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約壱萬円の旅
手元に1万円札があるとする。
これがそのままあるだけなら1万円の価値しかない。
しかし、ひとたび友人と旅に出れば、これは1万円以上の価値を持つのだ…!
平成28年10月20日(木)
朝9時半過ぎ、阪急梅田駅で後輩のSと落ち合う。彼から前日、急きょメールが来て、神戸の六甲方面に出かけることになったのだった。
有人改札で「有馬・六甲周遊1dayパス」(阪急版)2560円を買う。摩耶と六甲のケーブルを乗りつぶす予定だが、有馬に抜けて温泉につかろうと考えた結果この切符になった。
ちょうどいた新開地行き特急に乗る。前の方で座れた。京都線と異なりロングシートなのだが、通勤路線ゆえ仕方ない。
阪急は早く、25分ほどで三宮に着く。
午前中は神戸市立博物館で松方コレクションを見ることになっている。松方弘樹ではなく、松方幸次郎という川重の初代社長のコレクション展である。
Sは金券ショップで1350円でチケットを入手し、辛うじて学生の私は窓口で学生証を差し出し、1100円でチケットを買った。
展示はロートレック、ピカソなどの有名どころもあるが、全般的に地味だったのと、コレクション展なのでまとまり感がない。しかし様々な画家に触れられたのは興味深い。
共立女子大が所蔵するイギリスの椅子の展示があり、ルイ16世のものなどもあり座ってみたい。
老人会のような会場の混み具合に少しうんざりしたが、平日だから仕方がない。近所の高校生が勉強の一環で来ていたが、凄まじい速さで鑑賞?していた。
浮世絵の展示もあり、人気だったがS君曰く「(元の版木は貴重だが)画の方は古書店で8000円くらいで買えるのでそんなに貴重ではない」そうなのでスルーした。
美術専攻なのでこういう解説がところどころ聞けるので一緒に行くと楽しい。ただし言い方がキッツイ(私限定)。
1時間30分ほどかけて常設もざっと見た後、昼食に三宮駅周辺へ戻る。
この日の昼食、夕食ともにS君リサーチの店に行くことになっている。彼は関西圏の飲食店、特にカレー屋とラーメン屋に詳しいので頼りがいがある。
そうして訪れたのはセンタービル地下の「サヴォイ」。センタービル地下街は安いので、ローの友人Hと何度か来たことがあり、その時は長田焼そばを食べた。
↑お店の看板 ↑ビーフカレー(650円)、卵を追加(50円)
メニューがビーフカレー、追加の卵、生ビールしかない大変ストイックなお店。カウンター席のみで近所のサラリーマンがひっきりなしに来る回転のいいお店でもあった。
肝心の味も、じわじわ来る辛さでほどよく煮込まれた牛肉もよい。ご飯がサフランライスで、欧風よりはインド風だが、さらさらと食べやすくもある。ミニサラダもあり、卓上には福神漬けの他にニンジンやキュウリのピクルス、ラッキョウもあった。
S君は「会社の近くにあったら絶対通ってしまう」とお気に入りであった。汗を流しながら完食。
美味しい昼食の後は、夕食のお店をチェックした後、三宮駅北のバス乗り場へ。摩耶ケーブルに乗りに行く。乗った市バス(210円)は席が全部埋まるか埋まらないかの混雑具合だった。駅から新神戸を経由し、大変な坂を登り住宅街を分け入って進む。村上春樹と私の友人の母校である神戸高校(編注:その後確認したら友人は兵庫高校出身だった。失礼しました…)を過ぎ、30分ほどで摩耶ケーブルの駅前に着いた。
↑住宅街の中に突如あるケーブルの駅 ↑運営は三セクらしい
←すぐわきに家が建っているので観光地という感じがしない
