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「セントラルライナー」(「CL」)への提言

「CL」はあらゆる面から見て画期的列車であるといえる。また、在来線から増収を狙おうとするJR東海の 戦略は評価できる。しかし、中央線名古屋口全体への影響を与えた、この列車の無理な設定は利用者に は全般的に不評である。「CL」は想定段階で需要予測が困難だったであろうが、310円の乗車整理券 料金における需要の価格弾力性を甘く見ていたことや、中央西線名古屋口(特に岐阜見東濃地方)の利用 者動向を十分に把握していないなど、JR側の暴走が目立つ。言い換えれば、JR側が儲ける方法を誤ったの ではないか。もう少し上手な金儲けの方法はあったはずである。目先のわずかな利益獲得のために失った ものがあまりに多すぎる。

この列車についての改善策に「CL」自体の廃止を唱える人もいるが、それは少々短絡的である。JR 東海が「CL」専用車両を造ったということは、相当な意気込みであったはずである。また、運賃の50%〜 同額程度に匹敵する、かなり割高な乗車整理券を買ってまでも千種〜高蔵寺・多治見間を利用するという 利用形態もあり、「座席定員制快速」としてのコンセプトはある程度評価されているはずである。 「CL」を「中津川快速」から独立した列車とすることで更なる需要開拓もできるのではないか。そうすれ ば、やり方次第で「CL」は大化けする可能性もある。

残念ながら、現在の「CL」は発展途上である。東海道新幹線を抱え、日本鉄道界のリーディングカ ンパニーであり、東海道新幹線での施策やJRセントラルタワーズに代表される、JR東海の経営手腕は相当 なものである。「CL」のような、在来線からの増収策の展開は新しい傾向であり、きっと、その「CL」に も増収を目指す改善策を講ずる時が来るはずである。

私は問題点続出で発展途上である「CL」を安易に廃止するのではなく、こうなったからこそ、むしろ存 続させるべきだと思う。存続させるためは多方面における改善が必須条件である。私はJR東海が今後 「CL」をどのように改善するか注目している。JR東海が「CL」をこのまま発展途上列車のままで放置する はずが無いと信じているからだ。

そこでこの特集のラストを飾る「CL」への提言では、「CL」の存続を前提にしたうえで、利用者にとって は魅力ある列車、JRにとっては胸を張って自慢できる列車となり、利用者・事業者双方が利益を受けられ るようになるための処方箋という意味で述べたい。

1.「中津川快速」の振り替えはやめ、独立した列車にすること!
「CL」の重大な問題点は、データイムに既存の「中津川快速」の一部を振り替えたうえで 有料化したことであ る。「CL」登場によって、データイムに名古屋市内〜岐阜県東濃地方の利用において、乗車券のみで乗車 できる列車本数が33%〜50%の大幅減少となったことや、代償である「CL」回避の為の救済列車が救済 の役割を果たしていないことが、「実質値上げ」の批判の原因となったのではないか。

そこで、「CL」は「中津川快速」の振り分けをやめ、「中津川快速」を1時間2本 運転に復活させ、「CL」 は「中津川快速」に加えたうえでの独立した列車として運転してほしい。一方、「中津川快速」の 停車駅は現状通りでよいと思われる。現在、「中津川快速」は「CL」回避客への配慮なのか、データイムでも6 両編成であるが、「CL」の改善で「CL」に乗客が流れる可能性があり、3両(又は4両)編成に縮小して もよいだろう。しかし、この改善には根本的なダイヤ改正を必要とするだろう。

2.多治見〜中津川でも快速運転でスピードアップ!
「CL」は名古屋〜多治見では従来の快速より6分短縮できたが、多治見〜中津川では 「中津川快速」の振 り替えの為、各駅停車であり所要時間は極僅かしか短縮していない。「中津川快速」の振り替えを やめるこ とで、多治見〜中津川間では、停車駅を多治見・土岐市・瑞浪・恵那・中津川に限定 し、利用者数の少ない 釜戸・武並・美乃坂本は通過することによって、名古屋〜中津川間を現行の最速62分から57分程度に短 縮できるはずである。

