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女神は二度微笑む(インド:2012)
監督・脚本 スジョイ・ゴーシュ
出演 ヴィディヤ・バーラン、パラムプラト・チャテルジー、ナワーズッディーン・シッディギー ほか
インド初、本格サスペンス映画!という触れ込みで、日経の映画評で高評価を受けていたので観賞。
ベルギーの「ロフト」やアルゼンチンの「瞳の奥の秘密」、韓国の「殺人の追憶」など、非ハリウッドのサスペンス映画は機会をとらえては見てきたが、どれも話の出来もさることながら、それぞれの国情や文化が色濃く反映されていて面白い。
この作品も、2時間たっぷりとコルカタの街中に放り込まれたような感覚で楽しむことが出来た。
土埃の舞う滑走路から始まり、街中の警察署、お湯の自動で出ない安宿、おんぼろトロリー、近代的な地下鉄に袋小路の下町のチャイ売り、河原で歯を磨くたくましき人々…それぞれのカットにインドの様々な面が凝縮されていてどの場面も新鮮だった。
冒頭、地下鉄サリン事件を思わせるテロが発生する。インドは首都デリーとコルカタに地下鉄が走っているそうで、コルカタには南北線の1路線があるという。客が有人窓口で切符を求めるシーンなども映し出され、興味をそそられる。
なおこの冒頭、テロに使用される化学薬品の調合シーンで防毒マスクから耳が出ていたのが気になったが、コンピューターの描写もけっこう適当だったりするのであまり細部の整合性を求め過ぎない方がこの作品はより楽しめるのだと思う。まあこうした適当さは日本映画でもハリウッドでもありうるのだが。
しかしそうした適当さを補って余りあるのは、カットを多用した映像のスタイリッシュさと、音楽の多彩さである。
緊迫感のあるストーリーにあわせるかのように、画面がテンポよく切り替わり、それが作品に良い疾走感を与えている。
テロから2年後、イギリスから失踪した夫を探しに身重の女性がやってくる。この女性が主人公・ヴィディヤである。警官にも物怖じしない彼女の毅然とした態度は、その後の夫の捜索でもいかんなく発揮される。
そんなヴィディヤを助けるコルカタ警察の警部補心得がラナ、優男だがヴィディヤへの協力を惜しまない、誠実な男である。
夫はITの専門家、妻であるヴィディヤも同じくであり、この能力も作中で生かされている。
夫の勤務先である国立情報センターを訪れるも勤務記録がないと一蹴される。しかし身重の彼女に同情した女性人事部長が瓜二つの男・ミランが働いていたという貴重な情報をもたらしてくれる。が、彼女は直後に殺されてしまい、夫の情報を求めミランを探すヴィディヤらにも危険が迫る。そんな中接触してきたのは、情報局のエージェント、カーンだった…。
単なる夫の失踪が、国の安全保障にかかわる事件へと発展してゆく。足取りを掴んでは妨害にあい、もはやお手上げとも思える状態からも次の手掛かりを掴み、ミランへと肉薄していくヴィディヤ達。そしてコルカタ最大の祭りの日、思わぬ真相が明らかになるのである。
緻密に張られた伏線が上手く回収されていくラストはあっぱれという他なく、私はラスト15分までものの見事に騙されていた。
踊ってばかりがインド映画ではないぞ、と言わんばかりの、映画大国インドが放った快作である。
ヴィディヤの凛とした強さ、美しさが、よく練られたストーリーに華を添える。
おわり
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