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おもしろ化合物第27話:「三つ葉のクローバー」




 別に手を抜いているわけではないのですが(^^;、またまた前話の続きです。[2.2]パラシクロファンを多層階に積み上げたのが「ちょうちん」でした。今度は三角形に三つつなげた形の分子です。左側のが中央のベンゼン環の3辺からパラシクロファンを生やした形のクローバー型トリフォリアファン、右側がパラシクロファンの高位同族体というべき3個のベンゼン環からなる三角環状分子デルタファンです。

 トリフォリアファンは分子が 3回対称 軸をもつ三つ葉のクローバー型をしているところから名づけられました。四つ葉じゃないのが残念ですが、中央がベンゼンなのでいたしかたありません。この三つ葉の合成は、[2.2]パラシクロファンのベンゼン環をつなぐエチレン鎖をハロゲン化、脱離を繰り返してなんと三重結合にしたものを3分子付加環化させて一挙に中央のベンゼン環を構築しています。途中のアルキン(パラシクロフィン)は直線であるべきsp炭素がほぼ直角に折れ曲っている高度のひずみ分子で、もちろん単離することはできません。

 他方、デルタファンの方は スーパーファンチョウチン 合成にも用いられた常套手段である熱反応によるo-キシリレンの付加反応でつくられています。こちらの分子は中央部に空洞をもち、他の分子をとりこんだりできそうです。事実、銀イオンが半分はまりこんだ形の複合体がつくられています。



 ref. trifoliaphane: M.Psiorz and H.Hopf,Angew. Chem. Int. Ed.,21, 623 (1982); deltaphane: H.C.Kang, A.W.Hanson, B.Eton and V.Boekelheide,J. Am. Chem. Soc.,107, 1979 (1985).


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