このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

米国の警察制度〜サスペンスを見る(読む)前に〜

海外小説を読んでいると日本にはない、聞きなれない名称の政府の役人などが登場したりする。これはアメリカが州制を施行しているため、司法制度が複雑になっているからである。ここでは、少しでも海外小説が読みやすくなるようにこの司法制度を見ていこうと思う。

1、市警察

まずよく登場するのはこの「市警察」なる単語である。これは、その名のとおりその市が持っている警察である。日本でも、「自治体警察」という名称で戦後アメリカの手により作られた。(後にこの自治体警察は廃止となり一部を除いて現在の形になっている) この市警察は、中央集権制ではなく、各々が独立している。ここが日本と違うところで、現在日本では

国家公安委員会ー警察庁   都道府県公安委員会ー各都道府県警

となっている。なぜ日本がアメリカ式の自治体警察を廃止し、現在の形に置き換えたのかというと、地元の暴力団などと癒着したからだと言われている。

この市警察、市の議会などで予算が決められるが、フロリダ州マイアミ市警察などでは警察委員なるものが存在し、人事などを行なっているという。

また、バッジや制服などの形は署長などの交代でよく変わるという。パトカーも日本と違って各警察で違い、例えばロサンゼルス市警察は日本とよく似た白と黒の車体に赤と青の回転灯、ニューヨーク市警はブルーに白のラインでオレンジ色っぽい回転灯、シカゴ市警は白い車体にブルーのラインで回転灯はブルーである。これらのデザインも時々変わるようである。

また、海外小説にはよく拳銃が出てくるだが、各市警察ではそれぞれ制式拳銃を定めている。日本ではたいていS&WM36を参考にして開発されたミネベアM60(通称ニューナンブ)5連発回転式拳銃か、東京など一部で採用が始まっているS&WM37エアウェイト(これも5連発リボルバー)である。(例外としてシグ・ザウェルP230-JP(マニュアルセフティ、リングヤードつき)、S&WM3913を私服や暴対、SPが使用)「あぶない刑事」等で出てくるオートマチック拳銃、散弾銃などは殆ど使われていない。オートマチック拳銃を使っているのは警視庁や神奈川県警などにあるSAT(特別機動隊対銃器専従班、H&KUSP、MP5−J、モスバーグM500、PSG−1などを使用)、海上保安庁(グロッグ17)や厚生労働省麻薬取締官(ベレッタM84f)などごく一部である。

次の表に各警察の制式拳銃をまとめておく。(これらは映画や小説などから推測したものです。参考程度にお使いください)

場所制式拳銃参考にした映画、小説
ニューヨーク市警察(NYPD)グロック17又は19、S&WM36、S&WM60映画「身代金」、映画「15ミニッツ」、ドラマ「刑事コジャック」など
ボルチモア市警察グロック17か?「エネミー・オブ・アメリカ」
リッチモンド市警察9ミリ口径銃パトリシア・コーンウェル「検死官」シリーズ
ダラス市警察ベレッタ・38M・コナリー「ザ・ポエット」
ニューメキシコ州アルバカーキ市警察S&W・38M・コナリー「ザ・ポエット」
デンバー市警察S&W・38M・コナリー「ザ・ポエット」
フィラデルフィア市警察グロックリザ・スコットライン「代理弁護」
サンフランシスコ市警察ベレッタM92FS(M84F?)ドラマ「モンク」
バージニア州へイランコ—郡警察シグ・ザウェルP220パトリシア・コーンウェル「死因」
ミシガン州オスコダ郡ルーンレイク警察357コルト・パイソンP・J・パリッシュ「死のように静かな冬」
シカゴ市警察グロック19ドラマ「ER」シリーズ、M・コナリー「ザ・ポエット」
マイアミ市警察グロック19(装弾数より判定)アーサー・へイリ—「殺人課刑事」
ロサンゼルス市警察(LAPD)グロック17、ベレッタM92FS         M・コナリー「トランク・ミュージック」、映画「ハリウッド的殺人事件」
ハリソン郡ニューレバノン市保安官事務所S&W38口径リボルバージェフリー・ディーヴァー「死の教訓」

FBI

(参考)

グロック17、20 シグ・ザウェルP228又は226 

38口径リボルバー(おそらくS&W)

M・コナリー「わが心臓の痛み」「夜より暗き闇」、映画「羊たちの沈黙」
ドラマ「FBI〜失踪者を追え〜」
自衛隊(参考…)シグ・ザウェルP220、64式小銃、89式小銃、MINIMI、62式機関銃、コルトM1911他(いろいろ持ってる…)我がよき友人達他
米軍(参考)