せっかくだし上のロープ—ウェイも乗ろうという話になり、1540円でセットの往復券を買う。客は我々の他に数名。進行方向の被りつき席があったので座ってみたところ、前傾姿勢を強いられる面白い座席だった。
上っていく時に眼下を見下ろすのが普通らしいので、進行方向と逆の席に座る。毎時00・20・40の発車で、我々が乗ったのは13時20分の列車だった。
所要時間は5分。ゴリゴリと登っていく。S君が「ケーブルが切れたらコントみたいに転がっていきますよね」と不穏当なことを呟く。神戸は坂の街でもあるが、確かにかなりの傾斜だった。肝心の景色は、途中まではなかなか良いが、木が茂っている部分もあり、トンネルもあるので全線楽しめる、というわけではなかった。
上にある虹の駅に着く。ロープウェイの乗り継ぎに15分あるので、展望台から街を見下ろす。廃墟で有名な摩耶観光ホテルがあった。
↑木々の隙間に見えるのが摩耶観光ホテル ↑結構登ってきた感ある
展望台のみしかなく、思ったより地味だったので、ロープウェイまで含めたのは正解だったとSとうなずき合う。
ロープウェイの駅は小奇麗になっていて、なんとトイレにはウォシュレットまで完備されていた。しかしふたを持ち上げたところ隙間にいたらしい虫の潰れる音がしたので、山の中であることには抗しきれないのだった…
↑ロープウェイの駅名板 ↑途中から見下ろす。足元に何もないのは新鮮だ。
ロープウェイ頂上には、カフェもあり、サンテレビの電波塔も立っている。六甲山方面へのハイキングコースもあり、バスも出ているが、我々は来た道を戻るのだ。
戻る前に展望台へ。
↑ケーブルの頂上より見晴らしがよい。曇ってしまったのが残念だが… ↑本当によく見える日は関空まで見渡せるらしい。ほんまかいな。
Sが野球好きでもあるので、甲子園の場所を2人で探す。「ほら、あそこ、あの山の先の…」「そんな雑な指示じゃわからん」などのやり取りを経て、Sの持つ高性能コンパクトデジタルカメラの望遠を利用し、ようやく発見。
満足感を得て下山する。
↑ケーブル山上、虹の駅外観 ↑車両は2種類あった
↑車内はこんな感じです ↑もう1台は赤。真ん中あたりで交換する
下山後、タッチの差で市バスが出ていく。接続は考慮されていないのだった…。
近くにある別の系統のバス停まで坂を下り、ちょうど来たので乗る(210円)。阪急六甲駅まで乗り、そこから六甲ケーブル下まで行くバスに乗り換える。ここからは最初に買った切符のエリアになる。阪急六甲駅付近には大学が複数立地し、下校時間に重なったのか神戸松蔭女子大の学生らしいJDがわらわらと歩いていた。お嬢様感がすごい。
六甲山下行きのバスは、故障のためか両替機が使えず、下車時に大変そうだった。途中で神戸大のキャンパスをかすめる。山の中だと散々聞かされていたのだが、中央大よりは街中にあるじゃないか(憤怒)。しかしアクセスがバスしかないのでかわいそうではある。
↑ここでも外国人観光客はいらっしゃる。さすが。 ↑駅舎。摩耶より立派。係のお姉さんが子供をあやしていてほほえま~
案の定接続はしておらず、時間があったのでSは近所の郵便局にお金をおろしに行った。待ってる間に駅舎内をうろうろし、六甲山の観光情報を収集する。どうやら山上では芸術祭が開かれているらしかった。
↑左が改札。電光掲示まで備えている。 ↑途中やってきた回送電車。
S君は時間に余裕をもって、走って戻ってきた。どうやら簡易局でATMが1台しかなく、通帳をたくさん持ったおばさんが出現していて危うさを感じたのだそうだ。通帳たくさんおばさん、私もよく遭遇するが、あれはマネロンでもやっているのだろうか…?
