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- 439 : 名無しさん@ピンキー :2006/08/31(木) 16:46:58 ID:38TQI4s90
- サイボーグになる前のヤギーを、サイボーグのヤギーと区別する場合の呼び方を考えた。
生八つ橋に対抗して、
「生八木橋」。
・・・・・・ああっごめんなさいごめんなさい、リミッター解除して殴るのはやめtゴフッ
- 440 : 名無しさん@ピンキー :2006/08/31(木) 23:11:09 ID:jHle5VNi0
- ・・・ >>439 は病院送り&サイボーグ化。
- 441 : 439 :2006/08/31(木) 23:19:25 ID:voP8WsYE0
- >>440
サイボーグ化されたら素で喜びそうな俺は、どう見てもメカフェチです。本当に(ry
- ・・・近眼と腹の贅肉だけでも、なしにしてくれんかなあorz
- 442 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/01(金) 00:01:13 ID:434HDr660
- 体を選んでください
1. デッキマン
2. ソケットマン
3. 螺子(アンドロメダ星仕様)
- 443 : 439 :2006/09/01(金) 00:38:11 ID:fPbmI5jP0
- 3。
螺子になってヤギーと一生添い遂げる。
- 444 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/01(金) 02:31:04 ID:1oLeM1Qo0
- >>443
私と一生添い遂げるだって?はは、そういう人、結構いたよ。
でもね、みんな口ではそう言うけど、別に私が好きだからそんなふうに言ってるんじゃないんだよね。- そういう人たちが好きなのは私じゃなくて、この機械の身体なんだ。もし、私がこんな身体じゃなかったら、私のことなんか気にも留めてないでしょ。どうせ私が標準義体に換装して、同じ姿の人ばっかりで十人くらい集まったとしたら、私のこと当てられないでしょ。
もうね、そんなこと分かってるんだ。私、もう騙されないからね。あんたみたいな義体フェチは、イソジマ電工の標準義体でも買って、それ使ってハァハァしてればいいんじゃない?幾らかかるか知らないけどさ。
- 445 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/01(金) 08:27:33 ID:4DIjXnci0
- >>444
ブラックヤギーキターーーーーー(´A`)
イキロ>裕子さん
あと、 >>444 ゲトおめ
- 446 :439:2006/09/01(金) 10:29:57 ID:5TolNZrT0
平手打ちして、その後無言で抱きしめてみる。
- 447 :名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 11:18:37 ID:FFzH04/g0
- うー、ちょっと、あんたいきなり何すんのさ。
叩きでもすれば、女は言いなりになるとでも思ってるわけ?馬鹿じゃないの?
平成あたりの時代遅れの安っぽいメロドラマじゃあるまいし、今どきそんなテで引っかかるコがいたら見てみたいよ。- それとも何ですか?どうせ機械なんだから、少しくらいたたいても別にいいだろうって思ったってこと?
- だとしたら最悪だね。機械の身体でも痛いものは痛いんです!
あんたは生身とか、義体以前にもっと女の子の心の掴み方を教えてもらったほうがいいと思うよ。- もちろん、私じゃなく、別のボランティア精神に溢れた女の子からね。
>>446
ところで、これ、なんてエロゲ?
- 448 :439:2006/09/01(金) 12:28:20 ID:5TolNZrT0
- >>447
・・・調子の悪い右腕とともに、なくしたはずの心臓が締め付けられるように痛む。
目の前にいるのは、昔の自分。
生身の身体を失い、コンプレックスに凝り固まっていた頃の、自分の鏡像。
思うように、言葉がつむぎ出せない。
言いたいことはたくさんあるのに、伝える言葉がみつからない。
悔しくて、自分がもどかしくて。
俺はただ、彼女を抱きしめることしかできなかった。
【体験版はここまでです・・・この続きは製品版で!w】
- 449 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/01(金) 14:55:38 ID:FFzH04/g0
- 「あ、終わっちゃったよ。今、いいところだったのにぃ」
膨れっ面で苛立たしげにマウスをカチカチする私。
ここから先は有料。お金を払わなければ、これ以上画面は先に進まないって分かってるけど、それでもマウスをクリックしてしまう。- 男と知り合って、しかもお目当ての男が実は義体だっていう意外などんでん返しがあって、やっと、これから話が進むってところだったっていうのにさ。続きが気になって仕方がない。全く最近のゲームってうまくできてるよね。
日曜の昼下がり、暇をもてあましていた私は試しにネットゲームってやつをやってみた。
主人公は義体である「私」。いくつか出てくる恋人候補に対して、自分の気を引いてくれるような言葉を並べて、告白させるようにもっていくというなんとも他愛のないゲームだ。
でも、他にすることないってことで、ほんの軽い気持ちではじめてみたんだけど…はまっちゃった。
このゲームに使われているAIっていうのは、ずいぶんすごい性能みたいで、私がかなり複雑な文章を打っても理解して、的確な回答や行動をしてくる。なんとなく、モニターの向こうにホントのニンゲンがいて、私の気を引こうと必死にレスを打ってるような気さえしてくる。
ま、どんなにリアルでも所詮絵空事なんだけどね。それでもゲームの中の男の子は、義体の女の子っていっても、みんな普通の女の子として接してくれるし、優しいんだ。厳しい現実よりはよっぽど居心地がいいかもって思っちゃうよ。
あーあ、どこかに身体が機械で、力もリミッターを解除すれば化け物みたいに強くて、体重が120kgあって、検査で毎月眼が飛び出るほどのお金がかかって、子供はもう生めない。
そんな女の子でも付き合いたいっていう奇特な男はいないかなあ。
いるわけないか。はは。
ちょっと、貯金を下ろして厳しい現実を忘れてみようかな?