ベレッタM92FS、シグ・ザウェルP226、コルトM4、コルトM16、サコM60、MINIMI、コルトMEU、他

我がよき友人達他
アラスカ州ナイトミュート市警察グロッグ19か26映画「インソムニア」

こうして見ていると、グロック社の採用が多い。また、アメリカでは自衛用にパトカーにショットガン(だいたいが12ゲージくらいのレミントンM870、モスバーグM500、イサカM37、ベネリM3など)を積んでおり、かなり物騒である。また、映画「ダーティーハりー」の主人公のように勝手に(もちろん裁判所の所持許可は受けているはずだが)マグナム銃などを持つ警官もいる。特に刑事に多い。(というよりは、アメリカの殆どの警官は予備の銃としてS&WM649やグロッグ25、SIGP230、ワルサーPPK/sなどを持っている。)

2、保安官、州警察

みなさんは保安官と聞くと西部劇を思い浮かべるだろうが、現在でも保安官制度は存在しており、選挙によって選ばれる。保安官は連邦保安官事務所に所属するのと、郡保安官がある。この連邦保安官事務所は州を越える囚人の護送や、証人保護などを担当し、映画「追跡者」ではトミー・リー・ジョーンズがその囚人護送を担当し、護送機に乗り込んでいる。また映画「イレイザー」では連邦保安官役のアーノルド・シュワルツネッガーが(派手に)証人保護をやっている。郡保安官はシェリフ(Sheriff)とよばれ、郡(County)の保安官事務所にいて、選挙によって選ばれ、その郡の司法権の最高職となる。

州警察は州レベルの犯罪やインターステート(州間高速道路)、地元警察機関の無い地区、州立公園などを担当し、それに州捜査局がある州もある。

つまり、ある事件が起こると、場合によっては市警察、保安官、州警察、州捜査局、それにFBIやATF(アルコール・タバコ・火器局)、麻薬がらみならばDEA(麻薬取締局)が加わることになる。非常に複雑だが、こういう場合は連邦の捜査機関が主導権を握ってしまうことが多いようだ。

3、地区検事、連邦検事

地区検事は、市警察レベル、連邦検事はFBIレベルの事件を扱うようである。

この地区検事、連邦検事は、日本の検察官とおなじでおもに起訴か不起訴かを決め、裁判を行なう。

逮捕状などの請求も地区検事、連邦検事を通して判事に行なうが、州によっては(連邦(郡)大陪審もある)大陪審という集団の許可が必要になってくる。この大陪審は、単なる陪審員と同じで一般市民から招集されるが、弁護士の立会いができないなどの問題があるため、各州において廃止、改善の動きがあるという。(アーサー・へイリ—「殺人課刑事」より)

4、テンコード

アメリカの小説を読んでいてよく出てくるのが無線コードである。特に10−4(了解)はよく出てくる。

この通称‘‘テンコード”は公安通信職員連合会が定めていて、34個あるそうである。(ジェフリー・ディーヴァー「死の教訓」より)
主なものを下に上げておく。(これらは映画や小説などから推測したものです。参考程度にお使いください)

コード意味
10−4了解
10−7待機、勤務終了
10−10発砲事件
10−13応援要請
10−21所在地
10−24自動車火災
10−25〜を呼び出す、(無線を)つなげる
10−26取り消し
10−30状況を報告せよ
10−31麻薬取引
10−33緊急事態発生
10−45(「コード1」がついて)
火災発生、死者あり
10−66特殊作戦
10−67交通規制
10−72容疑者逮捕
10−75ポンプ隊四隊、はしご隊二隊、
救急隊出動要請(消防?)
10−85支援要請(消防?)

実際は各警察ごとでかなりの差があるそうで、またロサンゼルス市警やマイアミ市警では独自のコードを持っている。
・ロサンゼルス市警(マイクル・コナリー「ブラック・ハート」より)
3(緊急走行)
7(勤務終了、休憩)
20(所在地)

マイアミ市警(アーサー・ヘイリー「殺人課刑事」より)
3(緊急事態)
15(応援要請)
29(強盗)
31(殺人)
QSK(送信どうぞ)

ちなみにコード自体は日本にも存在しており、公表されていないが51(緊急走行)、8(警衛対象車両)などがあるそう。
だが日本ではマル追(追跡)、マル暴(暴力団)、マル走(暴走族)、PC(パトカー)、道具(銃)などの略語系が多い。

補足:BOLO(be on look out)について
BOLOとは、全パトカー(場合によっては全州の法執行機関)に流される捜索指令のことで、重要性を示す為に5秒の信号音の後に流される。
流れるのは主に逃走した容疑者の特徴、車の種類などである。


FBI、ATF、VICAPなどはまた今度……

トップに戻る

このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください