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114 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/06(水) 12:46:56 ID:cinxWsIG0
—アジア圏の均衡は、ついに崩れた。
否応なく戦火に巻き込まれていく日本。

・・・そして、ついに日本を舞台に、戦争が勃発する。

急速に拡大する戦線。政府は一つの決断を下す。
—すべての義体所有者の強制徴兵。
義体のメンテナンスは政府所管となり、政府に従って軍に入隊する以外、彼ら義体所有者の生きる道は閉ざされる。

そして、八木橋裕子もまた、その犠牲の1人であった・・・・・


アナザーストーリー「戦場のヤギー」
近日公かiうわなにをする冗談だってやめ亜qwsでfrtgyふじこpl;@:「」

115 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/06(水) 17:42:22 ID:IzwNApjN0
八木橋裕子:「ごめんね。藤原。会ったら別れるのがつらくなるからさ。
だから私、黙っていくことにするよ。本当にごめんね」

西田茜:「空に綺麗な花火がたくさんあがりました。ぎゃはっ!」
自衛隊員:「アッカ隊長、やりすぎではありませんか」
西田茜:「なんもなんも。戦争なんて勝ったほうが正義だっけさ」

深町香織:「戦争?球を使った人の死なない戦争なら興味あるけどね」

藤原修治:「裕子さん、どうしてこんなところに!」
八木橋裕子:「あ、あの…」
自衛隊員:「藤原。貴様、上官に向ってどんな口の聞き方をしておるのだ」

「戦場のヤギー」  近 日 公 開

なんちゃって。

116 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/06(水) 20:37:38 ID:jpAEFqzt0
>>114 >>115 妄想した。こういう状況でヤギー語を使うのは難しい。2レス消費。

【!!警告!!】右肩モーター内部温度92度 − 緊急冷却 【承認】【否認】

義眼ディスプレイの片隅で、警告メッセージが瞬いている。舌打ちをして、承認の文字にカーソルを合わせて、ボタンを押す動作をイメージする。

【承認】冷却開始:180秒……179秒……

昔は、手も足も動かさずに、頭の中で考えるだけっていうサポートコンピューターの操作は苦手だった。一般生活限定の義体操縦免許でさえ、取れるまでさんざん苦労したっけなあ。でも今は、身体の動きを一瞬も止めることなく、こんな操作をすることができるんだ。慣れというのは恐ろしいよね。まあ、命がかかっているんだから当然か。

これで右腕はクールダウンが終わるまで使えない。残った左腕だけで、4体の敵の相手を続けなくちゃならなくなった。はっきり言って分が悪すぎる。かといって、このまま無理に右腕を使い続ければ、モーターが過熱して壊れてしまう。そうなったら、即ゲームオーバーだ。修理のために基地に戻らなきゃならなくなる。この地区にいる1級義体化兵は私だけ。もしも、私が脱落したら戦力が80%はダウンする。残りの一般兵だけでは、この状況を持ちこたえるのは難しい。傷だらけの身体でも、だましだまし使い続けるしかないんだよ。

こんな戦いを始めて、もう半年になるだろうか。印刷すれば、たった1枚の紙切れに収まる法律で、私達全身義体障害者は戦闘兵器として国に徴収されてしまった。私もそうやって徴収された中の一人だ。正確に言えば、徴収されたのは、義体の方。国の所有物なのは機械の身体だけで、私は非戦闘員のはずなんだ。理屈だけで言えば、だよ。

117 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/06(水) 20:41:04 ID:jpAEFqzt0
義体化1級の私の物といえば、脳みそだけ。生きていくためには作り物の機械の身体が必要だ。それを取り上げられてしまったら、後に残るのは干からびたタンパク質の塊だけっていうことになる。だから、私は否応なく、私の作り物の身体と行動を伴にするしかない。たとえそれが戦場だったとしてもね。今の私は全部のリミッターを外された、文字通りの鋼鉄の化け物だ。おもーい大砲だって軽々と運べるし、バッテリーの電気がある限り何時間戦ったって、疲れるってことがない。一般兵達は頼りにしてくれるけど、陰では機械女とか人形とか蔑みの目で見ているのは、ちゃーんと知ってるよ。ホント、人間って身勝手だよね。

ああ、藤原は今頃どうしているだろう。こんな時こそ、この機械の身体が役に立つっていうのにさ。配属された部隊も別々だし、戦場で顔を会わせることなんて、よほどの奇跡がない限りありえない。私にできるのは、せいぜい空を仰いで藤原の無事を祈ることぐらいしかない。なんて役立たずなんだろうね。はは。

……痛いっ!