- 450 :439:2006/09/01(金) 16:04:24 ID:5TolNZrT0
- 「え、うそだろ?・・・かーっ、ここで終わりかよ・・・」
モニターには「体験版終了」の文字と、有償サービスの案内文がポップアップしている。
安っぽい動画とともに、安くもなく高くもない、微妙な価格設定の金額表示が踊ってる。
最近評判の、擬似恋愛ネットゲーム。SNS仲間に誘われて、お試しアカウントでログインしたのが4日前。
生来の口下手が祟って2人に振られ、3人目が彼女・・・八木橋さんだった。
背もたれに身体を預ける。150kg近い体重に、さすがの義体専用チェアも耳障りな悲鳴を上げる。
俺が義体になったのは、バイクでの自爆事故だった。
義体にはいろいろ不便はあるが、とりあえず生活するには支障はないし、それほど不満もない。消防署のレンジャー部隊に転職してからは、給料も悪くないしね。
八木橋さんが第一級義体、という「設定」を知って、冗談のつもりで「生八木橋」なんて茶化してみたわけだが・・・
・・・まさか、それで傷つくとは思わなかった。ゲームの中の彼女が。
すげぇ、よく作りこんでるなぁ、とか最初は笑って・・・・・・急に笑えなくなった。
目の前にいたのが、義体に入った頃の自分だったから。
新しい身体と打ち解けられず、周囲の心無い言葉にいちいち傷ついてた、あの頃の自分。
・・・気がついたら、俺は彼女の頬を軽く叩き・・・そのまま彼女を抱きしめてた。
俺の腕の中でもがきながら、俺を罵り続ける彼女。
胸の辺り、なくなったはずの心臓が、締め付けられるように痛んだ。
・・・決めた。
もう一度、彼女に会おう。
弾みをつけて、背もたれに預けた上半身を起こす。
チェアが軋みを上げて、文句をたれる。
VRでもいい。そんなこと知ったことじゃない。
もう一度会って、そして・・・・・・
- 451 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/01(金) 18:39:57 ID:FFzH04/g0
- 結局クレジットカードの番号を入力して、もう一度例のゲームにログインしてしまった…。
はぁ、と口から情けない溜息を漏らす私。
こんな天気のいい日曜日に「恋愛ごっこ」なんて、私ってば、一体何やってんだろう。
(ん、恋愛ごっこ?)
それで、私の頭にある考えがひらめいた。
そう、所詮、こんなのただのゲーム。このゲームの中の八木橋裕子は、本当の私じゃない。
どうして、ゲームの中でまで律儀に全身義体の自分を演じる必要があるんだろう。
どうせなら、生身の身体っていう設定にしてさ、好きな食べ物欄にはタコ焼きって書いたっていいはずだよね。それで、恋人と二人で喫茶店になんか行ったりして。
どうせお金を払うなら、そっちのほうがずっと楽しい展開になりそうだ。そう思った。
えーっと、登録名は「ジャスミン」
私は親友の名前を思い浮かべながら、自己紹介画面を作っていく。
家は大金持ちでレストランを経営していて、星ヶ浦に別荘があって、美人で優しくて運動神経もよくって、でもカラオケはへたくそ。それが、今の私。そういうことにする。
義体で、貧乏で、頭の悪い私は現実だけで充分だ。
これで、きっとこのゲーム、もっと楽しくなる。
偽りの自分に偽りの世界偽りの恋愛、それの何が悪いのさ。こんなの、ただのゲームじゃないか。- 別に誰に迷惑をかけるわけじゃないんだ。そうでしょ?
- 85 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/03(日) 23:39:46 ID:jfIGx/Xc0
- >>前スレ451 設定を一部拝借。埋め草には長くなったのでこっちに投下。4レスで完結。
「じゃあ、また来週」
「はい。先生、ありがとうございました」
病室を出て行く吉澤先生の後姿を見ながら、僕はノートPCの電源を入れる。昨日、VRでお話したジャスミンさん、今日も会えるかな?
