このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
J−PARC公開見学
8/1、日本原子力開発機構、高エネルギー加速器研究機構、茨城県の共催で、東海村にある東海研究開発センター施設などの公開見学会が行われました。
公開されたのはいわゆる原研(原子力科学研究所)、J−PARC(大強度陽子加速器施設)で、これに核燃料サイクル工学研究所のアトムワールド(ここはいつでも見られる)の3箇所です。
前者の二つの設備は、原研内にあり、アトムワールドは245号線で数100m行った所にあります。公開時はこれらの3つの設備をバスが10分間隔位で連絡していました。 時間の都合もあり、アトムワールドは今回、見学しませんでした。
行って見ると、原研関係のグランドなどを駐車場としており、10時半位だったのですが、すでに、かなりの人が来ています。
原研の正門を入ると、受付があり立派なパンフレットなどをくれました。
今は名前が変わった 受付
パンフレット
原研内では小さな子供向けの遊び場、特殊車両(消防車、パトカー、シロバイなど)の展示、偏光ステンドグラスをつくろうとかロボットアームで遊ぼうとか、15種類ほどの実験教室なるものがあり、小中学生向きになっています。子供も大勢来ていました。
子供の遊び場 特殊なオートバイ(後ろのオバサンは関係者——誰の?)
実験教室(15ほどある) 毎回出てくるゆるきゃら
ここからバスに乗って、今回のメインイベントであるJ−PARCに向かいます。
バスは、原研内の通称「原子炉通り」を通り、その先のJ−PARCへと向かいます。見学者の通路は規制されており、其処以外は歩けませんが、広く開放されています。
今は無き国産原子炉一号機(建屋のみ)
ところで、J−PARCとは日本語でなんだい??と中にいたスタッフと言うのに二人ほど聞いてみたが、正解は無し。貰った資料の何処にも無し。
さすがエンジニアの世界!!!
正解は大強度陽子加速器施設J-PARC(Japan Proton Accelerator Research Complex)。
Complexとある様に、複数の加速器、複数の研究設備から成り立っていると言うことを今回始めて知りました。
J-PARC
加速器は3つの設備から成り立っています。
「リニアック」————— 直線型の加速器で地下のイオン源で陽子(プロトン)を発生させ、330mの直線状の加速器で、光速の50%位まで加速する。
「3GeVシンクロトロン」 「リニアック」で加速した陽子を3GeV(3000000000eV)まで加速するおむすび状の加速器。
ビームラインの長さが約500m。
ここを何回もまわして、光速の97%位まで加速する。
この陽子は、「物質生命科学実験設備」にも供給される。
「50GeVシンクロトロン」 最終段加速器で陽子は50GeVまで加速され、光速の99.98%に到達する。
ビームラインの長さが約1600m(直径550m)
ここから「ハドロン実験施設」に供給され、原子核の仕組みの解明などが行われ、「ニュートリーノ実験施設」に供給され、ニュートリーノを生成し、295km離れた岐阜県の「スーパーカミオカンデ」まで地中を一直線に飛ばして実験する(T2K)(東海to神岡)と言う実験が行われようとしています。
今回は、ここに書いた三つの加速器、三つの実験施設が公開されたのです。
全体の公開は今回が初めてです。
各設備には、大勢のスタッフ、中には外国人もいて、掛け図などで色々と説明してくれますが、まあ、素人には聞いても分からず「すごい設備」と言う印象です。
幸い、さほど暑くも無く、シャトルバスが10分位で運用されていて、大勢の見学者も問題なく見学できたようです。ともかく広いので、沢山人がいても全く問題ないと言うこともあります。
混んでいると言うので人とは逆に回ったので、正規にビームの流れに沿って回ったことにして、設備の概要を書いてみます。
「リニアック」
これはもう、小生が居た工場の建物と同じ様なもの。地上部分はクライストロンなどという高周波の加速器が並んでいて、330mの建物の中を一直線に歩きます。
どんどん歩く我が家の一族
クライストロン(高周波加速器) この中をビームが走る
3GeVシンクロトロン建屋 遠くに見える原研実験炉
3GeVシンクロトロン
建屋に入り、地下に降りてビームと同じ方向に一周します。
ビームの分岐点 ビームライン
ビームは、ここから引き出され、一つは物質生命科学実験施設へ、もう一つは50GeVシンクロトロンへ向かいます。
物質生命科学実験設備
50GeVシンクロトロンの地下リングの地上部の中央付近にあります。
ジャンボジェットが2台はいると言う大きな建屋で、3GeVシンクロトロンから来た陽子をターゲットに当て、二つの実験室に分岐したラインから、中性子やミュオンという粒子を出し、これを使って様々な実験が出来るようになっています。
現在、中性子を使う実験装置が12台、ミュオンを使う実験装置が2台あり、さらに増設が可能となっています。
茨城県も、独自の実験装置を持っており、これを使った実験も行われています。
物質生命科学実験施設(矢印の方からの陽子で中性子を作り、各実験設備に分配する)
実験室(その1) 実験室(その2)
茨城県の実験設備 設備内の回析計
ここでビデオなどを見て一休み。
ここから先は、50GeVシンクロトロン関係の実験施設ですが、見学通路の関係上、ビームラインに入る前に、最終段のハドロン実験施設を見学です。
ハドロン実験施設
ここは、最強に加速された陽子を取り込み、原子核の微細構造を研究する設備です。
ハドロンとは何?さっぱり分からないが次のようなものだそうです。
原子は、電子と原子核から出来ている。原子核は、陽子と中性子から出来ている。
陽子や中性子は、異なる3個のクオークから出来ている。これをバリオンという。2個のクオークから出来ているものを、中間子と言う。
バリオンと中間子を総称してハドロンと言う。クオークは物質の最小単位(ほかにもレプトンがある)クオークとレプトンは6種類ずつあるという。
これらの物質の成り立ちを研究して宇宙の歴史を遡るという我々にとっては夢みたいな話です。
60m×58mと言う大きな建物で、写真手前の緑色の部分にターゲットをおいて陽子を当てて必要な粒子を取り出し、幾つかのラインに分岐して、それぞれの研究を行うようです。
放射能を防ぐ為のコンクリートブロックと60mスパンの20トン×2基のクレーンが目に付きました。
ハドロン実験棟内部(手前中央がターゲット)
50GeVシンクロトロン
ここから少し戻り、地下に入るとビームラインです。直径550mのラインの約1/3を歩きます。こちらは、高エネルギーの粒子を扱う為、超伝導磁石が使われています。
ビームラインは、途中から分岐し、ビームラインをまたいで渡り、295kmはなれたスーパーカミオカンデにニュートリーノを飛ばすラインに沿って進みます。
(ハドロン実験施設への分岐点は通りません)
ビームライン(歩いてきた後方) 本ラインを渡ってT2Kラインへ
T2Kライン側へ 終端部
T2K実験施設の所から地上に出て、ニュートリーノ冷却機室に行き、使っているニオブーチタンの超伝導コイルなどの説明を聞きました。
ニュートリーノ冷却設備(沢山のヘリウムタンク) 超伝導コイル
ニュートリーノは、途中の物質の存在をものともせずターゲットに一直線に飛んでいくと言います。SFの世界なら、これを武器として、海の向こうで威張っているゴールドメタルにぶち当てて何とかすると言う兵器にもなるでしょう。
それにしては、日本は平和ですな!!
てな事を考えたりして、見学を終りました。時間は3時間以上かかり、原研をでて昼飯を食ったのが3時半近くです。
でも、現実の世界では、ニュートリーノやニュートロンよりクリントンの方が効果があるようですね。
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