現在、名古屋〜中津川間の最速所要時間は、特急「しなの」が約48分、「中津川快速」が69分であり、改 善された場合、「CL」の所要時間はこの中間に位置する。つまり、単純ではあるが、時間 的に「CL」は快速列車の一種でありながら、「急行列車」のサービスを提供できる水準に達するのである。

国鉄末期まで、中央西線には「赤倉」「きそ」といった急行列車が運転されていた。「CL」は改善される こと で「急行列車の部分的復活」となるのではないか。本来、急行料金なら名古屋〜瑞浪:510円、名古屋 〜中 津川:730円のところ、「CL」乗車整理券なら名古屋〜瑞浪・中津川共に310円で利用できるのだから、 少
しは「CL」の評価も改善されるのではないか。
事実、恵那・中津川では「CL」が現在の内容でもそこそこの評価を受けている。改善によって、たとえ 「中津 川快速」が1時間当り2本に戻ったとしても「CL」の高速化(=差別化)によって乗客の多くが「中津 川快速」に流れるとは考えられない。

3.週末・祝日・行楽シーズンは南木曽まで延長。
「CL」終着点である中津川の先には、「馬籠・妻籠」という中央西線沿線では最大の観光 資源がある。このアクセスとして「CL」が活用できないだろうか。週末・祝日を中心に「CL」は通常の 3両1編成に加え、もう1編成が増結され6両編成となる。このうち、中津川方3両を中津川で分割し、「妻籠」 最寄りの南木曽まで延長させるものである。「CL」の中津川〜南木曽間における停車駅は坂下・南木曽でよいだろう。

しかし、これには問題がある。それは「CL」車両の絶対的不足である。 「CL」専用車両(313系8000番台)は、2000年7月現在、3両1編成がわ ずか4編成(合計12両)しかない。「CL」が1時間ヘッドの設定で、かつ 名古屋〜中津川の往復に3時間弱を要する為、運用上3編成必要で あり平日ではなんとか賄っている(1編成は予備)状態ではあるが、土 日・祭日では6両1編成(=3両を2編成併結)で運転され、「CL」車両 はフル回転のため、1編成分の車両が足らなくなる。そのため、「CL」 登場時から383系列車(「しなの」用車両)や373系列車(「伊那路」「ム ーンライトながら」用車両)が応援で活躍している。そのため、中津川 〜南木曽延長は名古屋からの往復時間を更に1時間程度延長させる 為、車両の追加新造が必要になる。

*【補足】
2001年3月ダイヤ改正で、「CL」車両の新造が決定した。(詳細は こちら )それにより、 「CL」の車両は313系8000番台に統一される可能性が高く、特急車両の応援はこのダイヤ改正以後無くなるのではない かと見られています。


「CL」の狙いの一つに特急「しなの」との遠近分離が挙げられる。「中津川快速」は停車駅が多く遅いという 欠点があるため、「しなの」の名古屋〜中津川・南木曽の特急利用者がいた。しかし、「しなの」は名古屋〜 松本・長野への長距離利用者と混乗するため、特に自由席は常に立席必至であり、名古屋〜中津川・南 木曽を自由席を利用する利用者は不便を強いられていた。そこで「CL」を南木曽まで延長させることで、 「しなの」の近距離利用者を「CL」にシフトさせれば、「しなの」の遠近分離は完全に達成されるのではないだろうか。

4.全区間全席指定席にすること
「CL」の問題点の一つに座席のクオリティが無いことが上げられる。ややグレードアップしているとはいえ、同一会社の車両とあまり変わらない転換式シートであり、一部区間では一般客と混乗 するため、これで310 円を徴収することは無理があるのではないかと思われる。名古屋地区では名鉄「パノラマカー」に 代表され るように、転換式シートは一般的設備であるため、利用者にとっては特に高級感は抱かないと思われる。 よ く聞かれる「CL」改善案に快速列車に指定席(「CL」車両)と自由席(一般車両)の併結を求める意見も あるが、それでは中央西線名古屋口の快速列車問題(停車駅多い、時間かかる、混雑する)が解決されな い。また、現在の「CL」車両設備では指定席利用者が期待できない。現在の設備で少し でもクオリティ(この場合、座席だけでなく「CL」全体)を上げるためには全区間全席指定席が望ましい のではないだろうか。