考え事をしていた一瞬の隙を突いて、敵の2体が肉薄して来ていた。7.62mmの機銃弾がわき腹の人工皮膚を剥ぎ取っていく。モーターのクールダウンは15秒前に終わっている。バッテリーの残量をかき集めて全力で反撃をしなくては。こんなところで死ぬもんか! もう一度藤原の顔を見るまでは……。

八木橋裕子 23歳。1級義体化兵としての戦いは、まだ終わらない。

118 :pinksaturn:2006/09/06(水) 23:24:39 ID:BwMBZNWR0
>>115 古堅部長は開発技術者の特権で徴兵を免れたのかな?。

119 : 3の444 :2006/09/07(木) 02:44:53 ID:b6cCcWmJ0
うーむ。なんとなく114さんにのせられて115を書いては見たものの・・・
私には116さんのような戦場の緊迫感みたいなものは書けそうにないなあ。

はじめ、私はただの役立たずでした。仮想空間でみっちりトレーニングを受けたとはいえやっぱり現実の戦場はまるで勝手が違ったんです。戦場はゲームなんかじゃなくって、人と人が命のやり取りをする場所なんです。出力リミッターを外した強靭な身体や、射撃プログラムで制御された正確無比な銃の腕前。それらを駆使すればホントは人の命を奪うなんてカンタン。でも、敵にも家族がいて、恋人がいて、本人にも夢があって、なんて思ったら、殺せるはずない。こんな私を戦場に連れてくるほうが悪い。そう思っていました。今思えばとんだ甘い考えです。でも、そんなことを考えていたら、私所属する部隊の人たちが15人死にました。
さわきさん、しらいわさん、うすいさん、きたじまさん、なかにしさん・・・
今でも名前も顔も全部思い出せます。別にサポートコンピューターにデータとして記録しているものを呼び出しているわけじゃありません。そんなことしなくたって、一人一人の顔ははっきり頭に焼きついています。
全部私のせいです。私が臆病者の甘ちゃんだったからです。ホントはこの人たちの誰よりも強い身体を与えられているのに無様に逃げ回っていたから、死ななくていい命が奪われました。
あなたにとって、大事なのは誰ですか?目の前で銃を自分に向けている敵ですか?
それともともに銃を手にとって戦っている仲間ですか?
敵にももちろんかけがえのない家族や友達、恋人はいるでしょう。でもそれは味方にとっても同じことです。
あなたがたが守るべきなのはどっちですか?
以上、私が言いたいのはそれだけ。

八木橋二尉の新隊員訓示、終わり。
義体化一級部隊、一堂、敬礼!

120 : 3の444 :2006/09/07(木) 02:58:07 ID:b6cCcWmJ0
>>115
一応サイボーグ娘がテーマなんで古堅さんにはご遠慮いただきました。
ま、古堅さんのような技術者は実際に前線には出さないでしょうね。
で、徴兵が嫌で逃げ出したヤギーのメンテナンスを、ヤギーをかくまい
ながらこっそり行っているのです。でも、それがばれてしまって・・・
などと妄想。

戦争ものアナザーストーリーの妄想は実に面白そうですが、実際に文の形に
するには私には明らかにそっち系の知識とか描写力が不足しているので、
きっと読んだらげんなりするでしょう。もしやっていただけるのであれば
114さんとか116さんとか得意そうな方におまかせしてしてしまいます。
私は早く学園祭の続きを書かかなければ・・・。

