このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

埼京線205系、動力車のメンテナンス



*はじめに
KATOのC62と言えば、2007年末にリニューアルされたばかり。
長年愛されてきた、スケールよりかなり大きい旧製品とは異なり、
スケールに忠実で、ディテールも向上した素晴らしい製品に生まれ変わりました。
それとともに、旧製品が中古市場に豊富に出回るようになってきたのです。

・・・とは言え、旧製品の魅力が失せてしまったわけではありません。
デフォルメがうまいせいか、むしろこちらの方がC62らしく見えることもあり、
大柄なボディもC62の迫力を強調していて、サマになるのです。

そんな旧製品・・・しかも樹脂製ロッド、角型モーター、3軸ギア駆動のごく初期製品、
しかもほとんど走行の形跡のない美品、かつ格安品を中古模型ショップで発見した私は、
リニューアル製品が山積みされているのを尻目に、衝動買いしたのでした。


とてもきれいです!ナンバーはレボリューションファクトリーのリニューアル品用を貼りました

*走りが堅いので、メンテを決意
購入時に試走したときに思ったのは、「堅い」ということ。
ややラビットスタート気味で、決して滑らかとは言いがたかったのです。
しかも「シュー」というか「ジャー」というか・・・やや擦れた音を発しています。
私が既に所有していた初回ロットでは、聞いたことのない音でした。

しかし・・・ボディに痛みがなく、モーターが生きていれば、
メンテナンスでかなり復活させることは可能です。
なのでここでは、分解の方法を主に、メンテの記録をご紹介します。

尚、以下の分解方法はあくまで私の方法であり、
言うまでもなく「こうしなくてはいけない」というものではありません。
みなさんそれぞれ、やりやすい方法があるかもしれません。

また、旧製品でも後期のものはロッドが金属製となり、ギアは2軸ですが、
基本的な構造は同じだと思います(持っていないので、正確なところはわかりませんが)

*動輪のギアカバー、先台車、従台車を外す
私の場合、まず車体を裏返して、ギアカバーを外します。
先台車、従台車の固定も兼ねたネジ2本を緩めると、簡単に取り外せます。
C62旧製品の場合テンダーからは集電していないので、
テンダーもこれで外すことができます。

破損を防ぐためにも、早い段階でテンダーは外した方がいいと思います。


先台車、従台車の固定を兼ねたネジを外し、ギアカバー、先台車、従台車を外します。


ネジ2本を緩めるだけで、これだけのものが外せます

*シリンダーブロック、ロッド、動輪を外す
まず・・・動輪とロッドの組み上がった状態を理解できていない場合は、
分解前に写真に撮っておくことをお勧めします。
そうすれば、後で組み上げるときにわからなくなりません。

シリンダーブロック裏のネジを緩め、シリンダーブロックを車体の下方向に引き抜きます。
この初期製品のロッドは柔らかい樹脂製なので、多少荒っぽく曲げても大丈夫です。

続いて、ロッドを動輪に留めているピンを紛失しないよう注意しながら引き抜きます。
車体幅方向に引き抜いて、ロッドセットを全て取り外します。
このときロッドはバラバラになるかもしれませんが、気にしません。
ただ、部品の紛失にはくれぐれも注意しましょう。


左端のネジを緩め、シリンダーブロックを外し、続いてロッドを全て取り外します。

*動輪を外す
ここまで来ると、動輪はフリーになります。
但しまだギアを噛んでいる状態だし、固くなったグリスのせいで、抜きづらいかもしれませんが、
車体の下方向に少しずつ引き抜くと、取り外すことができます。

逆に、簡単に動輪が脱落するかもしれないので、この状態で上下を元に戻すときは注意しましょう。。


動輪を外しました

*ボディと動力部を分離
C62旧製品の分解の中で、これが一番難しいかもしれません。

第三動輪のすぐ横に、ボディ固定用のボスがあるのはすぐにわかります。
ボディとダイカストの隙間に、爪楊枝や小型のマイナスドライバーなどを差し込み、
ボスをずらしてキャブ側を持ち上げます。
しかしこの状態では、まだ分離できません。
決して無理矢理上下に引っ張らないでください。


車体と動力を固定したボス。隙間を浮かせてキャブを上方にずらします。


続いて前方・・・給水温め器の部分を見てください。
ダイカストが、給水温め器の形状ではまり込んでいるのが見えます。

ここはかなりきつくはまっているので、初めて分解するときはびびりますが、
動力部全体を、「後方」に、とにかく強く引っ張って引き抜くしかありません。
強く引っ張るには指をかける場所がなくて苦労します。
力をこめる際には、キャブ屋根、デフなどを破損しないように注意しましょう。
結構な力でダイカストを後方に引っ張っていると、
そのうち「パキ」というような音とともに、取り外せると思います。

ちなみに私はモーターの外側の強固な部分をヤットコで挟み、力を入れています。


給水温め器を模したダイカストが、はまっています。ここがなかなか抜けません。
 
*動力部をばらす
ボディが外れると、小さなダイカストが転がり落ちるので注意してください。
そのダイカストの下には、ウォームギア上の樹脂カバーがあります。
左右2つのダイカストに跨って、きつくはめ込んであるので、
下方から小さなマイナスドライバーなどを差し込んで、こじって外します。