この病院に入院してから、もう1年半になる。最初の2、3ヶ月は友達がお見舞いに来てくれたけど、半年を過ぎた頃からは誰も来てくれなくなった。たまに送られてくるメールも、授業の様子が少し書いてあって、最後に、”早く良くなってください。みんな待ってます”とかいう決まり文句で締めくくられている。本当に、僕が学校に戻るって思ってくれているんだろうか?- 今はもう、この病室に入ってくるのは、お父さん、お母さん、妹、看護婦さん、それに吉澤先生の5人だけ。みんな優しくしてくれるけど、やっぱり寂しいよ……。
僕の病気は、治らない。2週間前、吉澤先生からそう言われた。痛いことや苦しいことはないけれど、少しずつ身体が動かなくなって、少しずつ身体が弱っていって、最後には死んでしまう。今まで何回か手術を受けたり、薬を飲み続けたりしてきたけど、それももう限界だ。先月は、身体を生命維持装置に繋ぐ手術を受けた。もう僕の身体は、自分の力だけでは生きていけないほど弱っている。いずれは機械の助けがあっても、命を保てなくなってしまうだろう。昔だったら、このまま死を待つしかなかった。でも、今は、全身義体化っていう手術を受ければ命だけは助かるらしい。身体を全部機械に置き換えてしまう手術。お父さんやお母さんは、それを聞いて、僕以上にショックを受けたみたいだった。僕は、身体が機械になること以外は良く分からないけど、もっと大変なことがあるんだろうか。
身体が機械になるって、どういうことだろう。身体が機械になっても、僕は人間として生きていけるんだろうか。吉澤先生は、少し不便なことがあるかもしれないけど、ちゃんと生活することができるし、学校に通うこともできると言ってくれた。
- 86 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/03(日) 23:42:38 ID:jfIGx/Xc0
- 学校……。友達は、僕が機械の身体になったって知ったら、なんて思うんだろう。僕は、機械の身体の人なんて見たことが無い。そう先生に言ったら、元の身体そっくりにできているから、見ただけでは分からないよと答えられた。じゃあ、もしかしたら、僕の知らないうちに、機械の身体の人に会っているのかもしれない。外見だけでは分からないんだったら、みんなには内緒にしておけば、何も変わらずに、元通りの生活に戻れるんだろうか。
でも、身体が機械だなんて大事なこと、隠したままにしておくのは、みんなに悪いような気がする。それに、好きな人ができた時、黙ったままでいるなんてできないし、第一、いくらそっくりにできていても、一緒に過ごしていれば、変だって思われることが出てくるだろう。僕を好きになってくれたとしても、機械の身体の僕のことを好きなままでいてもらえるんだろうか。
お父さんやお母さんは、僕がどんな身体になっても、大事な息子に変わりはないと言ってくれた。妹は、よく分からないけど、でもお兄ちゃんはお兄ちゃんだよって言ってくれた。生まれてからずっと一緒に暮らしてきた家族なら、僕が何になっても、変わらずに接してくれる。でも、他の人はどうなんだろうか。
入院してすぐ、退屈な入院生活を紛らわせるために、お父さんがノートPCを買ってくれた。病院のNWにつなぐと、外のネットにもアクセスできる。時間はたっぷりあるから、沢山のサイトを覗いてきた。VRっていう作り物の世界の中で、いろんな人と会って話ができるネットサービスを試してみたこともある。ずっと入院していると言うと、みんな、大変だねって言ったきり、相手をしてくれなくなる。作り物の世界の中でまで、病人の相手をしたくはないんだろう。だから、何回か、そういう経験をした後で、アクセスするのをやめてしまった。病人が駄目だったら、機械の身体はどうなんだろう。普通の人と、ほとんど変わらない機械の身体。それでも、やっぱり相手にしてもらえないんだろうか?
- 87 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/03(日) 23:46:01 ID:jfIGx/Xc0
- 僕は病院の外に出ることができない。病室に来てくれる人も限られている。僕が機械の身体になったらどう思われるのか確かめるために、もう一度VRにアクセスしてみるのはどうだろうか。この1週間は、ずっとそんなことを考えていた。初めからその話題を出したら、前の時のように誰も相手をしてくれないから、話し方をちゃんと考える必要がある。なんとかして僕の悩みを話せる人を見つけたい。そうして昨日VRにアクセスして、ジャスミンさんという女性とお話することができた。
登録されたプロフィールを見ると、ジャスミンさんは大学生で、家はお金持ちらしい。有名なレストランを経営していて、星ヶ浦に別荘がある。プロフィールだけを見ると、どう考えてもお嬢様としか思えないけど、実際に話した印象は全然違っていた。どこにでもいるごく普通のお姉さんっていう感じ。僕の話も真面目に聞いてくれるし、お金持ちだとか、家が有名だとか、そういうことが話の中にも全然出てこない。でも、本当のお嬢様って、そういうものかもしれないなあ。ベトナムに旅行に行った話も、まるで誰か別の人から聞いた話を、そのまま僕に話しているみたいな感じだった。何度も海外旅行をしていると、見聞きすることに慣れてしまって、そういう風になるんだろうか。なにか不思議な人だった。でも、僕の話をちゃんと聞いてくれていることだけは、昨日の感じから確かだと思う。もう少しお話できたら、僕の悩みを切り出すことができるだろうか。