121 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/07(木) 10:54:46 ID:Ov1xdQPe0
大戦末期。
満天の星空の下。廃墟になったビルの屋上にて。

「もう、ここも駄目かもしれませんね」
「そ、そんなことないよう。近いうちに増援も来ることになってるじゃないか。それまでなんとしてももちこたえなきゃ」
「増援なんてくるわけないじゃないですか。下っ端の僕にだってそんなことくらい分かりますよ。弾薬は尽きる寸前。二尉の義体メンテナンスだってロクにできずに、もう左手は動かないんでしょ」
「あきらめてるの?」
「あきらめてるってことじゃないです。覚悟は決めましたってことです。大して変わりはないかもしれませんが」
「…」
「八木橋二尉は恋人とかいたんですか?」
「ずいぶん昔の話をするんだね。もう…忘れちゃったよ」
「そうですか。僕は好きな子はいたんですけど勇気がなくて告白できませんでした。今思えばしておけばよかったなあ。心残りはそのくらいですよ。父も母もとうに死んでますし、兄弟もいませんし」
「…そう」
「みんなには童貞じゃないなんて言って強がってましたけど、実は僕まだ童貞なんですよ。あーあ、一度くらいやりたかったなあ。その子は汐音ちゃんって言うんですよ。目の大きな可愛い子でした。今頃どうしてるんだろうなあ」
「…あのね。…私と、そのう、えっち、してみる?したことないんでしょ。してみたいんでしょ」
「え?二尉と?!」
「そんなに驚かないでよ。そりゃあ本当の人間の身体じゃないけどさ。一応ベースは一般生活用だから、そっちの機能もちゃんとついてるよ。たぶん普通の女の子と変わらないよ」

122 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/07(木) 10:55:39 ID:Ov1xdQPe0
「あ…えと」
「もちろん、あなたが好きなのは汐音ちゃんでしょ。そんなこと分かってる。私を汐音ちゃんだと思えばいいんだ。汐音ちゃんの身体とはゼンゼン違ってて申し訳ないけど」
「はあ」
「あ、嫌ならいいんだよう。別に無理強いしてるわけじゃないからさ」
「いや、その、ものすごく嬉しいです。でも、申し訳ないです」
「申し訳ないのはお互い様。あんたが私を汐音ちゃんだって思うのと同じように、私だってさ…」
「私だって…、なんですか。よく聞えませんでした」
「ううん、なんでもない。なんでもないんだ」
「二尉っ!ふ、服を脱ぐのはいいとして、どうして眼鏡なんてかけるんですか。しかもそんな古くてぼろぼろの」
「眼鏡なんて義体の私には必要ないって?でも、人間の私にはこれが必要なんだ。ごめんね。ごめんね藤原…」
「藤原?藤原って誰ですか?」
「藤原、ねえ、 早く来てよ。 どうしたの」
「……。し、汐音ちゃん。すーっと好きでした。愛してました」
「ふふふ。藤原。今日は、 私がリードしてあげる。 でも今日だけだからね。 私だって恥ずかしいんだから、 ちゃんと覚えてね…おっぱい触ってよう。 やさしくだよ」
「汐音ちゃん、汐音ちゃん」

ごめんなさい。藤原。
私、今でもあなたのこと、大好きだよ。
だけど、ごめんなさい。私のこと、許してください。

123 : 144 :2006/09/07(木) 17:24:50 ID:5wDtGu120
うわわわわ、思いつきで振ったネタがすごいことに・・・・・・

3の444さんとヤギーに「ごめんなさい」を。
そして全てのSS職人に「GJ」を。

124 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/07(木) 21:26:55 ID:86sCSvFi0
>>122
これって「就職活動」で初めて藤原とエッチした時のセリフじゃないですか!
切な過ぎて胸が潰れそうですよ……orz

125 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/08(金) 02:09:56 ID:i2x56ial0
>>122 無理やり続ける。陳腐だろうがドリームだろうがかまうものか。

