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君の名は。(日本・2016)

原作・監督・脚本
新海誠

出演
神木隆之介 上白石萌音
成田凌 悠木碧 島﨑信長 石川界人 谷花音
長澤まさみ 市原悦子

【あらすじ】

千年ぶりとなる彗星の来訪を一か月後に控えた日本。
山深い田舎町に暮らす女子高校生・三葉は憂鬱な毎日を過ごしていた。
町長である父の選挙運動に、家系の神社の古き風習。
小さく狭い町で、周囲の目が余計に気になる年頃だけに、都会への憧れを強くするばかり。
「来世は東京のイケメン男子にしてくださ—い!!!」
そんなある日、自分が男の子になる夢を見る。見覚えのない部屋、見知らぬ友人、目の前に広がるのは東京の街並み。
念願だった都会での生活を思いっきり満喫する三葉。
一方、東京で暮らす男子高校生、瀧も、奇妙な夢を見た。行ったこともない山奥の町で、自分が女子高校生になっているのだ。
繰り返される不思議な夢。そして、明らかに抜け落ちている、記憶と時間。二人は気付く。
「私/俺たち、入れ替わってる!?」
いく度も入れ替わる身体とその生活に戸惑いながらも、現実を少しずつ受け止める瀧と三葉。
残されたお互いのメモを通して、時にケンカし、時に相手の人生を楽しみながら、状況を乗り切っていく。
しかし、気持ちが打ち解けてきた矢先、突然入れ替わりが途切れてしまう。
入れ替わりながら、同時に自分たちが特別に繋がっていたことに気付いた瀧は、三葉に会いに行こうと決心する。
「まだ会ったことのない君を、これから俺は探しに行く。」
辿り着いた先には、意外な真実が待ち受けていた……。
出会うことのない二人の出逢い。運命の歯車が、いま動き出す
(株式会社東宝 ラインナップページ より)

【感想】
 予告を見た時は、夢の中で入れ替わるだけだと思っていたのだが、夢をきっかけにしてお互いが入れ替わってしまうという設定だった。
最初は三葉の体に瀧が入って目覚めるところから始まる。思春期の男子が女の子になったらまず何をするか…彼は欲望に忠実に胸を触ってしまい、それを妹に見られるのだった。
ここで場面が変わり翌日。三葉は三葉の中に戻っている。周囲は「今日は普通だね」などと言い、ノートにも謎のメモがあるので、次第に三葉は自分が誰かと入れ替わっていることに気付く。
そして瀧の体で目覚めたときには、憧れの東京男子高校生(しかもイケメン)になっている。なので、学校を半日サボって東京観光などして、「素晴らしい夢だ」などと言い瀧としての生活を満喫する。
瀧のバイト先では奥寺という綺麗な女性の先輩と会う。客の嫌がらせで切られてしまったスカートを三葉は得意な裁縫で直し、奥寺先輩の信頼を瀧として得るのだった。

入れ替わりを把握してからは、お互いがお互いにメモを残しつつ、互いの生活を楽しむようになる。三葉は瀧の体を使い東京を満喫しつつ、瀧は瀧で男勝りな三葉という新たな境地を開いて女子に告白されるまでになる。
三葉は瀧が奥寺先輩に好意を寄せていることを把握すると、奥寺先輩と瀧を結び付けようと、瀧の体にいるときに先輩とのデートの約束を取り付ける。

そしてデート当日。瀧は瀧のまま、三葉は三葉のままであったことから、三葉は悲しみつつも、瀧の成功を祈る。その日は地球に彗星が最も近づく時だった。

ここで、瀧のパートに彗星の話がほとんど出て来ないことに気付く。
そう、2人はお互いの体だけでなく、時間も行き来していたのだ。

デート以降、お互いは入れ替わることがなくなる。デートの新美術館で見た飛騨の写真に見覚えがあることに気付いた瀧は、飛騨へ三葉に会いに行くことを決意。バイトの交代を頼んだ親友の藤井はなんと奥寺先輩を連れてきており、3人で新幹線とワイドビューひだを乗り継いで飛騨古川に向かう。

飛騨市では捜索は難航する(飛騨市は日本一市域が広い)も、偶然入ったラーメン屋で夢で見た光景のスケッチを見せると、店主の故郷と一致。
これで探していた場所が見つかった…と喜ぶも皆の顔は暗い。
そう、その場所は3年前に彗星が分裂して落下、隕石衝突により住民もろとも消滅した街なのだった。

ここから作品は大きく変わっていく。事前に一切情報を入れていなかった私はここからの展開に大きな衝撃を受け、手に汗握りながら展開を追っていった。

パンフレットには3・11の影響でこの作品を作ったことが書かれていた。確かにひしゃげたキハ40を見た時にあの震災を思い出さない者はいないだろう。

あの津波が来ることが事前に分かっていれば…。この作品は被災者にはまた違った感情を呼び起こさせるかもしれない。

私にとっては、元気に、前向きになれる楽しい作品でした。

「秒速」で敢えて会うことのなかった2人、今回はそれが昇華され、最後に2人は出会うのか…?それは劇場でのお楽しみに。

***
この作品は別にR指定のつくような作品ではないのだが、下着を不自然に隠すことがなく、自転車を思いきり漕いだり、寝起きに着替えたりするときなど「見えるときは仕方ないだろう」というスタンスが全体を貫いている。
作品のリアリティにとっては案外大切な点なのかもしれない。

ところでキモオタクが喜びそうな「女性の胸への言及」がぽつぽつ見られ、これは「響け!ユーフォニアム」(原作者は女性)の冒頭にもあるのだが、私が思っているより世間の女性方は、言及の仕方によるのかもしれないが、思ったより胸の話に寛容なのだろうか?
キモオタクが喜びそうと言えば、口噛み酒(もやしもんにも出てきたよね)をヒロインが神事の一環で作った後の妹とのやり取り(「現役JKの口噛み酒を売れば儲かる」)もそうではある。
そういうのが入ってても、大変なヒットを記録することに、深夜アニメ的テンションが世間にここまで受容されるようになったかと、少し複雑な気持ちである。

男である瀧が女らしいしぐさをする、それを親友がかわいいと評する。心と体の不一致という話に引き直してもからかうような視線は見られず、時代が変わったことを感じさせる。
瀧が三葉であるときに注意すべき点や、三葉が瀧であるときに注意すべき点が膨大にあることから、この社会がいかに性別によって特定の仕草を取るべきだと強要しているかが伺える。

そうした意識がどのくらいこの作品にあるかは不明だが、細かく描写することで図らずもそういった現代社会の難しさ、直面する問題を浮き彫りにしているのはとても面白い。

その細かい描写故、オタクにとっての指摘を誘発する作品ではあるが、全体の完成度の高さからはそんなものを指摘するのは野暮であろう。

新海監督自身、長野の田舎出身で、東京の大学(中大)を出ているので、田舎と都会の関係を上手く書けるのだと思う。
田舎を出たい一心で東京に来るも、中央大は郊外にあり、真の都会でないことから、ますます都心へのあこがれを強める可能性が強いのだが、それが三葉に東京への憧れを叫ばせ、瀧を四谷に住まわせたのだろうか。


******
(以下、野暮な指摘&雑感)

・酒が現世とあの世の懸け橋になる、民俗学的に広く知られた話なのだろうか。「精霊の守り人」も酒を媒介にこの世と別の世を行き来していたので。

・高山線を指して地元民は「電車」とは言わないだろう「汽車」だろう四葉ちゃん

・同じく高山線、3年前設定ならキハ40国鉄色も合っているが、なんで中が東のキハ110なんだよ。東海のキハ40系列は中身は国鉄のままで、1人掛け席など存在せんぞ。

※参考写真↓

↑劇中にも登場するキハ40国鉄色                                 伊勢車両区所属のキハ48の車内。伊勢に来る前は美濃太田にいたので、東海の40系列は全部これ↑

・でもワイドビューひだをあんな綺麗に描写してくれてありがとう新海さん

・方言もよくできてたよ新海さん。名古屋と関西のハイブリットっぽさが岐阜らしくて良い

・ヒロインが名古屋すっ飛ばして「東京に行きたい!」と言ってしまうの、名古屋出身者としては複雑だよ… ※名古屋では不十分、とさやちんが「君の名は another side」で申しておりました…

・日記消える前にスクショ取っとくべきだったね

・名前覚えてるうちに手に書けよ。忘れるのも唐突に感じた。

・名簿コピーしないの?

・藤井君と奥寺先輩がくっつくかと思ったけどそういうことはなかった…

・奥寺先輩、終盤に出てきたとき鞄をお腹だと見間違えて「妊娠!瀧の子か?」などと思って済みませんでした。

・奥寺先輩女子大生かよ!あんな綺麗な女子大生(cv長澤まさみ)がいるのか。いたら会いたいくらいだ。

・あんな美人の高校国語教師(cv.花澤香菜)はいるのか。いたら(ry

・瀧君胸触りすぎでしょ。うらやまけしからん。強わいはおろか淫行条例にも引っかかる…

・寝るときにブラジャーしないと思いますが。奥寺先輩も三葉ちゃんも… ※小説版に理由が書いてありました

・「中電は何て言っとるの?」中部電力が全国デビュー…ウレシイ、ウレシイ

・内容が内容だけに飛騨市は協力を渋る面があるかもしれない

・心が瀧になっても三葉の身体能力が上がるとは思えないのですが、おばあちゃん背負ったり丸太切ってカフェ作ったりバスケで活躍すっげえわ

・瀧君、ゼネコンを志望してたけど、新海作品だから大成建設に入社する未来が見えるよ

・瀧君、バイト先の年上のお姉さんとのデートで挫折を味わい、そこから学びを得て最終的に運命の人に出会えるので、理想的なリア充カップルへの進化経路を遂げている。

・三葉が瀧君のためにデート成功のためのリンク集をたくさん準備しておくの、「うだうだ言ってねえできちんと勉強して努力を重ねないと恋人出来ねぇぞてめぇら」という童貞キモオタクへのメッセージとも思える。「ただしイケメンに限る」とか言ってたらダメね、ということ。か

・瀧君が口噛み酒飲んで入れ替わりに成功した直後、嬉しさ余って泣きながらおっぱい揉みまくってるの面白いけど引く人多そう。抱きつかれかけた妹が戸をそっ閉じしたのもしゃーない。

・上の場面、人の命がかかってる場面でも胸触るんか!、という怒られが来そうだけど、かのガンジーも16歳で結婚したばかりの時に、父が今わの際にあるのに奥さんとHしてて看取れなかったエピソードがあるので、性欲はそれくらい誘惑が強い物なんですね。気をつけないとなぁ…。

おわり

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