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独逸軍艦 機関部データ集

第3章 主機(タービン機関)



戦艦 カイザーSMS Kaiser。ドイツ戦艦で初めてタービン主機を搭載。


3-2. 基本仕様


3-2-1. 戦艦

NameQdTyPNeNsTmShaftsReRs
PCS
Kaiser,
Friedrich der Grosse,
Kaiserin,
Koenig Albert
9,333IPHL33DTHHH270
L+AL+AL+A
Prinzregent Luidpold13,000IPHL22DTHHH
L+AL+AL+A
Koenig,
Grosser Kurfuerst,
Markgraf,
Kronprinz Wilhelm
10,333IPHL33DTHHH260
L+AL+AL+A
Bayern,
Baden
11,667BCHL33DTHHH260
L+AL+AL+A
Scharnhorst41,666IPHIL33AGTI+AHL+ALI+AHL+ALI+AHL+ALC:
12,000
H: 5,100
I: 3,150
L: 3,160
265
RGRGRG
HCHCHC
GneisenauCIH+AHL+ALIH+AHL+ALIH+AHL+ALIH: 6,700
I: 3,200
L: 2,700
RGRGRG
Bismarck46,000IPHIL33AGTI+AHL+ALI+AHL+ALL+ALI+AHH: 2,825
I: 2,825
L: 2,390
265
RGRGRG
HHH
TirpitzI+AHL+ALI+AHL+ALL+ALI+AHC: 4,130
H: 2,825
I: 2,825
L: 2,390
RGRGRG
HCHCHC

Name: 艦名、斜体はWW1後の建造、()は未成を示す
Qd: 1軸計画出力 [shp]
Ty: タービン型式、P: パーソンズ式、IP: 改良パーソンズ式、BC: ブラウン・カーチス式、CI: 組合せ衝動式
P: 圧力方式、M: 全圧、HL: 高低圧を示す
Ne: 主機数
Ns: 推進軸数
Tm: 伝達方式、DT: 直結式、AGT: 全歯車減速式(オール・ギヤード)
Shafts: 推進軸、P: 左舷軸、C: 中央軸、S: 右舷軸、ケーシング一体は( )+( )、別ケーシング・並列は2列併記、別ケーシング・タンデムは2段併記(上段艦首寄り・下段艦尾寄り)、Mは主(全圧)タービン、Cは巡航タービン、CHは巡航高圧タービン、CIは巡航中圧タービン、Hは高圧タービン、Lは低圧タービン、Aは後進(全圧)タービン、AHは後進高圧タービン、ALは後進低圧タービン、RGは減速歯車装置(オール・ギヤード)を示す
Re: タービン軸回転数 [rpm]
Rs: 推進軸回転数 [rms]

<解説>
周知のように、カイザー級からバイエルン級までが直結タービン(プリンツレーゲント・ルイトポルトのみ中央軸ディーゼル機関)、シャルンホルスト級以降がオール・ギヤード・タービンです。

主機初圧は、ケーニヒ級では主缶使用圧16atuから10%落ちの14.4atu(前進時)としていました。なお、後進時は10.8atuでした。カイザー級も同様と考えられます。
ちなみにカイザー級の主機は、
 カイザー(カイザー造船所、キール): パーソンズ式
 カイゼリン(ホーヴァルト造船所、キール): パーソンズ式
 フリードリヒ・デア・グローセ(ヴルカーン造船所、ハンブルク): AEGカーチス式
 ケーニヒ・アルベルト(シッヒャウ造船所、ダンツィヒ): シッヒャウ式
 プリンツレーゲント・ルイトポルト(ゲルマニア造船所、キール): パーソンズ式
となっていますが、実態は全て改良パーソンズ式であったとも言われています。
ケーニヒ級も同様に、
 ケーニヒ(カイザー造船所、ヴィルヘルムスハーフェン): パーソンズ式
 グローサー・クルフュルスト(ヴルカーン造船所、ハンブルク): AEGヴルカーン式
 マルクグラ−フ(ヴェーザー造船所、ブレーメン): ベルクマン式
 クロンプリンツ・ヴィルヘルム(ゲルマニア造船所、キール): パーソンズ式
となっていますが、グローサー・クルフュルスト用とマルクグラ−フ用とされる高圧タービンは、いずれも組立図から初段にカーチス車を有する反動式であることより、改良パーソンズ式と考えられます。

カイザー級からバイエルン級までの各艦の主機は、いずれも高低圧タービンを同軸とした串型複式tandem compoundです。これは、ドイツ戦艦が3軸艦であり、4軸艦のように2軸並列複式cross compoundとしにくいため、1軸完結の串型を採用したものと考えられます。