5.すべての「CL」停車駅に正当な方法で乗車機会を与えよ
例えば、下り(中津川行)「CL」は名古屋市内各駅では乗車のみ、高蔵寺・東濃地方各駅では名古屋市内 各駅から乗車した場合は下車のみができる列車である。もしも「CL」が全区間全車指定席となった場合、 下り「CL」は、名古屋市内を離れるに伴い乗客が減っていくため、中津川到着時には空気輸送になってい る可能性がある。そこで、高蔵寺や多治見などから下り「CL」に乗車できるようなシステムを確立させね ばならない。そのためには乗車整理券券売機の増設が必要になる。増設台数については、高蔵寺以北の下 り利用者数は上り(名古屋行)ほどではないので、「CL」各停車駅に1台ずつでよいだろう。

6.乗車整理券料金システムの改善を
▼「CL」乗車整理券料金【私案】
A案B案
30kmまで210円210円
50kmまで310円310円
51〜80km530円
81km以上530円730円
【備考】
30kmまでの設定は多治見〜中津川・
南木曽間の区間内利用に限り適用。
3に続くのだが、中津川〜南木曽延長における、もう一つの問題点は名古屋市内各駅〜南木曽の乗車整理 券料金が310円では、JRに旨みがないことである。そこで名古屋市内各駅〜坂下・南木曽については別料金 にする必要がある。

また、「CL」の整理券料金システムの欠点は、均一料金であるため、長距離利用者に利用が偏りやすいこ とである。中央西線名古屋口の乗客動向は高蔵寺・多治見・瑞浪で段階的に減少する。そこで「CL」の近 距離(名古屋市内各駅〜多治見・土岐市・瑞浪)利用者を獲得するための料金戦略が必要なのではないだ ろうか。
「CL」には310円を徴収するほどの設備・サービスが備わっていないため、乗車整理券料金の値下げも一 考であろうが、JR側は値下げについて非常に消極的姿勢であるのが残念である。「CL」活性化の為の乗 車整理券料金私案は左表の通りである。

A案は現状の料金体制を維持させることを考慮したもの、B案は「CL」が高速化・差別化を重視したもので ある。A案では現状とさほど変わり無い。一方、B案は料金を距離で細分化したものだが、名古屋市内各駅 =恵那・中津川の利用では値上げとなるため、批判が出る可能性がある。そのためには「中津川快速」の 1時間2本運転の復活が必須条件となる。A・B両案共通の210円の特例は、列車本数が大幅に減少する多 治見=中津川間の利用者に対する配慮と同時に「CL」の近距離利用積極策である。

7.駅別の座席割り当てはやめて、乗車整理券券売機のオンライン化を!
下り「CL」を例に上げると、千種駅では割り当てられた乗車整理券がすべて売り切れても、名古屋駅・金 山駅で半分程度しか売れなかったため、千種駅発車時点で一部座席は満席である一方、一部座席ではガラ ガラであることがある。千種駅ではそれを見越して、乗車整理券を購入せず飛び込み乗車をする人がいる。 そこで、駅ごとの乗車整理券割り当てをやめて、乗車整理券券売機をオンライン化する ことによって、1人でも多くの利用者が確実に乗車整理券を購入できるようなシステムにすることが必要 なのではないだろうか。現在のシステムでも下り「CL」の場合、名古屋駅発車時点で売れ残った名古屋駅割当分 乗車整理券を、金山・千種の両駅に振り替えることは意外と簡単であるはずだが、実際には行われていな い。また、飛び込み乗車客に対しても、車掌に乗車整理券販売の携帯端末を携帯させ、確実な乗車 整理券の発売を実施し、飛び込み客に対しても追い出しの不安を与えないサービスも必要だ。JRはコスト 難を理由に導入する考えがない(朝日新聞名古屋本社版2001年2月5日夕刊による)ようだが、そういう投 資を怠ったから、「CL」は乗車整理券を購入した利用者にも不安を与えるようになっている。決して「投 資=コスト」ではないはずだ。「CL」と列車の性格が似ているJR東日本「中央ライナー」では、車掌に携 帯端末を持たせたり、乗車整理券の売れ残りを次以降の停車駅に振り分ける施策を実施している。JR東日 本にできて、JR東海にできないとはどういうことだろうか。