「……二尉、本当にいいんですか?」
「いいって言ってるじゃないか。早くきてよう」

暖かい手が優しく私の腰に回される。藤原、ごめんね。

キュンッ! グォォォォ ドン! ドン! ズズーーン……

突然の轟音とともにビル全体が激しく揺れる。頭上を何か巨大な物が通過する気配がしたと思ったとたん、衝撃波が私達に襲いかかる。

「二尉!」
「つかまって!」

こんな時は120kgもある機械の身体はありがたい。屋上から吹き飛ばされないよう互いの身体をしっかりと抱きしめ合う。
漆黒の巨体と敵の航空兵器とが繰り広げる戦闘の鮮やかな閃光で、二人の影がビルの屋上をあちらこちらと踊り狂う。

「二尉、あれ、噂の決戦兵器じゃ……」

決戦兵器。ぎりぎりまで追い詰められた戦況を一気に逆転すべく密かに開発が進められているという汎用人型戦闘機。航空機とロボット技術と、そして……義体化したニンゲンの脳を組み合わせた究極の殺戮破壊兵器。いかにも負け戦を仕掛けた政府のお偉方が考えそうなくっだらない代物だ。何機か試作機が実戦に投入されてるって聞いてたけど……。

義眼ディスプレイ一杯に、レベル3機密チャンネルにコンタクトがあることを示す割り込みメッセージが瞬いている。大隊司令部との通信は3日前に途絶えたまま。一体誰が……。

何重にも暗号化された通信チャンネルでさえ、もうテキストメッセージしか送れない。サポートコンピューターが暗号を解読するわずかな時間が待ち遠しい。

126 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/08(金) 02:12:27 ID:i2x56ial0
「オネエチャン、ダイジョウブ? アイエフエフキッテルカラ、サガスノクロウシタッケサ」

これは……茜ちゃんだ!

「アカネチャン、ドウシテココニ?」
「チョットヨリミチシタンダヨ。オタノシミノサイチュウ、オジャマダッタカナ?」
「ソ、ソンナコトナイヨウ!」
「ギャハ! ウワキシタコトハダマッテテアゲルカラ、アトハウマクヤルンダヨ」
「エ、エ? イッタイなに言ってるのさ……

メッセージを組み立てている途中で、コンタクトが切れたことを示すサインが浮き上がる。見上げると、既に戦闘は終わったのか夜空は静けさを取り戻していた。あの中に茜ちゃんがいたんだ。何てことを……。

「二尉! あれを! 味方ですっ!!」

叫び声を聞いて慌てて下界を見下ろすと、あたり一面は火の海だった。爆撃と砲弾を浴びて崩壊したビルの群れが瓦礫の山を築いている。凄い……。これじゃあ、敵の地上部隊は全滅だろう。今ならここを脱出できるかも。その火の海の中を、黒い影がこちらに向かって突進してくる。あれは……永24式巡航戦車だ。折れ曲がった砲身やへこみだらけの装甲板が、それがくぐり抜けてきた戦闘の激しさを物語っている。全速力でこのビル目掛けて走ってきたそれは、速度を落としきれずにビルの壁面に激突してようやく停止する。

「おーーい、こっちだあぁーー」

ハッチを開けてこちらを見上げる人影も、手を振り返しているようだ。あれは…あれは…。微かな機械音がして、義眼のズーム機構が人影を大写しにする。戦車の周辺は真っ暗だけど、私の義眼には真昼間と何の違いもない。

127 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/08(金) 02:14:42 ID:i2x56ial0
藤原!

あれは、藤原だ! 生きていてくれたんだ!

『ウワキシタコトハダマッテテアゲルカラ、アトハウマクヤルンダヨ』

茜ちゃんからの最後のメッセージ。これも茜ちゃんの仕業だろうか。でも、そんなことどうでもいい! 藤原さえ生きていてくれれば、もう他には何もいらないよ。藤原の元気そうな顔を見ることができて、こんなに嬉しいことはない。

もう少し。もう少したてば、この戦争も終わるだろう。藤原と一緒なら、どんなことがあったって頑張れる。誰が何と言おうとも、もう二度と離れるもんか!

