このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください



風鈴


「おじさん、これ何?鈴だとは思うんだけどさ、何に使うの?」
「おおっ!それはだなあ、風鈴といって、むかーし、むかし、昭和とか平成の時代の夏の風物詩って言われたものだ」
「ふうりん?」
「そう。夏に窓際とか縁側、縁側って分かるか?」
「知ってる。青森のおじいちゃんの家にあった。家の外側をぐるっと回ってる廊下のことでしょ」
「そうそう、よく知ってるな。その、縁側にこれをぶら下げる。そうして風がふくとだな、この風鈴がこう」
”ちりーん”
「ああ、いい音だねー」
「そう、いい音がする。で、今日みてえなクソ暑い日に、この音を聞いて昔の人は涼しさを感じてたってわけだ。まあ、生活のちょっとした知恵ってやつだな」
「音で涼しさを感じる。なんとなく分かる気がするよ。今日はそんなに暑いんだ」
「おいおい、お姉ちゃん何言ってんだよ。今日は最高気温36度だっていうじゃないか。こんな暑い日は滅多にねえよ。俺も今日は早く商売やめてえなあ」
「そうなんだ・・・」
「何悲しそうな顔してんだよ。俺何か気に触るようなこといったかな」
「ううん、なんでもないんだ。ただ、風鈴っていいなあって思ったの。音で涼しさを感じるっていうところがさ、気に入ったんだ」
「で、どうするの、これ買う?」
「うん」
「ありがとな。おれも今日は暑いからこれで商売はやめ。かき氷でも食いにいくとするか」
「かき氷・・・」
「また、そんな顔をする。いったいどうしたっていうんだよ」
「ううん、なんでもないんだ。本当になんでもないんだよう。ほら」

”ちりーん”
「おじさん、涼しいよね」
「いや、クソ暑い」
「そうかなあ、私は涼しいけどなあ」

”ちりーん”

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