高くつく。熊本市からの補助が期待できる点に救いがあるものの、いま以上の財源が確保できるかといえば保証の限りではない。

 

写真−13 辛島町交差点での超低床電車

平成12(2000)年度中に4編成が揃う予定。今後の熊本市電の標準となるが、財政的な支援がないとさらなる増備は難しい。

 

 

■在来車両をどうするか

 現在の熊本市電の車両陣容は、多数の旧型車、中堅どころの新型車、少数の超低床電車という内訳になっている。超低床電車の増備が進めば旧型車が置換されるだろうが、そうなると新型車が相対的に陳腐化してしまう。

 実際のところ、熊本市電の新型車は、日本の路面電車にあっては充分に最新鋭車として通用する。これら新型車が超低床電車導入により色褪せて見えてしまう点に、熊本市電の悩ましい部分がある。新型車は、おそらくあと20年以上は稼働するだろう。その間に利用者の失望が蓄積するおそれがないとはいえない。

 

   

 写真−14 「新型車」カテゴリーの9202   写真−15 レトロ風外観の「新型車」101

日本初のVVVF制御電車以降、熊本市電には10両の「新型車」が投入された。これらは質の高い車両群でありながら、超低床電車の前には霞んでしまう。
今後は超低床電車が標準になり、「レトロ風電車」などという策はもはや採られないだろう。交通機関である以上、電車は最先端のものが一番である。

 

 

■バリアフリーな交通機関になるために

 超低床電車は確かに乗降しやすい。とはいえ、トータルではバリアフリーな交通機関とまで呼べるかどうか。

 熊本市電の電停は35箇所あり、このうち安全地帯の幅員 100cm未満の電停が19箇所で、最小幅員の安全地帯は70cmしかない。これらの電停では、安全地帯に車椅子が乗れないという。

 熊本市電がトータルでバリアフリーな交通機関を目指すのであれば、超低床電車の導入のみならず、電停の改良なども必要になってくる。

 

写真−16 通町筋電停での超低床電車

電停に屋根がつき、超低床電車も導入された。しかしこの電停幅では、乗降そのものがバリアフリーとはいいにくい。

 

 

■路線の延伸

 熊本県では、熊本空港−熊本市内−熊本新港を結ぶ新交通システムをつくる計画があるという。さりながら、新交通システムを導入するよりも、熊本市電を延伸する方が、既存のストックを活用できるという点でより有効ではなかろうか。もっとも、いずれのモード導入であれ、熊本空港から人口集積のある市街地まではかなりの距離があり、採算を確保するのは厳しい計画であると思われる。

 熊本市電は、むしろ手堅い路線延伸を目指すべきだろう。健軍から益城町境まで、さらには益城町中心部まで延伸できれば面白い。もっとも、熊本市電という経営形態のままで益城町内まで延伸するのは至難で、健軍以東延伸には競合するバス会社からの反対もあるというから、第3セクターのような新会社を興す必要があるかもしれない。いずれにせよ、延伸が実現できれば慶事である。

 路面電車の路線を延伸するにあたっては、現実問題として多くの障害が山積している。容易そうに思える健軍以東延伸でさえ、実現可能性はごく小さい。それを承知したうえであえて、次なるアイディアをも提示したい。

 それは、幹線水道町−藤崎宮前間の復活、及び熊本電鉄との相互直通運転である。これを実現するには、熊本電鉄の改軌・車両置換・ホーム改築が必要になるため、実現可能性は限りなくゼロに近い。しかし、もし実現できれば、得られる効果は大きい。

 ターミナル立地が中途半端であるため、低迷している熊本電鉄の梃子入れにつながる。熊本市電側でも利用者数が増加する。熊本市北部から中心部に至る軌道系交通機関が構成され、沿線利用者の利便性向上に寄与する。

 実現可能性極微と承知のうえでのアイディアである。こんな夢が実現したら面白い、という程度に受け止めて頂ければ幸いである。

 

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