藤原の胸に飛び込みながら、愛する人との再会の喜びをかみしめる。これこそが幸せというものだ。敗戦間近の日本の片隅
で繰り広げられる、もう一つの八木橋裕子の物語。二人の前途に幸あらんことを。

128 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/08(金) 07:52:59 ID:uh0dIk4m0
>>127
>前途に幸あらんことを

残念だが無理(つДT)
敗戦と同時にすべての日本軍兵士は武装解除されるわけだが、
おそらく義体兵士は存在自体が兵器とみなされ、解体処分になるかと。

読者のくせに、ヤギーに対してこんな結論しか出せない自分が鬱だ。orz

129 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/08(金) 08:09:18 ID:JNMvyjaf0
ハッピーエンドにつなげるには、勝ち戦か両軍疲弊のうえ終戦協定、が妥当なのかも。

上層部(戦争遂行派)の野望(兵器産業と結託して八百長戦争)が暴かれ→両軍厭戦ムード→終戦協定 とか。

130 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/08(金) 11:08:39 ID:Juj1TWXK0
どのような形での終戦であれ、疲弊した国家や組織が義体のメンテナンス環境を確保できるだろうか・・・
生命にかかわる部分のメンテナンスがシビアかつ短期サイクルだと、生き延びられないかもしれない。
そうでなかったとしても、調子のよくない腕をかばいながら生活するヤギーを見るのはしのびないな・・・

戦争反対。

131 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/08(金) 21:13:17 ID:i2x56ial0
>>122 こんな妄想もしてみよう。2レス消費。

「……さん。裕子さん」
「もっと早く、手、動かして。胸も、下も。藤原、藤原、気持ちいいよう」
「裕子さんってば!」
うー、そんなに強く肩を掴まないでよう。女の子にはもっと優しくしなきゃ駄目でしょ。それに私は裕子じゃなくて汐音ちゃ……ん?

……満天の星空の下。小隊のたった二人の生き残りの私達は、それぞれの愛する人を想いながら最後のひとときを過ごしていた。もうちょっとでイクところだったのに。ここはどこ? 星空はどこにいっちゃったんだよう。どうして私は座席なんかに座ってるのさ! 困惑してあたりを見回すと、藤原と目が合った。映画館の暗闇の中でも、私の義眼には真っ赤な顔でもじもじしている藤原の姿がはっきりと見えてしまう。

映画館? あれ?

規則正しく並んだ座席のそこかしこから忍び笑いが漏れてくる。今日は三週間ぶりの藤原とのデートの日。話題になっている『戦場に咲く愛の花』を観るのが楽しみで……。

「……藤原っ!」

映画はまだ途中だったけど、私は藤原の手を強引に引っ張って映画館を後にする。

……恥ずかしい。

この三週間、藤原の仕事の都合でデートができなかった。藤原とのえっちもおあずけっていうことだ。私は藤原とのえっちが好き。性感が私に残された数少ないニンゲンらしい感覚だということもあるけれど、好きな人と一つになれるってことが何よりも嬉しいんだ。藤原と会えない寂しさを紛らわせるために、しろくま便で夜遅くまで働いた。今日藤原とデートだと思ったら明け方近くまで眠れなかった。だからってデート中に居眠りするなんて一生の不覚だよう。しかもあんな夢をみて寝言を言っていたわけだ。藤原、怒ってるだろうなあ。

132 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/08(金) 21:14:32 ID:i2x56ial0
映画館を出た私達は、あてもなく二人並んで無言のまま歩き続ける。

「藤原?」

……返事がない。こっちを見ようともしてくれない。そうだよね。みんな私が悪いんだ。藤原以外の男の子とえっちする夢なんて、よっぽど溜まっていたのかなあ。……でも、もし藤原がいなくなったら、私はどうしたらいいんだろう。他の男の子を好きになることができるだろうか? 他の男の子に抱かれながら、藤原のことを想うんだろうか? 夢の中の私みたいに。今まで考えたこともなかったけど、この幸せな時もいつか終わりがくるんだろうか?