シャルンホルストグナイゼナウの主機は、前者がブラウン・ボヴェリー製、後者がデシマーク製でしたが、ブラウン・ボヴェリー社はパーソンズ式のライセンシーであったことより、シャルンホルストでは、高圧タービンは初段カーチス車+反動段落の改良パーソンズ式、中圧タービンはパーソンズ式、低圧タービンはダブルフローのパーソンズ式としていました。また、後進高圧タービンは前進中圧タービンと一体ケーシング、後進低圧タービンは前進低圧タービンと一体ケーシングで、ダブルフローの中央に配していました。
グナイゼナウでは、高圧タービンは初段カーチス車+ラトー段落3段の組合せ衝動(コンバインド・インパルス)式、中圧タービンはラトー段落1段+反動段落17段の混式(コンビネーション)タービン、低圧タービンはラトー段落5段+ダブルフロー反動段落各2段の混式タービンとしていました。中・低圧シリンダーにも衝動のラトー式を採用した理由は、良く判りません。

ビスマルクティルピッツの主機は、前者がブローム・ウント・フォス製、後者がブラウン・ボヴェリー製でしたが、両社はともにパーソンズ式のライセンシーであったことより、ビスマルクでは、高圧タービンは初段カーチス車+反動段落の改良パーソンズ式、中圧タービンは反動段落9段のパーソンズ式、低圧タービンはダブルフロー反動段落各14段のパーソンズ式としていました。また、後進高圧タービンは前進中圧タービンと一体ケーシングでカーチス車のみ、後進低圧タービンは前進低圧タービンと一体ケーシングとしていました。
ティルピッツでは、同一メーカー製のシャルンホルストとほぼ同一構成としていました。


3-2-2. 巡洋戦艦/重巡洋艦

NameQdTyPNeNsTmShaftsReRs
PWPICSISW
Von der Tann10,500PHL24DTH+AHCI-CHH+AH280
L+ALL+AL
Moltke,
Goeben
13,000PHL24DTHL-LH260
Seydlitz16,750PHL24DTHL-LH
Derfflinger,
Luetzow
15,750PHL24DTHL-LH
Hindenburg18,000PHL24DTHL-LH
(Mackensen)22,500PHL44DTHH-HH295
LLLL
(Elsatz Yorck)22,500PHL44DTFHH-HH295
LLLL
Bluecher,
Admiral Hipper
44,000IPHIL33AGTI
AL
-I
AL
-I
AL
H: 3,840
I: 3,840
L: 2,820
320
RGRGRG
AH
L
H+CAH
L
H+CAH
L
H+C
Prinz EugenL+AL-L+AL-L+AL
RGRGRG
I+AIHI+AIHI+AIH

Name: 艦名、斜体はWW1後の建造、()は未成を示す
Qd: 1軸計画出力 [shp]
Ty: タービン型式、P: パーソンズ式、IP: 改良パーソンズ式
P: 圧力方式、HL: 高低圧、HIL: 高中低圧
Ne: 主機数、Ne=2, Ns=4は高低圧2基4軸(2軸併結)の並列cross compoundを示す
Ns: 推進軸数
Tm: 伝達方式、DT: 直結式、DTF: フェッティンガー式流体変速機付き直結式、AGT: 全歯車減速式(オール・ギヤード)
Shafts: 推進軸、PW: 左舷翼軸、PI: 左舷内側軸、C: 中央軸、SI: 右舷内側軸、SW: 右舷翼軸、ケーシング一体は( )+( )、別ケーシング・並列は2列併記、別ケーシング・タンデムは2段併記(上段艦首寄り・下段艦尾寄り)、Mは主(全圧)タービン、Cは巡航タービン、CHは巡航高圧タービン、CIは巡航中圧タービン、Hは高圧タービン、Iは中圧タービン、Lは低圧タービン、Aは後進(全圧)タービン、AHは後進高圧タービン、ALは後進低圧タービン、RGは減速歯車装置(オール・ギヤード)を示す
Re: タービン軸回転数 [rpm]
Rs: 推進軸回転数 [rms]

<解説>
こちらも周知のように、フォン・デア・タンから未成に終ったヨルク代艦級までが直結タービン(一部にフェッティンガー式流体変速機付き)、ブリュッヒャー級がオール・ギヤード・タービンです。

フォン・デア・タンからヨルク代艦級までの巡洋戦艦は、いずれも高低圧2基4軸の2軸併結式タービンで、串型の戦艦と好対照をなしていますが、未成に終った次のマッケンゼン級とヨルク代艦級には、1軸当りの出力が増大したことも有って、戦艦と同様の串型の海軍式タービン4基4軸の搭載が計画されていました。

なお、ザイドリッツからヨルク代艦級までは海軍式タービン搭載としている資料も有ることより、海軍式は実質的には初段にカーチス車を設けた衝動・反動混成の改良パーソンズ式であったと考えられます。