〜〜〜
3週間後。ジャスミンさんとは8回会ってお話できた。僕はずっと暇だったけど、ジャスミンさんはあまり時間がないみたい。だいたい、平日のお昼の1時間くらいと夜遅く。土曜も日曜もずっと外出しているので駄目らしい。夜は僕が寝てしまうから、お昼の1時間だけが、ジャスミンさんと会える時間ということになる。大学生って、もっと時間が自由になると思っていたけど、結構忙しいんだなあ。ジャスミンさんみたいな素敵な人だったら、お友達が沢山いて、いろいろとやることがあるんだろう。僕がそう言ったら、ジャスミンさんは、一瞬、言葉に詰まったみたいだった。学校のことはともかく、私生活に触れるようなことは失礼だっただろうか。
- 88 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/03(日) 23:59:52 ID:jfIGx/Xc0
- 自分のこともいろいろ話した。でも、今、入院していることは話せないから、家族のことや、入院する前のことに話題が限られてしまう。あとはテレビとかネットのこととか。ジャスミンさん、テレビの娯楽番組のことはあまり好きじゃないみたいで、なかなか話題が噛みあわない。その代わり恋愛ドラマの話なんかは、結構興味を持って聞いてくれる。僕はそういうのはあまり興味ないけど、時間だけはあるから番組を見てその内容をお話しするのは簡単だ。ジャスミンさんの口から、『新しい愛のカタチ』っていう、全身義体の女性の恋を扱った映画のことが出た時は、本当にびっくりした。確かに、斬新なテーマで、まだ公開がずっと先なのにかなり話題になっている映画らしいから、ジャスミンさんが知っていても不思議じゃないんだけど。自分の下心が見透かされたみたいで、ドキドキした。
映画のことは、ちょっと話して、ジャスミンさんの方から話題を変えてしまったので、あまり詳しいことは聞けなかった。でも、ジャスミンさん、機械の身体には偏見がないみたいだった。作り物のお話の中のことじゃなくて、現実に会って話をしている相手が、機械の身体だったとしても、その考えに変わりはないんだろうか。
今度、会えたら聞いてみよう。もう一度、映画のことを話題に出して、それから、告白してみるんだ。知りたい。僕が機械の身体になるって言ったとき、ジャスミンさんがどんな顔をするのか。どんな言葉が返ってくるのか。そして、映画みたいに、機械の身体の人を好きになることができるのか……。
- 101 : 3の444 :2006/09/04(月) 17:13:12 ID:ZjpDur4L0
- >>85
85さんって前スレの439さん?
蛇足かもしれませんが、こんなオチはどうですか?
「うー、タマちゃん。これでよかったのかなあ」
私は不安げにベットの傍らにいる小さなケアサポーターさんを見上げた。
「ありがとう。八木橋さん。よくやってくれました」
タマちゃんは、そう言ってにっこり微笑んだ。
義体化手術前の男の子をVRで励ましてやって欲しいってタマちゃんに頼まれたのがことのはじまりだ。
私の役割は、ごくフツーの生身の女子大生のお姉さん役。偶然を装って、男の子に近づいて、男の子の心を掴んで男の子から手術の告白を受ける。そして、自然な形で男の子を励まし、勇気づけること。それが私に与えられた役割だった。
コトは、タマちゃんの筋書きどおりにすいすいコトは運び、私は男の子から、実は義体化手術を受けるっていう告白を受け、男の子を励まし、勇気付けた。いくら身体が機械になったとしても、心までは変わらない。あなたは決して機械なんかじゃなくて、れっきとしたニンゲンなんだって。少なくとも私はそう思うよって。
あの子は泣いていた。ううん、VRだから涙が流れているかどうかまでは分からない。でも多分、泣いていたと思う。そして、ジャスミンさん、ありがとう。僕、頑張るからって言ってくれた。
ごめんね。ホントは私も君と同じ機械の身体なんだ。それでね、この身体で生きていくってことはね、あの時私が言ったことなんかより、ずーっと厳しいことなんだ。私、嘘ついたんだ。ごめんね。
でも、本当につらくてくじけそうな時はさ、「フツーのニンゲン」でもジャスミンお姉さんみたいな考え方の人もいるんだって思い出して、勇気を振り絞って生きて欲しいな。私は、ううん、君のジャスミンお姉さんは、いつだって君の相談に乗ってあげるからね。
だから、
「頑張れ!」
府南病院前の電停で思わず口をついて言葉が飛び出してしまう。それで、電車待ちの人の注目を一身に浴びてしまう私。ちょっと、いや、かなり恥ずかしい。
ようやく来た電車の階段に足をかけながら後ろを振り返る。そして、病室の義体科の男の子の部屋の窓を見つめて、もう一度、今度は心の中で繰り返した。
(頑張れ!)
