このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

ダイエット


永康25年5月、星修大学キャンパスにて。

「ねえ、ヤギー、ジャスミンの香りって嫌い?」
「え? 嫌いじゃないけど」
「よかった〜〜」
「突然どうしたのさ?」
「昨日、叔父さんがウチに来て、旅行のお土産を置いていったの」
「うん」
「それでね。その中にジャスミンの香りのボディオイルがあったのよ」
「へえ、珍しいね」
「でしょ? 叔父さんの話によると、ジャスミンの香りには脂肪燃焼効果があるんだって」
「痩身グッズってこと?」
「そうそう。香りをかいでいるだけで、皮下脂肪が15%も減るんだって」
「そうなんだ。ニンゲンの身体ってフシギだね」
「うん。日本じゃ効果の高い化学製品ばかりになっちゃったけど、外国ではまだ天然の物の方が好まれるところもあるみたい」
「それで、お土産に買ってきてくれたってわけ?」
「うん。でさ。ヤギー、ダイエットだって言ってお昼全然食べないじゃない? あまり口出ししたくないけど、そういうのって身体によくないと思う」
「う……」
「痩身グッズはいろいろ試したけど身体に合わなくて駄目だったって言ってたよね。これはどうかなあ」
「うー、それは……」
「痩身効果が無くても、香りを楽しめばいいじゃない。ジャスミンの香り、嫌いじゃないんでしょ?」
「そ、そうだね」
「私ね、1度でいいから、ヤギーにウチの料理を食べてみてもらいたいんだ。だからちょっとでも効果があったらなって思って。……迷惑かな?」
「そんなことないよう。ジャスミンの気持ち、とっても嬉しいよ!」
「ありがとう。じゃあ、これね」
「……」
「ヤギー?」
「あ、ありがとう、ジャスミン。これ、大事に使うよ!」
「うん。じゃあね。後で感想とか聞かせてね」
「う、うん。じゃ、またね」


永康25年6月、星修大学 体育の授業後の更衣室にて

「ねえ。ヤギー、あのジャスミンの香り。効果あった?」
「あ・・・、あれね。うー、まあまあ、かな?」
「嘘嘘。未だにダイエットに励んでいるところをみると、効果ゼロだね。きししし」
「なんだよう佐倉井め。そんなことないよう。えと、ちょっとづつだけど痩せてるよう。ほら、なんとなく昔と比べてお腹がひっこんだような・・・気がしないかな。はは」
「ぜんぜん」
「あっ。ヤギーさてはぜんぜん使ってないね。せっかくプレゼントしたのに」
「ごめんなさい」
「まあまあ二人とも。ダイエットのプロの私の言うことをよく聞きたまえ。ダイエットに成功するためにはやっぱり目標がないとだめ。ダイエットの究極の目的は、バストを落とさずして、ウェストを落とし、私のようなボーン、キュッ、ボーンという理想的なスタイルを作り上げることっ!」
「あらっ。さやかの場合はボーン、ボーン、ボーンじゃんねえ」
「外野はだまらっしゃい。そのためには、まずは今の自分の数値を把握しておくことが肝要。そして、一週間おきにでも身体のサイズをはかる。その結果をノートにでも記録して折れ線グラフを作る。そうすると、目的意識が出てつまらないダイエットも楽しくなる。ヤギー君。君、バストはいくつかね」
「あー」
「ウエストは?」
「うー」
「ほら、即答できない。だから駄目なのだよ。なので、早速今からヤギーのスリーサイズを図ってみましょう」
「メ、メジャー。あんたいっつもそんなもの持ち歩いているわけ?」
「ジャスミン君、手伝って」
「あいあい、了解」



・・・

「バストは○○cmと・・・」
「はい。これで満足した?」
「いんや。まだ肝心なものを量ってないでしょ」
「肝心なものって・・・、何だよう」
「体重に決まってるでしょっ。た、い、じゅ、う。ほら、そこの体重計に乗っかって」
「えーと、えーと、あっ、用事思い出した。さよならっ!」
「あっ、逃げるかっ!こらまてっ。ジャスミン手伝ってっ!」

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