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五日目 春まだ浅い甲斐路へ

そろそろ春休みも終わる。だが手元には一日余った青春18きっぷがある。消費しなくてはならない、ということで今回は東京より西の方に向かってみることにした。ながらの券があれば一つ愛知県あたりまでいけるのだが、今となってはもう遅い。

毎年夏、長坂に行っているが、冬はどうなっているのだろうかと気になる。でも同じ場所に行ってもつまらないので、その手前の穴山を訪ねてみよう。知る人ぞ知る、オオクワガタの産地である。

しかし、起床して外をうかがうとひどい雨である。予報では向こうは大丈夫らしいが、これは不安である。時期外れの冬の雨の中を、傘もささずに自転車で行くのは非常に辛いものがあった。

朝の川崎の地下街は、まるでゴーストタウンのようだ。

川崎から南武線始発に乗る。ここでの209系は久しぶりだ。道中ほとんどを寝てすごし、早起きした分を補う。

立川から中央線の旅の始まりだ。高尾までは201系にお世話になる。そういえばまだE233系に当たっていない。それで高尾で115系信州色に合う。休日なら相当に混むだろうが、今は平日のしかも下り電車だ。ゆうゆう1ボックス占領する。途中、甲府に向かう客で混雑したが大したことはない。外を見ると雨が降っていて、寝ていたからだ。

だが、穴山に着くと雨は降っていなかった。よかった。

穴山駅は簡素なつくりの無人駅だ。ここからは特にあても無いので地形図を頼りにオサムシのいそうなところへ行ってみることにする。

しばらくして見つけた崖を崩すと、見たことのないアリが現れた。トゲアリである。自分が想像していたよりも随分と大きく感じる。採集しようとしたが、既にこと切れている様子で腹に穴も開いていたので断念した。

しばらく歩を進めていると、向こうの崖に奇妙なものを発見する。この穴は何のために作られたものだろうか?この手前の倒木上でホソスジデオキノコムシらしきものを採集。オサムシは採れない。

あるところで木をひっくり返すと、黄色い甲冑に黒の水玉をつけた可愛いゴミムシが現れる。ヒトツメアトキリゴミムシだ。

この後も崖を崩したりするのだが、ほとんどが南をむているのでオサムシは全然でない。カメムシやハナムグリ、コガシラアオゴミなどは出てくるのに、一匹くらい出ても良さそうである。それともここらのオサムシ層は崖に集まらないのだろうか?

とりあえず、駅を一周できる道があるようなのでそれにしたがって歩いていく。途中、こんなものを見つけた。パンケーキがたくさん捨ててある。ためしに手で触ってみると、ものすごい煙を出してくる。これはパンではない、キノコだ。なんという奇妙さを持っているのだろう。

この先、ある倒木でコクワガタオスを発見したが、リリース。何だかクワガタムシというと、私にはどうしても飼育するものだという感じを受けてしまい、標本にする気になれない。もっとも、途方も無く大きなオオクワガタなんか見つけてしまったら話は別だが、未来の昆虫少年のためにもなるべく採集しないようにしておくつもりだ。但し、小さくて樹液に集まらず、高い所にいるようなものや朽木内に潜んでいるものも別である。

さらに行くと、今にも土にかえってしまいそうな倒木が多数見受けられる。オサムシに飢えている私は何かしら出てくれることを期待して崩してみるも、ウバタマムシの残念な鞘翅が出てくるらいだ。それでも何度か崩すと、ヨツボシゴミムシが現れる。これくらいで満足しておこう。ここにはオサムシはいない。この訪問はあまりよいものではなかった。

穴山に戻って休憩。駅前の桜がきれいだ。八ヶ岳も見える。これでオサムシがいたらもっとよかったのだがしょうがない。甲斐小泉に全てを託して、ここを後にしよう。

無人駅なのにアナウンスが入り、列車が遅れているということなので予定変更、一本前のに乗って早めに小淵沢入りする。

やってきた信州色の115系に乗り、窓を開けて車窓を眺めているとこんなものを発見。以前は湘南色でどこかを走っていたようだ。

小淵沢到着。八ヶ岳がものすごく鮮明に見えていて素晴らしい。風景的には、今日出かけて正解だったかもしれない。次の小海線まで一時間半くらいあるので、ゆっくり過ごすことができる。

