第35話
戦いをサーナイト達に任せ、リクヤ達はキュウコンの住処へ向かった。
「誰も、いない?」
チコリータが呟く。
「この急いでる時に・・・。」
バシャーモが言う。
「やはり、先に来ていたか。」
その声にラティオスは冷たいものを感じた。
「油断も隙もないな。」
声の主はフーディンだった。
「まさか、アブソル達、負けちゃったんじゃ・・・。」
チコリータの声は震えていた。
「僕達と同じ作戦に出たんだ。」
ラティオスが言う。
「あいつの仲間が戦ってる隙を見て、俺達を追って来たか。」
バシャーモが呟く。
「平和のためだ、リクヤ、すまん!」
フーディンはそう言うと凄い速さでリクヤに向けサイケ光線を放った。
バシャーモとラティオスが応戦しようとした、その時!
「お待ちなさい。」
部屋中に声が響くと同時にサイケ光線はかき消された。
「なにっ!?」
フーディンは何が起こったかよく分からないようだ。
「彼らは、私の大事な客よ。」
どこからかキュウコンが現れ、フーディンに告げる。
「彼らには指一本触れさませんわ。」
キュウコンがフーディンに告げた。
「久しぶりね。」
キュウコンがこちらを向いて言った。
「知っていたんだな。俺達が来ること。」
バシャーモが言う。
「ええ、知ってたわ。」
キュウコンが言った。
「だからあの時・・・。」
ラティオスが以前キュウコンが言ったことを思い出して言った。
《・・・また遭いましょう、いずれ近いうちに・・・。》
確かにキュウコンはそう言った。今この時の事を見越して・・・。
「伝説のキュウコンが、本当に・・・。」
チコリータはかなり驚いている。
「伝説は実在していたのか・・・。」
フーディンも同様に驚愕した。驚いていないのはバシャーモとラティオスぐらいだ。
「教えてくれ!伝説に出てくる人間は、一体誰なんだ!?
いや、伝説は本当の出来事なのか!?」
フーディンは疑問をぶつけた。
「何でも知っていると評判の割りに、何も知らないようですわね。」
フーディンを見てキュウコンが言った。
「まぁ、いいですわ。それが知りたくて、貴方達はここに来たのでしょう?」
キュウコンがまたこちらに向いて言う。
「・・・はい。」
リクヤは緊張してか小さな声で答える。
「私が、その伝説の通り、人間を祟ろうとしたのは事実よ。貴方達の言う伝説の通り、
パートナーであるサーナイトがそれを庇い、祟りを受け、その人間は見捨てて逃げ出した。」
キュウコンは自ら生み出した伝説を語る。
「やがてその人間はポケモンに転生し、今も生きているわ。ポケモンの姿で・・・。」
キュウコンが続けて言う。
「その人間は・・・、その人間は誰のことなんだ?」
フーディンが聞く。皆が知りたい疑問だ。
「ここにはポケモンに転生した人間が2人いますわ。」
キュウコンは話題を変えたかのように言う。
「1人は・・・、このラティオス。そしてもう1人は・・・、あなた。」
キュウコンがリクヤを見て言う。
「この2人ではありませんわ。」
キュウコンは結論をさらりと言った。
「い、今なんて・・・。」
チコリータが震えるような声で言う。
「この2人は伝説に出る人間ではない。それだけですわ。」
キュウコンが言う。
「ほ、本当・・・?」
チコリータがなおも言う。
「ええ。」
キュウコンは微笑んで言う。
「よ・・、よかったぁぁぁ〜〜!」
チコリータは涙を流し、リクヤに抱きついた。
「やっぱりそうだったんだ、信じたとおり、リクヤじゃなかったんだ〜!」
チコリータは感激している。
「どこで、そうなったかは知りませんけど・・・・。」
キュウコンがつけたして言う。
「ポケモンへの転生と世界のバランスが崩れる事は関係ありませんわ。」
キュウコンがまたさらりと言った。
「頻発する自然災害の原因はまた別にありますわ。」
キュウコンが結論を言う。
「やい!全然ちがったじゃないか!」
チコリータは今までの事に関して、抗議に入った。
「なぜ事実が書き換えられたのでしょうか・・・。」
ラティオスが呟いた。
「あ?」
バシャーモが言う。
「ポケモンへの転生が成立すると世界のバランスが崩れる事になるというのは
誰が言ったのでしょうか・・・。」
ラティオスが疑問を言った。
「そりゃ、お前。伝言ゲームみたいになったんだろ。どうせ。」
バシャーモが流すように言う。
「誰かが故意に真実を歪めたのですわ。」
キュウコンが言う。
「はぁ?」
バシャーモは意味が分からないと言いたげだ。
「どういう事ですか?」
ラティオスが尋ねた、その時、地面が大きく揺れた。
「うわぁ、地震!?」
チコリータが言う。
「地殻変動ね・・・。」
キュウコンが呟くように言う。
「今ので目覚めたかもしれないわ。」
続けてキュウコンが言う。
「何が・・・ですか?」
ラティオスが尋ねる。
「大地の化身、グラードンが・・・。」
キュウコンが言うと少し沈黙が流れた。
「まさか、グラードンが・・・。」
沈黙を破ったフーディンの声は驚きに満ちていた。
「なんなの、そのグラードンって。」
チコリータが聞く。
「大地を盛り上げ大陸を広げた伝説のポケモンよ。」
キュウコンが説明した。
「カイオーガとの戦いの末眠りについたとされているが、もし目覚めて暴れだしたら・・・。」
フーディンも説明し、また最悪の事態を想像した。
「止めなければ、大変な事になりますわ。」
キュウコンが言った。
「大変だ、止めに行かなきゃ!」
チコリータが言った。
「待て、ワシ達が行く。」
フーディンが言った。
「じゃあ私達も行く!」
チコリータが言う。
「お前達は先に戻れ。そして真実を伝えるんだ。広場の皆に。」
フーディンが優しく言った。
「分かったよ・・・。」
チコリータは少し残念そうに言った。
「じゃあ、行ってくる。」
フーディンはそう言うと下の階へと降りて行った。
ラティオス達は何故か快く見送る事ができなかった。
あとがき;リクヤとラティオスの容疑は晴れました。良かったね。
ラティオスはなぜ追われなかったはおいときましょう。長くて御免なさいです。
おまけ
バシャーモ「下の奴らいつまで戦ってるんだ?」
ラティオス「今フーディンさんが行ったからもう大丈夫だと思いますよ。」
バシャーモ「一体どんな戦いしてんだ?」
ラティオス「それは外伝で明らかになると思いますよ。」
バシャーモ「その外伝ってのはいつ分かるんだ?」
ラティオス「それは作者次第です。」
おまけのあとがき;そんなかんじ。たぶん本編終了後になると思うな・・・。
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