ブリュッヒャー級のタービンは、ブリュッヒャーがデシマーク製、アドミラル・ヒッパーがブローム・ウント・フォス製、プリンツ・オイゲンがブラウン・ボヴェリー製で、それぞれ上記の戦艦用と類似の構成を採っていたものと考えられます。


3-2-3. 小型巡洋艦/軽巡洋艦

NameQdTyPNeNsTmShaftsReRs
PWPICSISW
Luebeck2,875PHL24DTHL-LH670
Stettin3,375PHL24DTHL-LH
Dresden3,750PHL24DTHL-LH540
Kolberg4,750MPHL24DTHL-LH515
Mainz10,100ACM22M---M306
Coeln4,750GHL24HL-LH
Augsburg4,750PHL24HL-LH540
Magdeburg8,333BM33DTM-M-M
Breslau6,250AVHL24HL-LH
Strassburg12,500MH
L
22H
L
---H
L
Stralsund8,333BM33M-M-M
Karlsruhe,
Rostock
13,000MH
L
22DTH
L
---H
L
Graudentz,
Regensburg
13,000MH
L
22DTH
L
---H
L
410
Pillau,
Elbing
15,000MPH
L
22DTH
L
---H
L
Wiesbaden15,500MH
L
22DTFH
L
---H
L
FrankfurtDT
Brummer,
Bremse
16,500MH
L
22DTH
L
---H
L
Koenigsberg,
Emden,
Nurnberg
15,500MH
L
22DTH
L
---H
L
Karlsruhe15,500MH
L
22PGTH(RG)
L
---H(RG)
L
Coeln,
Dresden
15,500MH
L
22DTH
L
---H
L
Emden23,250IP
P
HL22AGT---
Koenigsberg,
Karlsruhe,
Koeln
32,500MHL22AGTH
L
---H
L
360
CC
Leipzig,
Nuernberg
30,000MHL22AGTH
L
---H
L
400

Name: 艦名、斜体はWW1後の建造、()は未成を示す
Qd: 1軸計画出力 [shp]
Ty: タービン型式、P: パーソンズ式、IP: 改良パーソンズ式、AC: AEGカーチス式、B: ベルクマン式、MP: メルムス・プェニンガー式、G: ゲルマニア式、AV: AEGヴルカーン式、M: 海軍式
P: 圧力方式、HL: 高低圧、HIL: 高中低圧
Ne: 主機数、Ne=2, Ns=4は高低圧2基4軸(2軸併結)の並列cross compoundを示す
Ns: 推進軸数
Tm: 伝達方式、DT: 直結式、DTF: フェッティンガー式流体変速機付き直結式、PGT: 巡航タービンのみ部分歯車減速式(パーシャル・ギヤード)、AGT: 全歯車減速式(オール・ギヤード)
Shafts: 推進軸、PW: 左舷翼軸、PI: 左舷内側軸、SI: 右舷内側軸、SW: 右舷翼軸、ケーシング一体は( )+( )、別ケーシング・並列は2列併記、別ケーシング・タンデムは2段併記(上段艦首寄り・下段艦尾寄り)、Mは主(全圧)タービン、Cは巡航タービン、Hは高圧タービン、Lは低圧タービン、Aは後進タービン、RGは減速歯車装置(オール・ギヤード)を示す
Re: タービン軸回転数 [rpm]
Rs: 推進軸回転数 [rms]

<解説>
ブレーメン級、ケーニヒスベルク級、ドレスデン級では各1隻にタービン機関を試用し、次のコルベルク級からは全艦にタービン機関(一部の巡航用にディーゼル機関)が採用されています。

コルベルグ級は、前級のドレスデンより常備排水量を約700トン、機関出力を4,000〜5,000shp、最大速力を1.5〜2.0ノット増大し、かつ全艦とも主機をタービン機関としたもので、ドイツ軽巡洋艦の発達史上、重要な位置を占めるものです。
ちなみに本級の主機は、
 コルベルグ(シーヒャウ造船所、ダンツィヒ): メルムス・プェニンガー式
 マインツ(フルカン造船所、シュテッティン): AEGカーチス式
 ケルン(ゲルマニア造船所、キール): ゲルマニア式
 アウグスブルク(カイザー造船所、キール): パーソンズ式
となっていますが、これは各建造所が保有するライセンスの関係でしょう。
ゲルマニア式は同社がライセンスを有するツェリー(衝動)系と推定されます。
メルムス・プェニンガー式はスイス人技師プェニンガーの考案になるもので、高圧段落は部分給気partial admissionを可能として段落の数を減じ、低圧段落はパーソンズ式と酷似したものです。製造所はミュンヒェンのメルムス・プェニンガー社です。