- 102 : 前スレ439 :2006/09/04(月) 17:49:42 ID:T4odkdFs0
- すいません、前スレ439です。 >>85 さんとは別人です。
前スレの >>439 から、突然3の444さん?とのリレー小説が始まったので、うれしいやらあわてるやらで大変でした(汗
#なにせ会社で書いt・・・・ゲフゲフン
俺の中では【この続きは製品版で!w】のところで話が終わってたもので、ぶった切った終わり方ですいませんorz
そのあとなんとか1レスだけはつなげたんですが・・・
あのキャラは、
「ヤギーと同じような境遇(家族が無事な分軽いですが)から立ち直って、今はサイボーグであることを前向きにとらえている大人の男性」
をイメージして書きました。
流れのままに、即興劇のノリででっち上げていったので、やや矛盾もありますが・・・(滝汗
でもたぶん、彼の想いは片思いに終わります。
藤原君に一発パンチ入れて、
「彼女を泣かせるんじゃねえぞ・・・じゃな」
とかいって去っていくんでしょうねw
>>85 さんの一連の流れでは、年齢を引き下げて書かれてますね。これはこれでいい感じです〜
では、コケシのアタマをつける作業に戻りますw
- 106 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/05(火) 00:56:13 ID:W8mPsoV00
- >>85 僕視点で続けてみる。だがオチはない。5レス消費。
>>101 素晴らしい内容なので一部流用させていただいた。
ついに、告白した。あらかじめ考えていた通り、テレビの恋愛ドラマのことから映画に話題を移して、強引に義体のことに繋げていった。映画の話題になったところから、ジャスミンさんが、嫌がっているのがはっきり感じられたけど、気づかないふりをして一方的に話を進めていった。こんなことをしたら、ジャスミンさんに嫌われてしまうかもしれない。でも、僕はどうしてもジャスミンさんの答えを知りたかった。機械の身体に偏見を持っていないように思えたジャスミンさんが、お話の世界ではなくて、現実の世界でもそう思ってくれるかどうかを。
病気でずっと入院していて、近いうちに機械の身体になる手術を受ける。僕の言葉を聞いた瞬間、ジャスミンさんの身体が固まってしまった。僕のへたくそな説明でも、ジャスミンさんは、ぼくの身体が脳以外全部機械になってしまうことを、きちんと理解してくれたようだった。映画のことがあるにしても、普通の人が「全身義体化」なんていうことを、聞いてすぐに分かってくれるなんて思っていなかった。だから、ジャスミンさんの反応は、僕にとっては全くの予想外だった。
僕は、おそるおそる、機械の身体になっても今までと同じように付き合ってもらえるのか、映画のように好きになったりすることができるのか聞いてみた。ジャスミンさんは、固まったまま、僕の顔を見つめている。僕の言葉が届いているのかどうかも分からない。一体、どうしちゃったんだろう。無言で僕を見つめるジャスミンさんの視線に耐えられなくなって、僕は顔を背けてしまった。否定の言葉が返ってくるのだろうか。やっぱり、お話と現実は違うのだろうか。それにしたって、どうしてこんなに怖い顔をして僕を見つめているんだろう。もしかして……。
- 107 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/05(火) 00:58:30 ID:W8mPsoV00
- ジャスミンさんの身近な人に、機械の身体の人がいるんだろうか。その人のことで悲しいことや辛いことがあって、僕がそれを思い出させてしまったんだろうか。映画に関しては、苦難の末にハッピーエンドを迎えるというストーリーが話題を呼んでいるけれど、義体に関することは実はあまり触れられていない。だから、ジャスミンさんが、義体に関してこんなに詳しいのは、映画以外のことで知ったからなのかもしれない。例えば家族や恋人が機械の身体だったとしたら……。僕は、もしかして、とんでもないことを聞いてしまったんだろうか?
変なことを聞いてしまってごめんなさい。そう謝って、話題を変えようとした時、ジャスミンさんが口を開いた。僕の目をまっすぐ見つめたままこう言った。”今すぐには答えられない。日曜日まで待ってもらえないか”と。やっぱり、聞いちゃいけないことだったんだろうか。今まで何回か話した印象では、ジャスミンさんは嘘をつかない人だと思っている。答えたら僕を傷つける。でも、こんな大事なことで嘘をつくわけにはいかない。そんなことを考えているんだろうか。
とてもそのまま話を続ける雰囲気ではなく、また会いましょうの言葉とともに接続が切れてしまった。
〜〜〜
