第1話
気がついたらそこは外ではなかった。部屋の中だった。初めて見る部屋のベットの上だ。
ここはいったいどこなんだ？何があったか思い出せない・・・。
「あ、お兄ちゃん！」
開きっぱなしのドアの向こうから声がした。その声の主は人間ではなかった。
「やっと気がついたのね。良かった〜。」
僕は驚いた。目の前にはなんと、伝説のポケモンラティアスがいたのだ。
しかも、人間である自分を心配してくれているなんて・・・。
「ボロボロになって倒れてて、しかもず〜っと寝てるんだもん。凄く心配したよ。」
親しくしてくれるのは嬉しいが、ここまで来ると調子が狂う。伝説のポケモンって
大抵人間嫌いってイメージだったから・・・。
「でも、良かった。ずっと帰って来ないから心配したんだよ・・・・」
心配・・・？ってここ来るの初めてなんだけど・・・。
「お兄ちゃん。」
・・・・・。へ？お兄ちゃん！？僕はいつラティアスの兄になったんだ！？
状況が読めない。まさかこのラティアスの兄って人間？まさか・・・。
「どうしたの？お兄ちゃん・・・。あ、喉が渇いたんでしょ。お茶入れてきてあげるね！」
そういってラティアスは部屋を出て行った。いったいどういうことなんだ？
部屋を見渡すと鏡を見つけた。僕はベットから出て、なんとなくその鏡をのぞいてみた。
・・・・・・！こ、これって・・・・。ラティオス！？
自分の身体を見渡した。これはどっからどう見てもラティオスだった。
そんな、なんで、いったい、いつ、ラティオスになってしまったんだ〜！
「お兄ちゃん、まだ寝てなきゃだめだよ！」
お茶を持ってきたラティアスは僕をベットに戻した。
「1日中寝てたから眠くないかもしれないけど・・・、安静にしなきゃ。」
そういいながらラティアスは僕にカップを手渡した。
「あ、ありがとう・・・。」
一応お礼をした。
「えっ・・・。」
ラティアスは少しビックリしている。本当の兄じゃない事がばれたのか？
そしたらヤバイんじゃなか？なんとなく・・・。
「お兄ちゃんが『ありがとう』って言うの久しぶりに聞いた。」
ラティアスは嬉しそうだ。 良かった。ばれてなかった・・・。
と言っても、これからずっと偽るわけにはいかない。やっぱりここは・・・。
「あの・・・・。」
「どうしたの？お兄ちゃん。」
ラティアスは僕の顔をみつめた。少しドキってなったが、ここで押されるわけにはいかない。
僕はラティアス本当のことを伝えた。正直に。
「・・・・そうなんだ。お兄ちゃんじゃなかったんだ・・・。」
「・・・すみません。」
空気が重くなった。これ以上彼女の世話になるわけにもいかない。
「じゃあ、僕はもうそろそろ行きます。」
「・・・えっ？」
「長くいるとご迷惑になるだけですから。これで・・・。」
そういって出て行こうとした時・・・・。
「まって！」
ラティアスの声がして思わず振り返った。
「も、もし良かったら、暫くここにいてもらえないでしょうか・・・。」
「えっ・・・。」
「なんだか、凄く、困ってるみたいですし・・・。他に行く所が無かったら・・・。」
「本当に・・・、良いんですか・・・？」
「はい・・・。」
ラティアスは顔を真っ赤にしてうなずいた。
「・・・・じゃあ、お言葉に甘えて・・・。」
「本当？」
「はい。」
彼女に笑顔が戻った。とても嬉しそうだ。
「宜しくお願いします。」
僕は改めて挨拶した。
「こちらこそ。ラティオスさん！」
名前を忘れてしまった僕は種族名で呼ばれる事になった。でもここではこれが普通らしい。
「凄く嬉しい！お兄ちゃんが帰ってきたみたいで！」
あとがき：「ポケモン不思議のダンジョン」風の小説にしたつもりです。
第1話は長い割りに展開が速くなってしまいました。いつ終わるか分かりませんが
（完結するかすら分かりませんが）暫くの間、この戯言にお付き合いください・・・。
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