このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

我らの歪んだ英雄(1992・韓国)

監督:朴鐘元(パク・ジョンウォン)
出演:チェ・ミンシクほか

〈あらすじ〉
予備校で英語を教えるビョンテは、小学校時代の恩師チェの訃報を聞き、葬儀へ向かいながら、30年前の事を思い出していた。ソウルの名門小学校で民主主義の教育を受けていたビョンテは、5年生のとき父親の転勤に伴ない、地方の小学校に転校した。編入先のクラスでは、級長ソクテが君臨し、全ての決定権を手にしていた。クラスメイトがソクテに食べ物を差し出し、試験の答案を代筆したりすることに納得できないビョンテは、あらゆる手段で反抗を試みる。が、ソクテの指導力に甘んじている担任チェの信頼も失い、ついにビョンテは屈服し、ソクテの腹心の部下として優遇されることに心地よさすら感じ始めていた。6年生に進み、若い新任教師キムが担任となる。彼はソクテの独裁ぶりに疑問を抱き、その不正を徹底的に暴いた。罰せられ立場を失ったソクテは学校に火を放ち、行方をくらます。ビョンテがおもむいたチェの葬儀に参列するクラスメイトらの中にソクテの姿はなく、ただ花輪のみが届けられていた。それぞれの胸に、歪んだ英雄の影が浮かぶ。(配給元のアジア映画社 HP より)

〈感想〉
この作品を知ったのは、毎日新聞のコラム(2009年9月15日東京朝刊4頁「発信箱:殿様=玉木研二」)だった。大学時代に知り、大学院進学後その院のメディア教材にこの作品があるのを発見してようやく観賞にこぎつけた。

公務員である父親が郡庁の総務課長として左遷され、それに伴ってソウルから転校した小学5年生のビョンテ。
ソウルでは名門校に通い成績優秀だったのだが、転入先は田舎の学校。不満に思いつつも入ると、転入した5年2組はどこかおかしい。級長であるソクテがすべてを支配していたのだった。ビョンテの親の職業が郡庁の総務課長だと聞くと、近くの席に座らせるソクテ。

このあたり、親の職業が子供の地位に反映されることがままあった母校を思い出し早速憂鬱になる。

新入りであるビョンテは、ソクテの側近に早速ソクテに給仕するよう命じられるが、それを拒否する。理不尽だと思う要求には頑なに抵抗するビョンテはソクテにとって目障りとなり、ゆえにいじめが始まる。ビョンテも、ソクテに不満を持つ数人を映画に連れ出し、食事をおごって懐柔しようとするが、すぐに露見して返り討ちにあう。
頼みの綱であるはずの担任チェはソクテが教室を支配することを容認し、それを利用して教師の仕事を放棄し職員室でサボる始末。
ビョンテは同級生がライターを恐喝されたのを知り、勇気を出してチェに告げるが、校内に張り巡らされたソクテの密偵にばれ、先手を打たれてしまう。チェも「告げ口は悪いことだ。ソウルではそう教わったのか?」などととりあわず、ビョンテは孤立無援となり、打ちのめされる。
さらに女教師のトイレを覗いたという濡れ衣まで着せられ、もう心はぼろぼろのビョンテ。
ソウルに帰ろうと線路際を歩きはじめるが、そこで中学生と度胸試しをするソクテを見る。線路の上に寝そべり、貨物列車がどこまで近づくかを我慢するものだが、早々に中学生が逃げ出し、ソクテは橋梁下に逃れて勝利を得る。ソクテが君臨できる理由の一端が示される。

ソクテのカンニングにより成績も上がらず、とうとう白旗を上げたビョンテはソクテの新しい側近となり、ソクテのカンニングを担任に告げないことでソクテの酒宴に招かれる。

このあたり、もはや小学生離れしているのだが、設定は12歳ということである。

6年生に進級すると、ソウルから若いキム先生がやってくる。成績が悪くてもいいから、真実を話せと説くキム。
チェと異なり真面目に授業も行うので、ソクテの化けの皮が剥がれてくる。
とうとう前期の試験でカンニングが露見し、木の棒でしばかれるソクテら。

ソクテの非行を生徒に告げさせると、次々と生徒が話しはじめる中、ビョンテだけは「分からない」と述べるにとどまるのだった。

このシーンは、力関係の変化を目ざとく悟った生徒達が、新たな支配者であるキム先生に媚びるかのように手のひらを返して告発に走るので、ビョンテの戸惑いがより浮かび上がるようになっている。よく出来ている。

後年、キム先生が国会議員となってチェ先生の葬儀に現れ、当時の教え子たちが胡麻を擦りに行くのもおもしろい。某ヤンキー先生を思い出させるw

ビョンテにずっと変わらず接してくれる、少し頭の弱い同級生が「みんな同じだ」と言い放ち号泣するのも深い。

この作品を見るまでは、クラスを支配してきた級長の不正が暴かれるという、カタルシスに満ちたシーンがあるのだろうと思っていたが、実際は体罰万歳の教員が木の棒で殴りながら自白を迫るのでまったくカタルシスが無い。
こういう作りのお蔭で、作品が凡百の学園物ではなく、政治体制や人間の集団における力関係といったものの寓話として良質な映画に仕上がっている。

DVDは高騰しているが、教育関係者や政治家に是非見てもらいたい一本である。もっとも教員が下手に見て「キム先生、殴りたくて殴るわけではないなんて良い先生だ。わかるわ。」と言って木の棒で武装し始めるのも困るが。。

なお、私の高校のクラスも留年した生徒らが牛耳っていた。各人の学校生活に引きなおして見ると共感する部分も多いのではなかろうか。

おわり

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