結局、僕はジャスミンさんの答えを聞けなかった。ジャスミンさんのせいではない。金曜の夜、僕の容態が急に悪化して、集中治療室に移されてしまったからだ。朦朧とした意識の中で、普段は温和な吉澤先生の顔が、厳しく引き締まっているのを見たような気がする。ベッドの脇でお父さんとお母さんが泣いていたように思う。3日間、僕の意識は戻らなかった。いわゆる、生死の境を彷徨うという状態だったらしい。その状態で、約束の日曜日が過ぎてしまっていた。目が覚めた時に見た吉澤先生の顔は、相変わらず厳しかったけれど、おぼろげな記憶に残っているあの夜に比べれば少しだけ緩んでいるような気がした。お父さん、お母さんも、沈んだ顔ではあっても、もう泣いてはいなかった。
- 108 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/05(火) 01:01:09 ID:W8mPsoV00
- 容態を気遣いながら、吉澤先生が身体の状態を説明してくれた。僕の身体は限界にきてしまった。生命維持装置の力を借りても、もう命を保つことができなくなった。今日明日にでも、機械の身体に移らなくてはならないという。お父さんもお母さんも、僕の身体を機械にすることに同意した。後は僕が決心するだけだった。
こんな状態でVRにアクセスすることなんてできるはずがない。ジャスミンさんの答えを聞くことはできない。僕が自分で考えて、自分で決めなければならない。少し考えて、答えを1日だけ待ってもらうことにした。吉澤先生は、あまりいい顔をしなかった。容態がいつ変わるか分からないのだろう。でも、すぐに答えられるものでもないだろうと了承してくれた。
機械の身体を拒むという選択肢はあるだろうか。どんなに長くても、あとせいぜい1ヶ月。この集中治療室から出ることなく死んでいくことなんてできるだろうか。答えは初めから決まっている。機械の身体になって、どんなに辛いことや苦しいことが待っているとしても、生きていくことを選ぶしかない。ただ、あと少しだけ、この身体に名残を惜しむ時間が欲しかった。ジャスミンさんの答えを聞くことができていたら、どんな気持ちでこの時を迎えていただろうか。
〜〜〜
義体化手術の後は普通の病室に移されたけど、標準義体の姿でジャスミンさんに会うわけにはいかなかった。全然違う顔、全然違う声。お父さんやお母さんでさえ、それを僕として受け入れることはできなかったようだった。僕の顔を見ても、どこか他人の顔を見ているような印象がした。この後、元の身体そっくりの義体に入ったとしても、この印象が消えないのではないかという恐怖感を拭い去ることができなかった。
- 109 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/05(火) 01:14:51 ID:W8mPsoV00
- VRは対面で会話ができるのが売りのサービスだ。でも素顔で相対するわけではない。PCに繋いだカメラが撮っている顔の映像をコンピューターがリアルタイムに処理をして全く別な顔にして相手のモニターに映し出す。汗をかいたり、涙を流したり、顔を赤らめるような細かい部分は再現できないけれど、喜怒哀楽の感情は元の顔以上に豊かに表現してくれる。声の方も同様にマイクが拾った音声を加工するようになっている。こちら側にいる僕自身の外見が全く別人になってしまったら、相手側のモニターにも、それに応じた映像が映ることになる。IDが同じだとしても、ジャスミンさんが、標準義体の僕を僕と認めてくれるはずがない。だからVRにアクセスするのは、元の身体そっくりの義体ができるまで待たなければならなかった。
やっとVRにアクセスした時は、もうそこにジャスミンさんはいなかった。会えないんじゃない。登録情報が消えていた。ジャスミンさんはVRから去ってしまった後だった。僕のせいだろうか? 僕が変なことを言ったあげく、約束を破ったからだろうか? 忙しいジャスミンさんのことだから、VRをやる時間がなくなったり、VRに飽きてもっと面白いことを始めたと思う方が自然だろう。僕のせいだなんて、思い上がりもいいところだ。でも、僕は、最後に別れた時のジャスミンさんの顔が忘れられなかった。あんなに真剣な顔をしたジャスミンさんを、それまで見たことがなかった。ジャスミンさんは、どんな答えを用意していたのだろう。
がっかりして接続を切ろうとした時に、メールが1通届いていることに気がついた。VRの中でだけ使える専用のメールボックスに、だ。僕のVRのメールアドレスは公開していない。知っているのはジャスミンさんだけだ。震える手で、メールを開く。本文には、1行だけ書かれていた。
- 110 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/05(火) 01:16:10 ID:W8mPsoV00
- 頑張れ!
