このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
ねえ、藤原。あっちにはたくさん人が花見に来てるのに、こっちはいきなり静かでしょ。なんでか知ってる?藤原はここ来るの初めてだっけか。じゃ、知らないのも無理ないよね。あのね、ここの桜は一年中いつでも咲いてるんだ。そう。どんなに寒い冬でも、どんなに暑い夏でも一年中。なんでも研究所で遺伝子改造して作った特別な桜なんだってさ。だからね、誰もこっちには来ないんだ。桜はぱっと咲いて、ぱっと散るからいいんだって。散らない作り物の桜なんて見ても面白くもなんともないんだってみんなそう言ってる。なんでだろうね。ここの桜だって綺麗だよね。あっちの桜と同じように、ちゃんと生きて、立派に花を咲かせてるよね。同じ花には代わりないのに、なのに、なんでみんなそんなふうに思うんだろうね。私は、あっちの桜よりこっちの桜のほうがいいな。こっちで二人で花見しよう。友達なんかほっておいてさ。あっちは、うるさいよ。こっちのほうが静かでいいよ。
じゃーんほら。ビールだよ。あとね、おつまみもいろいろ買っておいたんだ。どうせ藤原は花より団子でしょ。私分かってるんだ。でも、私は、団子より花だな。
私は桜の花を見るのが好き。それも、誰にも見てもらえなくても、誰にも本物の桜って思ってもらえなくても、くじけず一生懸命頑張って、いつも明るく花を咲かせている、ここの桜を見るのが一番好きなんだ。
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