そんなくだらないことを考えていると我々の乗る列車が下りてきた。改札が始まり、切符を見せると、裏面にサインペンで日付が書かれる。機械化されていないのだった。事前に書いておけばよかった。
車両はなんと2両編成!山下の側は窓ガラスがない吹き抜けのトロッコ調になっていて、迷わずそちらに座る。
↑ワイルドな乗り心地だった ↑登ってから撮影
所要時間は12分。独特のケーブルの乗り心地を存分に楽しめるうえ、脇には沢が流れ、神戸市街も時折見えるので楽しい。女性車掌による観光案内もある。
途中で赤い車体の車両と行き違い、かなり上ったなぁと思ったところで終点。
↑年季の入った駅舎。登録有形文化財らしい ↑構内
↑芸術祭の作品。ペナントすごい。 ↑戦前の意匠を感じる階段手摺
バスが20分に1本あり、すぐに乗ろうか迷いつつ、建物の上に登ってみたかったので一本遅らせることに。
↑屋上にいた謎の鳥模型 ↑昔運行していたロープウェイが見える
六甲山ではアートイベント「六甲ミーツ・アート2016」が催されており、一部の作品は無料で見る事が出来た。屋上に併設されている建物にも展示があり、入ってみた。
森太三「起伏のテーブル」という作品だった。紙粘土を指を使って延ばし、テーブル上に張り付けたものであった。火星の地表のようで面白かった。実際に触れることも出来、ひび割れもそのまま作品の風合いとして利用していて新鮮だった。
芸術の秋を感じながらバスに乗り、先客の訪日客らと一緒に六甲有馬ロープウェイ乗り場へ。制服姿の学生が1人いて、途中で降りていったので生活路線でもあるのかと驚いた。終点1つ前のガーデンテラスでウェイ系大学生軍団が乗ってきて、訪日客+大学生軍団でバスが騒がしくなった。バスを降り、ロープウェイ乗り場へ行くと、ロープウェイはちょうど出発した後だった。ここでも接続が考慮されていない。いったん建物を出て、ガーデンテラスへの小道を歩く。Sはうるさい学生が大嫌いだそうで(同意)、先ほどのウェイ系に文句を垂れていた(同意)。彼らとバッティングしないように、ロープウェイを1本飛ばすことにした。畢竟最終便に乗ることに。
ガーデンテラスは寒い。私の待望していた六甲山牧場ソフトも売っていたがさすがの寒さに躊躇する。Sは大泉洋のごとく「あなたはやく買って食べなさいよ!」と煽ってくる。結局売店が営業終了で食べられなかったのだが。
売店を冷やかし、小道を戻る。実はこの道にもアート作品があり、私が行きに「ガソリンこぼしたようなシミ」と評した(ひどい)ものが、実は遠くから見ると浮き上がって見える動物の絵だった。
ロープウェイ乗り場に戻る。先ほどの大学生がまだいたので嫌な予感しかしない。乗り場にもアート作品が数点。
↑これらも離れて見ると立体に見える。松本かなこの作品。上の動物も。
↑「the pink neko」デコレーターズクラブという、思いがけないところに思いがけないものを置くという意図らしい。飯川雄大作品。↑猫の後ろに昔のロープウェイ
作品を見て時間をつぶし、最終便の改札を待つ。S君がまたも何やら煽ってくるので、「それは水曜どうでしょうを模倣しているのか」と問うと、意図が伝わらなかったのか水曜どうでしょうは見始めると面白くて止められないという話を始めた。遠回しの言い方をしないで、その煽りやめいと言った方がよさそうだ。。悪意無く言っているだろうからあまり強く出るのもよくないかと思ってはいるのだが。
↑現役のロープウェイ ↑眼下に有馬温泉、遠く三田方面を見下ろしながら降りていく
危惧していたウェイ学生たちはどこかに消えたらしく、中年女性2人連れやおじさんら大人しい大人しい面子だったので、穏やかに空中散歩が楽しめた。
↑ロープウェイ駅。温泉からはちょっと距離がある。
有馬温泉の金の湯を目指し歩く。矢印が書き足された謎の看板に惑わされつつ、放棄された元企業保養所のテニスコートを転用した駐車場の脇を抜け、ようやく大きな旅館が立ち並ぶ一角に出る。送迎バスや車を避けながらさらに進むと、温泉街に出くわし、金の湯に着いた。すっかり日が暮れてしまった。
↑良い雰囲気だ…!
