このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
ワイヤーレコーダー、 又は、鋼線式録音機と呼ばれる録音機械です テープレコーダーは皆様、よくご存知ですが、 それ以前の録音機で 魚釣りの、釣糸位の極細の針金、と言うか、ステンレスワイヤーに 音声を磁気録音しようと言う機械です。 この録音機の原理はかなり昔から知られていて、その原型は 1898年、デンマークの電話技術者、ポールセンによって 電話の会話を録音する目的で作られました。 エジソンが蓄音機を発明してからおよそ20年後のことでした しかし、針金に録音すると言う、この機械は原理的に音質は、ひどく悪く この欠点は、なかなか克服出来ませんでした、 しかし、ワイヤーを長くすれば、いくらでも、長時間録音できるという利点から 米国で改良が重ねられ、第二次大戦では、米軍が、無線通信の録音用に 採用します 一方、ドイツでは、第二次大戦中にテープレコーダーが実用化され ドイツ軍は高性能なテープレコーダーを、無線通信の録音、ラジオ放送に使用します ドイツ敗戦と共に、テープレコーダーの技術は世界に広まり、1940〜1950年代にかけて ワイヤーレコーダーと共に改良されていくのですが、音質、扱いやすさ、等で テープレコーダーが優位に立ち、ワイヤーレコーダーは消えていきます、 日本では、ワイヤーレコーダーは普及せず、放送等、特殊な用途で使われただけで 一般には馴染み薄い物であったので、現在では、この録音機の事を知る人も 少なくなってきました。 現在、手元にある、4機種のワイヤーレコーダーを、ご紹介いたします。 | |
米海軍 IC/VRW7 | |
1940〜1970年代にかけて米海軍の航空機に 搭載されていたワイヤーレコーダーで 搭乗員の会話、無線交信を記録するために 使われていました、 今で言う、ボイスレコーダーですね、 写真の機械は30年くらい前に、米軍の払い下げ品 を扱っている店で売られていて、ヘーエこんな物が あるのか、と思い、購入して、保管していた物です | |
リールに巻かれたワイヤーが真ん中の、黒色の録音ヘッド の上を擦りながら、もう一方のリールに巻きとられ 録音していきます この機械はボイスレコーダーと言う性格から 録音専用で、再生はもちろん、巻き戻しもできません 地上に降りてから、再生専用機で再生する物です 電源は飛行機の機内電源に合わせて、直流28ボルト で動作します モーターも28ボルト、真空管も28ボルトの低電圧で 動作する、特殊な物を使っています。 | |
録音ヘッドと録音ワイヤーの様子 わかりやすいよう、ワイヤーを少し緩めました 実際はもっとピンと張っています。 IC/VRW7の搭載例 グラマンの雷撃機 英語(PDF) カナダ空軍、対潜哨戒機 英語 | |
米陸軍 航空隊 RD-11B/GNQ-1 | |
第二次大戦後期、米陸軍航空隊で使用されたワイヤーレコーダー この機種は地上用で、欧州戦線、太平洋戦線で、日独に対し 爆撃を行った、爆撃機との無線交信の録音用に使用された物のようです マイク、無線機からの録音、巻き戻し、再生、消去ができ 使い勝手の良い、すぐれた機械です、 ただし音質は悪く 音声はともかく、音楽などは録音しても、とても聞けたものではありません (専門的になりますが、交流バイアスではありません、ですからひどく歪があります) もっとも、当時の飛行機の無線交信は、音質の悪いカーボンマイクを 唇に押し当てるようにして会話をしてたので、録音機の音質は 問題無かったのかも知れません。 この機械は軍用と言うこともあり、機構的にはとても凝った作りで 金と手間がかかっています、 一般的にワイヤーレコーダーは、操作中にワイヤーが切れやすく 取扱いにとても神経を使う物なのですが、 この機種はワイヤー部分を カセット式にして交換を容易にしています、 さらに巻き過ぎを防ぐ安全装置、カセットが確実にセットされたか、確認 する機構、 さらに 再生から巻き戻しに移行する時は、リールを逆転させるわけですが この時、いきなり逆転するとワイヤーに、ストレスが掛るので 真空管を使った、タイマー機構で一定時間静止させた後 逆転させる仕組み等、細部にわたって、至れり尽くせりの作りです。 | |
ワイヤーのカセット 60分の録音時間が表示されています、 陸軍、海軍共、同一規格のカセットを使った録音機が 何機種か有り、カセットは、互いに交換性があります。 | |
カセットの裏側 巻き過ぎ防止のリミットスイッチの接点 確実に本体にセットされたか、チェックする接点などが 配置されている。 | |
カセット内部 アルミダイキャストのフレーム、 リミットスイッチ、 ボールベアリングの軸受け、ワイヤー巻き取りに テンションを与えるための、黒鉛を使ったブレーキ機構 等、しっかりした作りです。 | |
録音再生ヘッドは茶色のベークライトに埋め込まれています カセットテープと違うのは、録音ヘッドが、カセットの内部にあることで これは、機構的に、本体にヘッドを置くのは、難しいのと、 ヘッドは常に、スチールワイヤーとの摩擦で、摩耗が激しいので カセットに内蔵してしまえば、ヘッド交換の手間も省けると言う理由。 | |
米国 ウェブスター社製 ワイヤーレコーダー | 民生用 MODEL 180-L |
戦後発売された一般向けのワイヤーレコーダーで、 最もよく目にする機種です、 NHKでも、使っていたらしく、類似機種が、 NHK放送博物館 で紹介されています この時代になると、交流バイアス方式と言って、 磁気録音特有の歪を防ぐ技術が採用され、音質も、良好です もちろん、真空管式で、電源はAC 115V です | |
録音、再生ヘッドの様子 | |
運搬状態 | |
ドイツ製ワイヤーレコーダー Drahtmagnetofon | TONMEISTER Type ST 701/8 LFR |
ドイツで戦後発売された民生用ワイヤーレコーダーです ドイツと言えば、戦時中に高性能なテープレコーダーを完成させた国 それでも、テープレコーダーが商品として優位を確立するまでは ワイヤーレコーダーとの併存時代がありました、 米国製の機種と内部構造はほとんど同じで、音質も良好です。 | |
ベッド附近の様子 | |
録音用ワイヤー 名門、シーメンス ハルスケ製 | |
この機種は、レコードプレーヤーとしても使えるようになっています 米国製の機械でも、このような兼用機は多く作られています トーンアームを付け加えるだけなので、コスト的にも大したことなく 2倍おいしいと言うことでしょう。 | |
蓋を被せた運搬状態 | |
ワイヤーレコーダーの交換用ヘッド | |
ワイヤレコーダーのヘッドは、スチールワイヤとの摩擦で 使用とともに、すり減ってしまいます、 その為、業務用などでは、頻繁な交換が必要で、 交換用ヘッドが用意されていました、 交換も簡単で、機械に差し込むだけです。 マイクロホンで有名なSHUREの製品 | |
交換用ヘッドの説明書 | |
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