マグデブルク級は、前級のコルベルグより常備排水量を約200トン、機関出力を6,000shp、最大速力を1.5ノット増大したもので、主機は、
 マグデブルク(ヴェーザー造船所、ブレーメン): ベルクマン式
 ブレスラウ(フルカン造船所、シュテッティン): AEGヴルカーン式
 シュトラスブルク(カイザー造船所、ヴィルヘルムスハーフェン): 海軍式
 シュトラールズント(ヴェーザー造船所、ブレーメン): ベルクマン式
となっていました。
ベルクマン式は3基3軸で1軸1胴構成(艦首寄りから高圧衝動段落、低圧反動段落、後進)、高圧衝動段落は同社がライセンスを有するラトー式でした。
AEGヴルカーン式は2軸併結であることよりパーソンズ系と、また海軍式は2基2軸で1軸当り10,000shpを超えていることより、高低圧タービンをタンデムとした串型のパーソンズ式(初段のみカーチス車)と、それぞれ推定されます。

ブルンマー級は、第1次大戦開戦に伴って契約破棄となったロシア巡洋戦艦ナヴァリンの主機を流用したもので、建造所は2艦ともフルカン造船所(シュテッティン)です。主機は左右同型と仮定すれば、同時代の各国巡洋戦艦のような2軸併結(パーソンズ式またはブラウン・カーチス式)でなく、串型の海軍式の可能性が高いと考えられます。


3-2-4. 駆逐艦

NameQdTyPNeNsTmShaftsReReRs
PCS
S1252,200PHL13DT
G1373,600PHL13DT
V1617,400AM22DTM-M
V162-1647,550AM22DTM-M
S165-1688,750SM22DTM-M
G169-1725,000PHL13DT
G1737,500ZM22DTM-M
G174-1757,500PM22DTM-M
S176-1798,800SM22DTM-M
V180-1919,000AVM22DTM-M
G192-1979,100GM22DTM-M
V1-58,500VM22DTM-M
G7-128,000GM22DTM-M
S13-247,850SM22DTM-M
V25-3011,750VM22DTM-M
S31-3612,000SM22DTM-M
G37-4012,000GM22DTM-M
G41-41,
G85-95
12,000GM22DTM-M
V43-45,
V47-48
12,000VM22DTM-M
V46DTF
V67-82,
V125-130
11,750VM22DTM-M
V83-84DTF
S49-52,
S53-66,
S131-139
12,000SM22DTM-M
G96,
S145-147
12,000GM22DTM-M
B97-98,
B109-112
20,000MM22DTM-M
V99-10020,000VM22DTM-M
G101-10414,000GM22DTM-M
B109-11220,000MM22DTM-M
S113-11522,500SM22DTM-M620
V116-11822,500VM22DTM-M570
Moewe11,500IPHL22AGT-
GriefV
WolfIP
T1-4, T5-8,
T9-10, T1-12
14,000WHL22AGT-
T13-2114,500WHL22AGT-
T22-3629,000WHL12AGT-
Z1-4331,500WHL22AGT-427

Name: 艦名、斜体はWW1後の建造、()は未成を示す
Qd: 1軸計画出力 [shp]
Ty: タービン型式、P; パーソンズ式、IP: 改良パーソンズ式、A: AEG式、S: シッヒャウ式、Z: ツェリー式、AV: AEGヴルカーン式、G: ゲルマニア式、M: 海軍式、W: ヴァーグナー式
P: 圧力方式、M: 全圧、HL: 高低圧
Ne: 主機数、Ne=1, Ns=3は高低圧1基3軸(3軸併結)の並列cross compoundを示す
Ns: 推進軸数
Tm: 伝達方式、DT: 直結式、DTF: フェッティンガー式流体変速機付き直結式、PGT: 巡航タービンのみ部分歯車減速式(パーシャル・ギヤード)、AGT: 全歯車減速式(オール・ギヤード)
Shafts: 推進軸、P: 左舷軸、C: 中央軸、S: 右舷軸、ケーシング一体は( )+( )、別ケーシング・並列は2列併記、別ケーシング・タンデムは2段併記(上段艦首寄り・下段艦尾寄り)、Mは主(全圧)タービン、Cは巡航タービン、Hは高圧タービン、Lは低圧タービン、Aは後進タービン、RGは減速歯車装置(オール・ギヤード)を示す
Re: タービン軸回転数 [rpm]
Rs: 推進軸回転数 [rms]

<解説>
表中、V118までが直結タービン(一部にフェッティンガー式流体継手を採用)、メーヴェ級以降がオール・ギヤード・タービンです。
1937年より起工のT1-4級からはヴァーグナー式高温高圧缶の搭載に伴い、タービンもヴァーグナー式を採用しています。


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