8.乗車整理券の前売を実施!
「CL」のようなライナー型列車のうち、首都圏のライナーには、1ヶ月前からの乗車整理券前売を実施し ている列車がある。しかし、「CL」では前売りがなく乗車整理券が発車20分前からしか購入できないため、 事前に座席確保ができない。「CL」を利用するときは時間的な制約を受けやすく、使い勝手が悪い。

そこで、乗車整理券の前売を実施したらどうだろう。しかし、「CL」全座席のうち、50%を限度にみどり の窓口で前売してはどうだろうか。発売は該当する「CL」の発車1時間前までとし、それ以後は「CL」停 車駅の券売機で発売すれば問題ないと思う。すでにJR中央西線の一部駅には、券売機によるホームライナ ーの乗車整理券の前売が行われている(画像は多治見駅のもの)。オンラインにすれば、「CL」乗車整理 券の前売りは、意外と簡単に実現できるはずである。

しかし、みどりの窓口での販売によって、名古屋駅や千種駅・多治見駅などではこれによって、みどりの 窓口の混雑に拍車をかけることになる可能性が高い。そのため、「CL」乗車整理券券 売機を前売にも対応した複合型券売機を設置するのがよいだろう。JR東海は、すでに主要駅に 「エクスプレス販売機」なる複合型券売機を設置している。乗車券の他に新幹線や在来線特急の乗車券や 特急券も購入できる優れものだ。特出すべき点は指定席券も発売可能であること。つまり、オンライン販 売はJR東海でも実施しているのだ。ノウハウも揃っているのに、「CL」乗車整理券のオンライン発売を しないのはなぜだろうか。

9.大曽根駅臨時停車の実施を
「CL」登場時に話題になったモノの一つに、大曽根駅の通過があった。大曽根駅は名古屋の北の玄関口と して快速も停車する乗降客数の多い駅であった。また、この駅の東にはナゴヤドームがあり、プロ野球公 式戦やコンサート・展覧会などのイベントがあり、ドームへのアクセスとして利用されていた。「CL」の 大曽根通過は快速との差別化のつもりだったのかもしれないが、「中津川快速」を「CL」に振り替えたこと によって、その利便性は失われてしまった。例えば、ナゴヤドームで18:00からプロ野球ナイトゲームが行 われる場合、「CL」16号(中津川16:08発)と「CL」18号(同17:08発)を大曽根駅に臨時停車させ、野球観戦 客のアクセスを改善することができないだろうか。この他にも、ナゴヤドームでイベントがある時に大曽 根駅での臨時停車を実施して、ドームへのアクセスを改善することはできないのだろうか。こういうもの の積み重ねが、利用者増加のきっかけになるはずである。

10.もっとPRを
列車のPR媒体として役立っているものに、オレンジカードなどのプリペイドカードが挙げられる。JR東海 はオレンジカード販売にあまり積極的ではないものの、特急車両を中心に同じ列車をモチーフとしたもの を続々と発売している。しかし、「CL」は新型車両でありながら特急列車でないためか、「CL」登場後も 「CL」をモチーフとしたオレンジカードが一向に登場する気配はない。「CL」はJR東海久々の新型列車だ というのにPRが足らないように思われる。黙っていても乗車が期待できるとでも思っているのだろうか。 しかし、実際の乗車率は芳しくない。そのため、利用促進策として「CL」オレカの発売ぐらいして、もっ と「CL」をPRしてもよいのではないか。やはり、列車の性格からして、額面は3000円カードが適当であろ うか。(笑)

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