金の湯は源泉に最も近く、赤茶けた湯が有名。S曰く湯から出て流さずに白タオルで体をふくと白タオルが茶タオルになるとか。ちなみにレンタルバスタオルがなく、600円でスポーツタオルを買う。温泉の名が入り、良い記念になる。
ここか銀の湯かで、千葉県警の捜査員がロッカー荒らしに遭い、英国人女性殺人事件の捜査資料を盗まれた事件があったそうだが、そのせいかロッカーのカギが厳重なものに新しくされていた。
茶色い湯は熱く、内湯のみだったが伝統的な温泉らしくて雰囲気が良かった。
↑風呂上がりにSはサイダー、私は王道を行く、コーヒー牛乳(120円)
温泉を出てから、土産物屋を覗きつつ神鉄の駅へ。神戸電鉄、唐櫃台から温泉までは未乗である。
↑駅前。思っていたより小さい。ロータリーも狭い。 ↑有馬口と温泉駅を往復する運用と、直通の準急がある。
1時間に4本走っていて、便利。乗り換えて20分ほどで谷上につき、日本一高い初乗り運賃で有名な北神急行で三宮に出た。
三宮では、S君お待ちかねの餃子タイム。
↑ガード下のストイックな名店 ↑餃子にビールで大勝利
ちょうど客が入りきったところで、15分ほど待った。テーブルが空いたので中に入る。
メニューは餃子しかなく、飲み物もビールか泡盛、ウーロン茶程度。瓶1本と4人前を注文。焼くのに時間がかかるようだ。店内は長年の餃子の煙で燻されていて、冷凍餃子発送のポスターが茶色くなっている。カウンターの個人客はてきぱきとビール1杯と餃子2人前を平らげて出ていく。「男は黙って」という世界観だ。女性客もいたのでそういう時代ではないが。出張らしいサラリーマンが大荷物を抱えてカウンターに滑り込む。ずっと来たかったんやろなぁ…
店の前の沿革(訪日客向けに英語だった)によれば、大陸帰りの先代が味噌をつけることを考案したそうである。食べてみるとなかなか合う。醤油や酢、自家製ラー油も完備されていて、味を変えながらいくらでも食べられる。結局2人で8人前を平らげ、1人1770円。安い!大満足!
出た時にも店の前に行列があった。なおこの店の向かい、側溝のふたが壊れており、足をすくわれてこける人が続出していて危なかった。
この「ひょうたん」は元町にも店があるようだ。さらに近くには「赤萬」という同じく餃子専門店があり、神戸市北区出身の友人Hはたまに行くという。この日は相撲取りがカウンターにいて、迫力があった。
餃子の後は、にしむらコーヒーでおやつの時間。生田神社を経由したところ、ポケモンGO勢に遭遇。ここでカブトをゲットした。
↑にしむら珈琲本店 ↑コーヒーモンブランを注文
時間が時間なので、ケーキがほとんど残っていなかった。コーヒーが本格派でとてもおいしい。私は変わり種の、コーヒーモンブラン(750円)を頼んだ。コーヒーゼリーの上にアイスクリームと生クリームが乗り、下にはコーヒーのシャーベットという、コーヒーを堪能できるデザートであった。
1時間半ほど居座り、お互いの頼んだものを交換して過ごすなどした。
帰りは再び阪急に乗り、混雑を避けるべく南方で御堂筋線に乗り換えて家路に着いた。車端部に座れたが、サラリーマンのおじさんが寄りかかってきてガチ寝していたので微笑ましいやら若干迷惑やら。
↑新しくなっていた西中島南方駅 ↑車両はボロいのが来た
合計で9560円。約1万円の旅路であった。楽しかった。
おわり
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