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コラム8
基礎有機化学58

<直線とジグザグの安定性>
 ベンゼン環がたくさんつながった 多核芳香族化合物 は、安定なベンゼン環をユニットとする分子なので安定である。しかし、ベンゼン環がつながっているといっても、そのつながり方には多少問題がある。

 ベンゼン環が一辺を共有するように次々につながった分子を考えてみる。たとえばベンゼン環4個が直線状につながったナフタセンとジグザグにつながったクリセンという二種の 異性体 を比べてみよう。一見すると両者とも同じ安定性に見えるが実際は大違い。クリセンは4個の環がすべてベンゼン形の共鳴構造をとることが可能なのに対し、ナフタセンでは、どう二重結合をいれかえてもベンゼン形は2個しかつくれず、残りの2個の環は二重結合が環から外へ突き出たビスメチレンシクロヘキサジエン環にしかならない。ベンゼン環が線状につながった分子では、ジグザグ形のほうが直線形よりも安定なのである。


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