このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


FAQ(よくある質問)コーナー

艦船に関して、よくあるご質問にお答えします。


Q.1
第1次大戦中の1917年、バルト海でロシアの旧式戦艦「スラヴァ」 (日露戦争で全滅したボロディノ級唯一の生き残り) が、座礁、全損となっているのですが、その場所としてムーン・サウンドなる、ちょっとロマンチックな名が記されています。リガ湾界隈のようなのですが、具体的な場所をご存知ありませんか?(新見 志郎氏)
A.1
Moon Soundは英語表記のようで、ドイツ名はMoon Sundモーン・ズントです。Moonは島名(ドイツ語の月はMond)、SoundとSundはともに海峡、瀬戸の意です。ご賢察の通り、リガ湾北方に連なる、エストニア本土とモーン島に挟まれた海峡名です。
ついでながら、モーン島の隣の2島は当時はDagoeダゲー、Oeselエーゼルとドイツ名になっていましたが、息子の地図帳で見ると現在はそれぞれヒューマー、サーレマー(エストニア名?)となっており、モーン島自体も別名になっていると思われます。
以上、フォン・マンタイ著「大戦中に於ける独逸主力部隊の行動」 海軍省教育局 S11 より


Q.2
機関、特に蒸気タービンについてちょっと。
機関にとって馬力(速力)と燃費(航続力)は相反する能力だと思っているのですが、この認識って正しいんでしょうか?
高温・高圧蒸気を生み出せる缶は、速力と航続力を両方とも増大させることができるらしいので、ちょっと迷っています。(じゃむ猫氏)
A.2
この場合は機関単体と船全体と分けて考える必要があるでしょう。
話を簡単にするために非常に大雑把に言いますね。
蒸気機関の出力当り蒸気消費量(水消費率)、および出力当り燃料消費量(燃料消費率)は蒸気の使用圧力の増大に伴って低減します。
また、蒸気を飽和蒸気でなく過熱蒸気にすると初期凝結(機関に進入した蒸気の一部が水に戻ってしまうため蒸気の膨張による有効仕事をしなくなる)が無くなりますので、数%の入熱(燃料)の追加で25%前後の蒸気消費率の低減が図れます。
つまり、蒸気を高温・高圧にすることによって同一仕事量当りの燃料消費量が低減します。「高温・高圧蒸気を発生する缶は、速力と航続力を両方とも増大できる」という概念は、上記がベースになっています。
次に、蒸気機関はその負荷によって水消費率、従って燃料消費率が変化します。横軸を負荷、縦軸を燃料消費率としたグラフで言うと、おおむね「し」の字になります。一番低い辺りが熱効率(燃費)の最も良い領域(オプティマム・レンジ)で、細部の仕様によって異なりますが、おおむね7/10負荷の前後に当ります。従って、「機関にとって馬力と燃費は相反する」とは必ずしも言えないでしょう。なお、蒸気タービンはレシプロエンジンに比べてオプティマム・レンジが狭く、特に低速域で効率が低下しますので、本質的に機関車用に向かないのはこのためです。主タービン以外に小型高速の巡航タービンを備えるのも、この点を補うためです。
いっぽう、船の推進抵抗は速力の3乗に比例して増大するとされていますので、燃料搭載量を一定としたときは、速力の増大に伴って航続距離は急激に短縮します。従って、「機関にとって馬力(速力)と燃費(航続力)は相反する能力」と言うよりは、「船(を含む移動機械全般)にとって速力と航続距離は二律背反の関係」と思っていただいたほうが宜しいかと思います。


Q.3
舶用の蒸気機関では、急激な運転停止に対して蒸気の排出が行われますが、ターボ・エレクトリック機関では、他にエネルギーを廃棄する手段がありますか?(新見 志郎氏)
A.3
詳しくは存じません。レシプロでも、直結またはギヤード・タービンでも、ターボ・エレクトリックでも、動力伝達方式が違うだけで、出力発揮するか停止するかは同じのような気がしますが・・・・・・・。


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