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中央西線「セントラルライナー」のライバル
名古屋〜多治見・可児間の都市間高速バスの概要


▼運行経路
( )内は経由地
名鉄バスセンター
(東片端)(東新町)
(名古屋高速・小牧)
(名神高速小牧I.C)
(中央道)桃花台
(中央道多治見I.C)
明和団地
旭ヶ丘10丁目
桜ヶ丘1丁目
桜ヶ丘3丁目
桜ヶ丘4丁目
桜ヶ丘5丁目
皐ヶ丘4丁目
皐ヶ丘6丁目
皐ヶ丘9丁目
名古屋鉄道(名鉄・本社:名古屋市)と東濃鉄道(本社:岐阜県多治見市)が名古屋〜多治見・可児間に、 高速バスが運行されることが明らかになった。当初2001年6月からの運行予定であったが、やや遅れなが らも2001年10月20日に運行開始される模様である。これまで、この区間の輸送機関がJR東海の土壇場であ り、高速バスはこの市場に新規参入する。既存の快速列車に強引な付加価値をつけ、乗車券とは別に特別 料金を徴収する「セントラルライナー」(以後「CL」と略します。)に対し、運賃の安さと団地直通を 売りにする高速バス。今後、名古屋都心から多治見・可児の団地の間で鉄道・バスの乗客争奪合戦が見ら れそうだ。そこで、ここでは「CL」(これだけでなくJRといってもいい)のライバルとなるであろう、こ の都市間高速バスについて取り上げてみたい。

【開設までの背景】
多治見市北部から可児市南東部にかけての新興住宅街から名古屋都心部へ行く場合、まず多治見駅 北口までバスを利用し、多治見駅でJR中央西線に乗換える。更に栄・伏見へ行く場合は、千種駅で 地下鉄に乗換える必要があった。この新興住宅街は約2万2千人が暮らす名古屋のベットタウンであ り、名古屋への通勤通学者が多い。しかし、乗り換え回数が多いことや多治見市内での慢性的渋滞、 多治見駅での徒歩連絡(5〜8分)が不便なことなど問題があり、名古屋都心部への直行バス運行 を求める声や運行の噂は以前よりあった。

だが、多治見をはじめとする岐阜県東濃地方から便利な名古屋高速道路へのアクセスが未整備だっ た(すでに名古屋I.Cで東名高速と東名阪道、及び楠J.C.Tで東名阪道と名古屋高速道路が直結して いたが、東濃地方から名古屋都心部へのアクセスとしては大回りで実用的ではなかった。)ため、 バスの高速運行及び定時運行を確保することが難しかったため、これまで実現することはなかった。 また、名古屋市東部の地下鉄駅を起点とした高速バス構想もあったというが、これでは現行の通勤 スタイルとの抜本的な差別化(都心への直行)が計れないため、実現させなかったのは賢明である と思う。

2001年3月に名神高速小牧I.C近くの小牧南I.Cまで名古屋高速道路が開通したため、高速道路を利用 した名古屋都心〜東濃地方のルートが確立し、高速バスを運行できる環境が整った。しかし、6月 になっても運行開始する気配が無かった。その最大の要因は名古屋高速道路が名神高速道路と直結し ておらず、名神高速小牧I.C〜名古屋高速小牧南I.C間2.8kmは一般道路(国道41号)を利用せざるを 得ないことだったとみられる。特に都心へ向かう朝のバスが渋滞に巻き込まれて遅れるようでは、 通勤通学者をターゲットとした都市間バスとしては失格なのである。定時性喪失を最大限に回避し、 バスのイメージダウンを防ぐためには、名古屋高速の名神直結が悲願であり、運行開始が10月に延 期された最大の要因はこれだったのではないだろうか。新聞報道によると、この区間が10月19日に 開通することが決定したからだという。