とりあえず昼食だ。山菜うどんというものを頼んでみる。山菜の渋みがきいてなかなか乙な味である。汁は非常に濃い関東風で、のむのに難儀した。

お土産として野沢菜を購入。そういえば、二年の移動教室の際、野辺山のお土産の中にも野沢菜があったような…

トイレは向かう途中の壁に、地元の小学生が書いた絵が展示されていた。小海線の絵だが、これはどう見てキハ52を題材としている。やはり日本のローカル線にはキハ52を始めとしたキハ20系列がぴったりだと思うが、小海線は今夏、ne@trainを運行。これも時代の流れか。

駅で待っている間、外人の団体がいっぺんに出てきた。サッカーチームのようだが、こんな田舎の駅によくもまあいらっしゃったものだ。なんとも風変わりな光景を見させてもらった。

小淵沢からわずか一駅で甲斐小泉に着く。私はこんな風情の無い駅舎よりも旧駅舎の方がよっぽどよかったと思う。旧駅舎のときに訪問できなかったのが残念だ。

駅近くから出てる道を歩いてみることにする。オサムシはいるか?

しばらく行った所の倒木をひっくり返すと、ヒサゴゴミムシダマシが水滴をたくわえて固まっていた。独特な体型がいい感じである。

そしてよく木全体を見渡してみると、ひっくり返ったクロナガオサムシを確認。やっとオサムシに出会えた。

そしてもう一匹確認。1ペア採集である。

こうして見ると、青春18きっぷの五日間の旅では、全てにおいてオサムシを採集することができた。今、春の旅の目的が達成された!

さらに進んでいくが、八ヶ岳はご覧のように森林が邪魔をしてうまく写せない。森林限界地点まで行けば良さそうだが、私にはそんな時間はない。

右下の端にちょっこっと写っている建物の脇から、テツなにおいがする。

ヨ!こんな風に塗られて、気分はどうだい?

こっそりと、ドアが開いていたので中に入ってみたヨ…

歩を進めていくうちに、ある倒木の樹皮を剥いでみた。すると、やっちまった、アリの巣をさらけ出してしまった。しかもこのアリは非常に大きい。ムネアカオオアリのようだ。色々なサイズがいたので何匹かつまみ、そっと皮を元に戻しておく。虫嫌いな人が見たら、その場で卒倒してしまうであろう光景を、私は一人楽しむことが出来た。

結局、この道のどん詰まりまで行ったのだが、とほうもく大きなムネアカオオアリの女王ぐらいしか収穫がなく、今来た道を引き返す。何本もの倒木をひっくり返していくが、オサムシは出ない。最初の方で見つけられて本当によかった。

駅近くに、こんな看板を発見。ヘボとは地蜂、おもにクロスズメバチをさすこのあたりの方言だ。はたから見るとこの看板は正気のものとは思えないだろうが、そのように思うなら是非甲斐小泉駅に降り立つといい。いや、ほかでも中部地方では広くヘボが養殖されているようだ。

簡素な甲斐小泉駅だが、オオムラサキをモチーフにしたステンドグラスだけは評価したい。いつまでもこのような光景が楽しめる場所であってほしい。

小淵沢駅へはあっという間に帰ってくる。

そして、前から撮りたかった「あずさ2号」。残念ながら青春18きっぷでは特急に乗れません。

またまた信州色の115系に乗って甲府まで向かう。スカ色の115系に当たらなかったのは残念だ。

甲府に降り立つと、ぶどう色の機関車がレールを従えて時を待っている。まさかこんな所でこんなものに出会えるなんて思いもよらなかった。鉄道面ではこれが一番の収穫である。

帰りの高尾で初めてE233系に当たる。本当は滝川でまた南武線に乗り換えて戻る予定だったが、そのすわり心地のよさと特快表示に負けて東京まで行ってしまった。おかげで川崎には予定より二十分近くかかってしまったが、まあよいだろう。

成果

ホソスジデオキノコムシ

ヒトツメアトキリゴミムシ

ヨツボシゴミムシ

ハナムグリ.sp

コガシラアオゴミムシ

ウリハムシ

プテロ.sp 以上1ex.

クロナガオサムシ(1♂1♀)

ヒサゴゴミムシダマシ 以上2exs.

ムネアカオオアリ 4exs.

何はともあれ、オサムシが採れたので満足しよう。

やはり、この地域は夏に行ったほうが面白い気がした。また今夏もいけたら良いなぁ。

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