ジャスミンさんの元気な声が聞こえてくるような気がする。やっぱり、ジャスミンさんは機械の身体で生きていく辛さや苦しさを知っていたのだろうか? そして、機械の身体になってしまう僕を励ましてくれたのだろうか? ジャスミンさんの言葉は、いつもまっすぐだった。だから、これは言葉通りの意味なんだ。ジャスミンさんの心からのメッセージ。これから先、辛いことや苦しいことがあったとしても、きっとこの言葉が支えてくれるだろう。
ありがとう。本当にありがとう。あなたのことは忘れません。
感謝の気持ちとともにメールを閉じる。久しぶりの笑顔が僕の顔に戻っていた。
- 111 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/06(水) 00:28:57 ID:jpAEFqzt0
- >>85 ヤギー視点を試してみよう。2レス消費。さわりだけ。
VRって知ってるかなあ。作り物の世界の中でいろいろな人とおしゃべりできるというネット上のサービスだよ。そんなの、いくらでもあるだろうって? ふふん。それがちょっと違うんだなあ。モニターの画面の上で相手の顔を見ながらおしゃべりできるんだよ! でも、その顔は素顔じゃない。カメラが撮っている映像をなんたらモーフィングっていう技術で加工して全然違う顔に変えちゃうんだ。うーん、全然違うというわけでもないか。元の顔の印象がまったく残らないわけじゃないからね。でも、実際に素顔の本人に会っても、すぐには分からない程度には違うんだ。できあがる顔にはいくつかのパターンがあって、その中から好きなものを選べるけど、部品を合成して作るわけじゃないから、同じ顔は二つとない。しかも、ほんのちょっと素顔よりも美男美女にしてくれる。本人の喜怒哀楽の表情は、全部そのまま相手のモニター上に映された顔に反映される。現実の世界と同じように笑ったり泣いたり怒ったり。そういう形でモニターに表示される相手と、自由におしゃべりできるんだ。真剣な議論でも、趣味の話でも、もちろん恋を語ることだって。どう、すごいでしょ? まあ、これはみんなパンフレットの受け売りなんだけどさ。
このVR、大学生協の掲示板でも、結構話題になっている。最初の5日間は無料のお試し期間という設定で、それで始めて、もうどっぷり浸りきっちゃっている人もいるらしい。大学の方も困っているって聞いたけど、楽しいものはしょうがないよね。もちろん、ゼンゼン興味がないって人も多い。佐倉井やジャスミンなんかは、そのクチだ。そりゃあ、ジャスミンみたいに男の子にもてもてで、何をやってもうまくいく子はそう思うんだろうね。こんな作り物の世界になんか用はないだろう。でもさ。私みたいに、どこにでもいるフツーの女の子には結構魅力的に思えるんだよ。女の子10人に会ったら、半分くらいの子はすぐに思い出せるでしょ? でも、どうしても思い出せない印象の薄い子が1人くらいはいるもんだ。私は、いっつもその1人っていうことになっちゃうんだよ。
- 112 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/06(水) 00:33:15 ID:jpAEFqzt0
- 現実の世界では、私の存在なんてそんなもん。じゃあ、VRの中だったらどうだろう? ジャスミンみたいに、家はお金持ちで有名なレストランを経営していて、星ヶ浦に別荘だって持っている。美人で頭が良くてスポーツ万能。カラオケが下手なのもご愛嬌。どう? こんな自己紹介を見たら誰だって声をかけてみたくなるじゃないか! 顔だって地味なだけで元はそんなに悪くないんだ。一番見栄えがする顔を選べば、これでもちょっとしたものなんだよ。
ジャスミンはVRにゼンゼン興味ないと言っていた。ちょっと悪いかなって思ったけど名前を使わせてもらうことにした。登録名が八木橋裕子とかヤギーとかじゃあ、どうしても地がでてしまいそうだし、ジャスミンさんって呼ばれれば、それだけ演技しやすくなる。そう、演技。これは作り物の世界の中で作り物の私が演じる恋愛劇。それのどこが悪いのさ。現実の世界でも作り物の身体の私は、恋愛なんてうまくいったためしがない。だったらいっそのこと全部作り物だとしても、それで楽しい思いができるんだったら、現実なんかよりよっぽどいいよ!
自己紹介の効果は絶大だった。お試し期間が終わる頃には十人以上の男の子達から声をかけられていた。これならいける! 確実な手ごたえを感じた私が、お試し期間の終了時に表示された有料サービスの申し込み画面のOKボタンを押したのは、当然のなりゆきっていうもんだ。
さあ。これからかっこいい男の子達と素敵な恋をいっぱいするんだ! 楽しみだなあ。
- 416 : 名無しさん@ピンキー :2006/10/01(日) 13:12:28 ID:lvsZx/kU0
- >>112
そんな私の熱狂は1週間しかもたなかった。どの男の子も2、3回話しただけで、みんな私から離れていってしまうんだ。こっちから話しかけようとしても、すぐにVRから落ちたりビジーサインを返してきたりする。なんで? どうして! 美人で頭が良くてスポーツ万能のスーパー女子大生の私とお喋りしたくないなんて信じられないよ! 一番熱心に話しかけてきてくれた男の子から、露骨な拒絶のサインをもらったのがあんまりショックだったので、その夜は一睡もできなかった。そして一晩じっくり考えて、やっと私も理解した。