【高速バスの概要】
運行会社は名古屋鉄道(名鉄・本社:名古屋市)と名鉄系の東濃鉄道(本社:岐阜県多治見市)の共同 運行。運転経路は名古屋駅前の名鉄バスセンターから名古屋の中心・栄を経て、名古屋高速道路・名神 高速道路・中央自動車道を利用して、多治見市の明和町・旭ヶ丘・希望ヶ丘と可児市の桜ヶ丘・皐ヶ丘 の各団地を結ぶ運行距離47.6kmの路線である(経路の詳細は左図参照)。運転本数は平日で上下32本。 朝夕は最高20分間隔。日中は60分ヘッドで運行。運賃は名鉄バスセンター〜皐ヶ丘9丁目間で900円。栄 〜皐ヶ丘9丁目間で850円。1日に600人の利用を見込んでいる。名古屋圏における、都市近郊の団地から の都心直通の高速バスは、名鉄バスセンター及び栄から三重県桑名市・四日市市の団地を結ぶ、三重交 通バスに次ぐものである。

【「CL」への影響は?】
▼現行ルートと高速バスとの比較
現行高速バス
所要時間52分程度62分
運賃1090円900円
【備考】
現行ルートは乗り換え時間含まず。
名古屋〜多治見・可児の新興団地間において、高速バスはJRより運賃が安く、所要時間差もほとんどな いうえに、乗換なしに都心直行など好条件を備えている。左表は名古屋駅〜皐ヶ丘9丁目(可児市)間 の利用における現行ルート(バス+鉄道)と高速バスの比較である。所要時間では現行ルートの方が早 いが、多治見駅での鉄道からバスへの乗り換え時間(5〜8分)を考慮すれば、実質はほぼ同じといっ てよい。また、運賃でも高速バスが現行ルート(鉄道・名古屋〜多治見:650円、バス・多治見駅北口〜 皐ヶ丘9丁目:460円)より、20%ほど割安である。したがって、高速バスはかなり優位な位置にある と見られる。

そのため、鉄道への影響が少なからずあるとみられる。特に、特別料金を徴収している「CL」には不 利である。高速バスの登場によって、名古屋への行き来が多い団地住民を中心に高速バスへシフトする 可能性は十分に考えられる。特に夕方の帰宅時は朝の出社時に比べ時間的制約が少ないため、安い運賃 と団地直行のメリットは「CL」には脅威になるだろう。そのため、夕方に高乗車率を誇っている「C L」19号・21号においても、利用者数に影響が出る可能性は高いと思う。

【ライバルへの期待】
「CL」は大化けする可能性はある。しかし、現在の「CL」では中途半端な上に問題点が多すぎることは、 これまで述べてきた。抜本的改善無くして「CL」発展の道はないことぐらいは、別にこのHPを見なくて も中央西線名古屋口の現状をご存知であるなら、誰もがわかることであろう。「CL」のような列車が登 場し、事業者側の暴走を受け入れざるを得なかったのは、これまで中央西線は競合路線のない、JRの土 壇場であったためである。今回、高速バスというライバル出現に伴い、名古屋〜多治見間のJRの自然独 占が崩壊する。(ただ、多治見側は郊外の団地をメインターゲットとしているため、厳密には一部崩壊 が正確な表現だろう)意外にも多治見駅は「CL」だけでなくその他の列車にも影響を与える可能性もあ る。

2001年春、ついに日本政府が現在経済がデフレ状態にあることを認めてしまった。「CL」のようにスピ ードと座席確保に対して少々強引な付加価値を付け、実質値上げを断行したことは時代に逆行している と言うこともできよう。現在、市場が最も求めているものは低価格である。上質なサービスなどは二の 次である。(二の次と言えど、低価格を上回るクオリティの創造は必須条件)乗換なしで名古屋都心へ 直行する高速バスのメリットは、利用者を獲得しやすい好条件である。名古屋都心から三重県桑名市と 四日市市の団地を結ぶ三重交通の都市間高速バスが好調であるが、今回登場する都市間高速バスも、同 様に成長するだろう。

中央西線の利用概況報道ではJR高島屋開業時以後、利用者の前年割れが続いている。これは不景気だけ が原因ではないはずだ。私は「鉄道対高速バス」の競争が進行し、JRがそれまでの見解を改め、中央西 線の列車運行方針を改善することを望んでいる。もし、実施されるのなら「CL」の抜本的改善は避けら れないことだろう。

【参考】
名古屋鉄道ホームページ( 高速バス概要運行開始情報
「朝日新聞」名古屋本社版2001年4月5日、同2001年4月25日朝刊岐阜版「リポート岐阜」
「中日新聞」2001年4月5日朝刊
「中部経済新聞」2001年4月5日、同2001年9月14日

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