このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

夜は短し歩けよ乙女(2017・日本)

監督:湯浅政明

キャスト:先輩(星野源) 黒髪の乙女(花澤香菜) 学園祭事務局長(神谷浩史) 樋口師匠(中井和哉) 羽貫さん(甲斐田裕子) プリンセスダルマ(悠木碧)ほか

<あらすじ>

クラブの後輩である“黒髪の乙女”に思いを寄せる“先輩”は今日も『なるべく彼女の目にとまる』ようナカメ作戦を実行する。春の先斗町、夏の古本市、秋の学園祭、そして冬が訪れて…。京都の街で、個性豊かな仲間達が次々に巻き起こす珍事件に巻き込まれながら、季節はどんどん過ぎてゆく。外堀を埋めることしかできない“先輩”の思いはどこへ向かうのか!? (公式サイトより)

<感想>

四畳半神話大系のアニメ化から6年、森見登美彦がメジャー化するきっかけとなった一冊が待望の劇場アニメ化。

というわけで私ははるばる隣県の都市へ観に出かけたのだった。

監督の湯浅氏をはじめスタッフは四畳半と共通しており、従ってアニメ「四畳半神話大系」の色合いが濃い。劇団ヨーロッパ企画の上田誠が脚本を書いており、戯曲らしさもある。

何より「夜は短し歩けよ乙女」という題意をそのまま生かし、ある一夜の少女の冒険譚、という内容に改変されていたのには驚いた。

原作にどっぷりつかってから見たので、最初は「何じゃこりゃ??原作にあった四季の移ろいが台無しじゃぁ…」と混乱していたが、かえって90分ほどの上映時間ではテンポよくまとまる結果となっていたので今思うとよい改変だった。象の尻が出て来ないのは悲しかったが…。

大阪にある隠れ家バー「深化」が木屋町にあるバーとして登場。2度ほど行った筆者(わたくし)を感激させるなどした。

星野源起用、主題歌アジカンも最初は「サブカル好きはこういうのが好きなんやろ?」って公式に言われている感じがして「うげげ」となったが、見てみると星野源も頑張って演技してたし、エンドロールのアジカンも味わい深かったので最終的には満足した。

しかし、原作では先輩の頭の中に落とし込まれていた気持ちが星野源によって外部に垂れ流しにされるとちょっとげんなりしますよ。「○○エンジン点火」などと言って全力疾走モードに入るシーンとかね。。

パンフで森見登美彦氏が「最初見た時は怪作だと思っていたが今思うと傑作だ」と評しており、さすが作家は表現が端的でうまい。森見氏、作中の乙女のセリフを「彼女はそんな表現はしないと思います」とやんわりたしなめて変えさせたエピソードもパンフに載っており、見た目通りの大人しさながら譲れないものはしっかり守る良い作家だ。

なお乙女役の花澤香菜は芯のある乙女を上手に演じており、流石だった。興味の赴くままふらふらあるく少女のような乙女と、困難に向かっていく強い女性の共存したある種難しい役柄だが、とてもよかった。なむなむ。

最後にパンツ総番長(ロバート秋山)と学園祭事務局長について。総番長、髭面に西郷隆盛のようなガタイで、そんなおっさんという設定だっけ?と思った。学園祭事務局は図書館警察を彷彿とさせるような組織に変貌して書かれており、ここにも四畳半との共通性が感じられる。原作だと気のいい友人という感じだが、映画ではヒールっぽさも出ていた。SF感(四畳半感)が強まるのはこういうところなのだろうなぁ。パンフも四畳半神話大系を見たことを前提に書かれているふしがあるし。

そういえば作中にはボトルキープの名前にしれっと原作者・脚本家・監督の名前が入れられてたり、四畳半神話大系のポスターが出てきたりしたので、ソフト化された際には一時停止しながら鑑賞する楽しみができそうだ。

おわり

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