どんなに自己紹介を飾りたてても、実際に話をするのはこの私。ジャスミンじゃなくて八木橋裕子なんだ。地味な顔、地味な声、地味な格好。10人の中で一番印象に残らない。でもそれは外見だけじゃなかったんだ。佐倉井みたいな軽妙なトークなんてできっこない。ジャスミンみたいに話題が豊富なわけでもない。女の子らしい美味しい食べ物や可愛い服なんて、私には縁がないし、旅行にいった話もできやしない。私の自己紹介を見て声をかけてくる男の子達は、自己紹介通りの女の子を相手にするつもりで、話題を振ってくるわけだ。でも、私には、そのどれにも満足に応えることができないんだ。いつも、ジャスミンと話しているから真似をするのはカンタンだ。そうたかをくくっていた。でも違うんだ。真似できるのは上っ面の部分だけ。だから会話も形だけのやりとりをしたらすぐに終わってしまう。
例えばさ。悠遊茶館の杏仁豆腐とカティーサークの杏仁豆腐のどっちが美味しいかなんて聞かれてさ。私、答えられるわけないじゃないか。しかたがないから適当に答えるけど、それじゃ話が続くわけがない。相手の男の子達は、雑誌なんかでいろいろと薀蓄を仕入れてきてるけど、それが全部不発に終わっちゃう。あいまいな相槌を打つことしかできない私相手じゃ話をしたって面白いわけがない。これがホンモノのジャスミンだったら、ふたつの味の違いを的確に表現して、どっちが好きかはっきり言えるだろう。佐倉井だったら、男の子以上の薀蓄をたれるかもしれない。でも私には、そんなことできるはずがないんだよ。
- 417 : 名無しさん@ピンキー :2006/10/01(日) 13:17:45 ID:lvsZx/kU0
- 万事この調子。こんな会話だけで男の子の心を掴むなんてできっこない。少なくとも、ジャスミンと付き合おうなんて男の子相手にはね。1週間経って、それがはっきりわかっちゃった。私はジャスミンになれはしない。私は八木橋裕子なんだ。
でも、おかしいよね。だって、これって私がいつも言ってることじゃないか。たとえ身体が機械でも心は私。VRの中だって、どんな姿をとろうとも、自己紹介に何を書こうとも、中身は私。何も違いはないじゃないか。私、一体何を考えていたんだろう。こんなことに気づくのに1週間もかかったんだ。馬鹿だよね。はは。
そうと分かればVRには用はない。有料サービスを申し込んだ期間が過ぎたら、もう終わりにしよう。でも……。
ジャスミン目当ての男どもなんかどうでもいいけど、1人だけ気になる男の子がいる。登録名は『隆太』君。あの事故で天国に行ってしまった私の弟と同じ名前。最初に話しかけられた時、自己紹介を見てドキッとした。VRの力を借りて弟が私に会いに来てくれた。そんなことを一瞬考えた。誰も信じてくれないだろうけど、事故の後で、私はもう一人の私に会ったことがあるし、お父さんからの手紙も読んだ。だから、心のどこかでは、お母さんや隆太にも会えるかも知れないって、思ってるんじゃないだろうか。もちろん、隆太君は、顔も声も喋り方も、弟とは全然違う。それでも、弟と話しているっていう気持ちを打ち消すことができなかった。
そんな状態で、隆太君を恋愛ゲームの相手と考えることなんてできるはずがない。ジャスミンじゃなくて、八木橋裕子として弟の隆太と話す。私には他に接しようがなかった。自己紹介とは全く違う私の振る舞いに、隆太君、きっととまどっていただろうなあ。
- 418 : 名無しさん@ピンキー :2006/10/01(日) 13:20:26 ID:lvsZx/kU0
- 隆太君は、自己紹介によれば私より少し下。まだ高校生だ。話してくれるのは、家族のことや中学の頃の思い出や、最近見たテレビ番組や、ネットで見つけた面白そうなサイトのこと。それから、お昼の連続恋愛ドラマには、なぜかとても詳しいんだ。これって高校生の男の子の話題だろうか? 夜も 10時には寝てしまう。とても健康的な生活をしているってだけのことかもしれないけど、もしかしたら……。もしかしたら、何かの病気で学校を休んでいるのかもしれない。そんな雰囲気を隆太君は持っていた。
それから3週間。隆太君と何回か話をした。話の内容は相変わらず。他愛のない内容だけど、それが一層姉弟の日常会話という雰囲気を強めていった。もう、私にとっては、VRを使った仮想世界での会話ゲームでさえなくなっていた。隆太君の方はどうなんだろう。何となく、私に聞きたいことがあるような感じがする。遠慮しないで聞いてくれればいいのにと思うけど、無理に聞き出すわけにもいかないし、自分から話してくれるのを待つしかない。
この間は、テレビの恋愛ドラマのことを話していたら、愛の形にもいろいろあるよねっていうことになって、私、うっかり『新しい愛のカタチ』のことを喋っちゃった。VRの中では義体のことは話さないと決めていた。現実の世界では義体のせいで嫌な思いばっかりしてるから、VRの中にまでそんなものを持ち込みたくなかったんだ。いくらジャスミンを演じていても、義体って言葉を聞いたとたん、元の八木橋裕子に戻っちゃう。そう思って気をつけていた。隆太君と話をするようになっても、それは変えないつもりだったのに。
確かに話題になっている映画だけど、高校生の男の子の隆太君が興味を持つようなものでもない。私みたいな義体ユーザーは、義体のことがどんな風に描かれるんだろうと思って、期待半分不安半分で注目してるけどね。それで、隆太君も、こんな話題はさらっと流してくれるかと思ったら、予想外に興味を示していろいろと聞いてこようという気配だったから、私、慌てて話題を変えちゃった。
隆太君、義体に興味があるんだろうか? 映画みたいにフツーの人と義体の人が愛し合うなんて、私の経験からしたら奇跡みたいなものなんだ。だけど、もしかしたら、隆太君とだったら、うまくいくのかもしれないね。
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