そこまで考えた時、私は藤原がちゃんと私の横にいることを確かめたくて、藤原の手を握ってた。藤原の手は暖かかった。

「裕子さん……」
ぶっきらぼうな藤原の声。
「な、何? 藤原?」
握った手を振りほどかれたらどうしよう……。
「恥ずかしかった」
私、そんなに大声で寝言言ってたのか。ごめんね、藤原。
「でも……」
「でも?」
「嬉しかった」
やっとこっちを向いてくれた藤原の顔には笑顔が戻っていた。藤原の大きな手が私の手をしっかりと握り返してくる。藤原……。

胸の中に熱いものがこみ上げてくる。機械の身体でそんなわけないだろうって? でも、私は確かにそう感じるんだよ!たとえ身体は機械でも、私に心がある限り藤原への想いは生身の身体と何も変わりはしないんだ。

嬉しさのあまり藤原の腕にしがみついて、耳元で囁いちゃった。
「今日は、いっぱいしようねっ!」
今日2度目に見る藤原の真っ赤な顔。でもとても幸せそうな顔。藤原、大好きだよう!

133 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/08(金) 22:41:44 ID:eLG42xxl0
- イソジマ電工・義体サポートセンター、オペレーションルーム:PM4:15 -

「…システム、復旧しました!」
「OK、こっちも確認した!」
「……やっと落ち着いたか……ふぅっ;」

義体使用者のサポートコンピュータとの通信をつかさどる、リモートメンテナンスサーバ。
リプレイス作業で3日徹夜して、家に帰る気力もなく仮眠室で爆睡していた僕は、1時間ほど前に叩き起こされた。

状況を確認するのに10分。
倉庫にしまおうとしていた旧サーバーを引っ張り出し、バックアップからシステム復旧するのに30分。
オーバーホール手術中の義体患者を特定して機能凍結処置、これが35分。
メインサーバーからケーブルを引っこ抜き、急いで旧サーバーへ接続。これが10分。
…時間にすれば小1時間、でもこれほど長く感じたことは初めてだ。

原因はつまらないことだった。隣の開発室で構築していた、自衛隊向けVR戦闘訓練システム。
納期直前のデスマーチ寝ぼけた彼らは、テストデータの送信先を間違えた。
運の悪いことに、こちらの新サーバがバグ持ちで、本来ならブロックされるはずのシチュエーション情報を、そのまま義体使用者に送信してしまった…というわけだ。
運悪くこのサーバーにアクセスしていた義体使用者は、嫌な夢を見せられていたはずだ。…「戦場になった近未来の日本」という、作り物の悪夢を。

ラックに収めてもらえず、床に放り出された旧メインサーバーが、不機嫌そうな唸り声を上げている。

原因がわかってみれば、VR訓練システムを停めさせるだけでよかったんだけど、「法令遵守」が裏目に出て、僕たちはそういうシステムが開発されていること自体知らなかった。
…結局、見事に遠回りな仮復旧をしたわけだ。
おまけに新サーバを切り離してしまったので、バグ取りのうえ、改めて切り替え作業をしなければならない。

今夜もまた徹夜かな……はぁ。

134 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/08(金) 23:48:12 ID:TdF2kqD90
おおっ。なんか思いもしなかったオチがっ!www

135 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/09(土) 01:01:21 ID:MXothM8X0
>>133
なんかそれはそれで救われない稀ガス…。
軍事機密が漏れた以上、ヤギーたんが消されるのは確実だし。

136 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/09(土) 01:11:22 ID:Xjs2pqCu0
ヤギーのみならず、サーバーにアクセスしていた全義体使用者が同じ目にあったわけで、
すべて消すのは無理ではないかと。

VRシミュレーションデータが全部作り直しになって、ポカやらかしたシステム関係者が消されるぐらいでは(うわぁ)

137 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/09(土) 01:48:56 ID:MXothM8X0
>>136
そのくらいなら「やる」でしょ。
残念ながら、今の自衛隊でも。

138 :pinksaturn:2006/09/09(土) 09:47:33 ID:YJ9Irkhi0
>>137 自衛隊ならそこまでやらず、イソジマに天下りした幹部の権限で裏金を使って義体使用者にあいまいな性格の”賠償金”を渡し口をつぐませるかも。
検査入院編、腕相撲編のときはそれで一件落着でしたね。
担当者は消してしまうとソフトのメンテに支障が出るし、表沙汰になったら株主から担当者に賠償請求しろと言う声が上がるから、放置しても口をつぐむでしょう。
よって表向きはおとがめ無し、後で密かに左遷というのが相場ですかね。

139 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/09(土) 14:26:41 ID:/7KB6wqC0
あの戦争が終わった時、強制徴兵された義体ユーザー達は、定期的なメンテナンスの呪縛から逃れる術もなく、騒ぎがおさまるまで国内に隠れ潜むことすらできず、己の命を繋ぐため次々と投降していった。

150馬力で駆動される強靭な鋼の身体。正確無比な射撃管制プログラムに高度暗号通信機能。義体化兵士は存在自体が兵器とみなされ、例外なく解体処分の決定が下されていた。しかしながら、解体処分に付されたのは義体であって義体ユーザーではない。鋼の鎧を剥がされれば無力でちっぽけな脳みそしか残らない義体ユーザー達は、哀れみと嫌悪の対象でこそあれ憎悪の対象にはならなかった。

戦争はこの国から多くの人命を奪っていた。技術者とて例外ではなく、義体開発に貢献した優秀な頭脳のほとんどは、下級兵士として徴兵され祖国の土に還っていた。産業施設はことごとく兵器生産に転用され、もはや高度な技術を要する義体製造など望むべくもなかった。僅かばかりの基礎検討資料と生命維持装置の原型だけがこの国の義体産業が遺した全てだった。
新たな義体を用意することは連合国の誰にもできなかった。では、解体された義体の中に住んでいた義体ユーザー達はどこ
に行ったのだろう?

荒れ果てた国土の片隅にひっそりと立つ、窓一つないコンクリートの塊のような建物。中に入れば、無数のガラス容器が訪問者を出迎える。培養液で満たされたその容器の中に浮かぶ物は……。

【631185/2022;F (O-) Yuko Yagihashi】

容器に貼られた小さなラベルの上の小さな文字。そこから、かつてこの国で静かに暮らしていた少女の姿を想像できる者はいるだろうか? 手も足も目も耳も無く、一切の感覚から切り離され、元の1/10にも満たない余命が尽きるまで夢現の薄明の世界を彷徨う少女の魂は、今、何を夢みているのだろう。埋め込まれた数個の電極と小さなコンピューターが、時折、夢の片鱗を生体モニター用のディスプレイに投影する。

「… fujiwara … kyou ha ippai siyou ne … 」

せめてその夢が恋人との幸福なひと時であることを祈らずにはいられない。

140 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/09(土) 15:16:27 ID:MGivMB2n0
orz

141 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/09(土) 15:24:59 ID:Qci+0Vk60
>>139
もし戦争の相手国の義体産業が未熟なものであれば、義体を解体処分するような勿体無いことはせず、極力無傷のまま手に入れて構造を詳細に調査研究することになるかと。
むしろ不要なのは脳のほうで…

「裕子さん!裕子さん生きていたんだね!」
「ハァ?裕子?誰それ。私はスージーよ」
ヤギー…すまん…orz

142 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/09(土) 19:35:23 ID:CuynoWhC0
・・・・・・俺は今、戦場ネタを振ったことを激しく後悔しているorz

143 : 名無しさん@ピンキー :2006/09/09(土) 23:33:41 ID:W1Ee/EMK0
盛り上がってしまいましたが...。イメージが...。orts
よって >>114-142 は見ないことにしました。
(斜め読みした時点で脳味噌が拒絶反応を...。すまねぇ。)

ヤギーは平和な日常でこそ輝く存在です!
そろそろ元の世界に戻してあげてくださいな。


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