このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
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福井豪雨で破壊的被害 廃線懸念の越美北線
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濁流に流されたJR越美北線の第1足羽川橋梁=19日午後、福井市安波賀町で |
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福井豪雨で5鉄橋が流失するなど壊滅的な被害を受けたJR越美北線−−。奥越方面から福井市内への通勤や通学、子どもやお年寄りの重要な生活路線だが、利用者が1日千人に満たない赤字ローカル線だ。同線の被害について、JR西日本は「新しく造り直すのと同様の状況」とし、復旧費の負担を県などと協議したい意向を示す。一方、県や沿線自治体は同社による早期復旧を求める構えだ。協議の行方次第では廃線も懸念されるが、利用者は存続を強く求めている。 (上沢博之)
JR越美北線は福井市、美山町、大野市、和泉村を結び、全長は越前花堂(福井市)−九頭竜湖(和泉村)間の約52.5キロ。60年に越前花堂−勝原間(工費18億円)、72年に勝原−九頭竜湖間(同31億円)で開通した。
福井豪雨で一乗谷−美山間(9.2キロ)の5鉄橋が流失し、路盤や道床の流出が19カ所、のり面や盛り土の崩壊などが5カ所などの被害が出た。
足羽川にかかる7鉄橋のうち最も福井駅寄りの「第1足羽川橋梁(きょうりょう)」(全長122メートル)。福井豪雨でちぎられた線路は、ほぼ半分が橋脚から落ち、残った橋脚の先端から下をのぞくと、ジェットコースターのレールのようだ。第3橋梁は橋脚が横倒しになり、線路が滑り台のように傾斜している。第7橋梁は踏切のすぐ先で完全に途切れていた。
美山町の上新橋から東のトンネル前では線路がねじれ、開いた扇の骨組みのように立っている場所がある。線路の一部は足羽川の堤防内に垂れ下がっていた。被害を調査していたJRの下請け会社員は「どこから手をつけていいか分からない」と表情を曇らせた。
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橋脚が倒れたJR越美北線の第3橋梁
=19日午後、美山町で、本社ヘリから |
現在は、福井−越前大野(大野市)間(34キロ)で代行バスを、越前大野−九頭竜湖(和泉村)間(21.1キロ)で従来通り気動車を運行している。JR西日本金沢支社の宇都宮道夫支社長は23日の会見で、県知事から運転再開を要望された福井−一乗谷間について「再開に必要な信号機などの設置を検討する」と表明した。だが再開の時期などははっきりしていない。
記者が22日午後、越前大野発九頭竜湖行きの気動車に乗ると、乗客は中学生、高校生、お年寄り、鉄道愛好家で10人に満たなかった。
同社金沢支社によると、同線の1日の乗客数は88年の1630人をピークに減少し、昨年は1日千人未満になっている。しかし越美北線を利用して福井、大野両市内の高校への通学に利用する生徒だけで約250人おり、乗用車を使えない交通弱者や、奥越などの豪雪地帯の人たちにとって重要な足だ。
特に和泉村は、春夏秋の早朝に村が運行するバス1便のほかは、同線が唯一の公共交通機関だけに「村民や観光客の唯一の足。廃線なら村に住めなくなるほどの問題だ」との立場だ。登下校に使う村の女子高校生(16)は「路面が凍結して大雪が降る冬に通学手段がなくなる。絶対残してほしい」、村のお年寄り(70)も「線路がないと美容院や病院にも行けず、本当に困る」と言う。
大野市は、定期券や回数券、団体の利用者に助成したり、市内の観光名所の割引券を配布するなど、利用振興策をとっている。市は越前大野駅の外装を新しくするため昨年4月、木造瓦ぶきの回廊を整備したばかりだ。同市の会社員男性(56)は「福井市への通勤にどうしても必要。バスは到着時間が遅れ、冬動けない時もある」と話した。
美山町の男性も「乗客が減っていたのも事実。代行バスの運行が長引けば、ますます乗客が減り、廃線になってしまう」と心配する。
JR西日本の垣内剛社長も廃線の可能性を否定してはいない。自治体関係者などからは廃線後の対応として、第三セクター化などによって存続させる案もささやかれている。
和泉村、大野市、美山町の3市町村長は「JRによる早期復旧を求める」とし、26日にも同支社に要請する方針だ。大野市の天谷光治市長は「越美北線は県都・福井市と奥越地方を結ぶ日常の足であり、産業や観光などの経済活動の大動脈として欠かせない。早期に全線復旧してもらえるよう沿線4市町村でJR西日本に強く要望したい」とコメントしている。
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