このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
ナイトクローラー(2014:アメリカ)
【あらすじ】
学歴がなく職にあぶれたコソ泥のルイス(ルー)は、ある日ハイウェイで事故に遭遇し、そこでテレビ局に事件や事故現場の映像を売る「ナイトクローラー」とよばれる職業の存在を知る。自転車を盗んだ金でポリススキャナーとカメラを買い、助手を雇って夜のロサンゼルスに飛び出していく。テレビ局が過激で目を引く映像ほど高く買い取ることから、ルーは次第に大胆に、無謀に、危険を冒していく…
【感想】
日経夕刊の映画評で高評価を得ていたので観賞。
「ドニー・ダーコ」などで知られるジェイク・ギレンホールが、ネットとテレビが友達で、意識高い系特有の言葉遣いをする野心家ルイスを怪演していた。
常に交渉を求め、「貴重な経験」「成長が積める」といった言葉で助手をこき使い、強気な態度を崩さない。冒頭から、ルーには道徳心が欠如しているのだなぁという描写があり、その直後にはコソ泥にもかかわらず盗んだ電線の換金先の親爺に自分を売り込むという自信過剰さを見せつける。女性を口説くときも、相手が拒否しにくいような追い込み方を平然とするので、なかなか胸糞悪い主人公である。ただの下種さとは違う、口が上手く頭も回る針の振りきれた男という、お近づきにはなりたくない人物を雰囲気も含めて演じきっているジェイク・ギレンホールは、またこの作品で名を上げたことだろう。パンフレットでの精神科医の解説にもある通り、ルイスにはある種の障害を感じさせる、人を人と思わない部分があり、自分の求める何かを達成するためには平気で人を利用し、潰す冷酷さが備わっており、見ている我々を揺さぶってくる。ジェイク自身がパンフレットで述べるこの映画を表わした言葉「究極のサクセスストーリー」はよく当てはまっていると思う。
そんな俳優の演技もさることながら、映像の方も力が入っている。ルーが撮っている映像が随所に挟まれ、それが加工された先のニュース映像もテレビ越しに写される。なるほど普段我々の見ている事件・事故報道はこうして作られるのかと実感するとともに、映像の迫真さがどんどん上がっていくところにルイスの「過激な画」への執着が感じられるようになってくる。ルイスは過激さを求めるあまり、不法侵入や遺体の位置を動かすといった違法な領域に入り込んでいき、終盤での大きなカーチェイスに繋がっていく。このカーチェイスも凄まじい。LAという大都市でよくこれだけの画が創れたものだと感心する。
もっとも音楽が、スリラー特有の不安をあおる感じではなく、なぜか優しい雰囲気のある曲調の物が多かったので、そこにミスマッチを感じた。
しかしそれをも上回る、突き抜けた脚本と演技と迫力の画で2時間飽きることが無い。
大都市LAの負のエネルギーが産み落とした傑作。是非ご覧あれ。
なおマイケル・コナリーファンの私は、「コードスリー(緊急走行)」や「コード187(カリフォルニア州刑法典で殺人を示す条文)」が出てきてテンションが上がった。米国では予算の関係からか無線にスクランブルがかかっておらず、聞き放題な上、無線コードもネット上に転がっているのでだれでも通信内容が分かってしまうのだ(ゆえに本当に知られたくない情報はランドライン(有線)でやり取りをする模様)。この辺りに日本との大きな差を感じる。
おわり
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