続いて進行方向左手(公式側)にある2つのネジを緩めると、左右のダイカストが分かれます。
このときは、ダイカストの間に挟む樹脂製の絶縁パーツ、ギアをなくさないよう、注意します。

さぁこれで、モーターまで分離できました。
モーターの上下がわからなくならないよう、油性ペンで印をつけておきましょう。


左右のダイカストを固定している樹脂パーツをこじって外します。結構きつくはまっています。
ここまでくれば、あとは写真のネジ2本を緩めるだけ。


ここまできたら、いよいよ清掃です。

*掃除する
まず、各ギアを見てください。
糸くず状のホコリが絡まっている場合があるので、ピンセットや爪楊枝で除去します。

次は、ダイカスト表面に付着している油(グリス)をティッシュで拭き取ります。
通電によるカーボン汚れ、ダイカストの磨耗の粉、劣化したグリスなどで、
ティッシュが真っ黒になるはずです。
特に、動輪の車軸に接して集電している軸受けの部分は、丁寧に拭いておきます。
ユニクリーナーを使うと汚れを落としやすいでしょう。
そしてさらに、軸受け部にはLOCOを塗布しておきました。

また、忘れてはいけないのが、車輪の掃除です。
動輪の車軸は黒ずんでいることが多いので、LOCOを含んだティッシュでよく磨きます。
線路に接する部分(踏面)もきれいにします。
おっと・・・先台車と従台車の車輪も集電に一役買っているので、掃除を忘れてはいけません。


左右ダイカストの軸受け部分は念入りに拭き取ります。
LOCOを塗って、通電性を改善します。

*モーターの話
ここでちょっと[余談ですが、モーターのお話です。
この製品のモーターは、当時のEF70、EF65と同じ角型モーターですが、
私が持っていた初回ロットでは、片軸タイプになっていました。
ところがこの製品は・・・電機と同じ両軸モーターの片側を、
ペンチのようなもので切断してあるのです!

関水が何らかの理由で両軸モーターを使用、切断して出荷したものなのか、
ユーザ購入後、モーターに不具合が発生したものの、
片軸が手に入らなかったので、両軸モーターに交換して切断したのか・・・よくわかりません。
走行の跡が見られないほど綺麗な個体なので、ユーザが交換したようには見えないのですが。

両軸モーターの片側を切断した跡が!

しかも、初回ロットとは、モーターとウォームギア間のジョイントが異なりました。
この製品は簡単なゴムチューブになっていますが、
初回ロットは樹脂を組み合わせたユニバーサルジョイントになっているのです。

うーん・・・比較的近い時期に生産されたものだと思うのですが、
よく見れば動輪のギアの色も違うし(本製品:黒、初回ロット:銀)。。。

謎は深まるばかりです。


左写真が今回の製品。ゴムチューブでウォームギアが接続されています。
右写真の手前が初回ロット。ウォームギアとモーターの間に、
黒い樹脂製のユニバーサルジョイントが見えます。
(モーターの上下の向きがわからなくならないよう、分解の際に油性ペンで印をつけました)

*グリスを塗布
本題に戻ります。

ウォームギアの軸を支える樹脂パーツや、各ギアの溝には、
タミヤのセラミックグリスを少量塗っておきました。
これで音が静かになり、磨耗も減らせるはずです。
尚、先ほど磨いた軸受け部分にグリスが付着すると集電性能を悪くするので、注意します。

*動輪とロッドの組み付け
各部の清掃が終了したら、再組立します。
動力部分は、絶縁用の樹脂パーツを挟むのを忘れないよう。
モーターの上下の向きにも注意します。
しかし、分解のときの逆の手順で組み立てればいいだけです。

続いては動輪の装着。
組立のときは、ここが最難関かもしれません。

第一動輪と第三動輪は同じパーツで、第二動輪はバランスウェイトが大きいので、
間違えないようにします。

動輪のバランスウェイトの位置(角度)が合っていないと、
ロッドとの位相がずれて、まともには走りません。
しかも装着時は動力部のギアに噛み合わせ(回転させ)ながら挿入する必要があるので、
慣れないとなかなか位置が決まらないかもしれません。
ここは根気よく・・・位置が決まるようにするしかないでしょう。

慣れてくると、結構簡単にできるんですが。

動輪の角度が決まったら、私はここで、せっかく決まった動輪が抜け落ちないよう、
一旦ギアのカバーを仮止めしています。
まだこの時点では、先台車、従台車、テンダーは不要です。


動輪の位相が決まったら、いったん動輪ギアのカバーを戻します。グリスはちょっと塗り過ぎか・・・

ロッドは、分解前の写真があれば、そのとおりに戻していきます。
構造さえわかっていれば、さほど難しい作業ではないと思います。
くれぐれもピンの紛失には注意しましょう。

またここで、微妙な位相のズレを発見するかもしれません。
そのときはギアカバーを外して、動輪を挿入しなおします。


もとどおりに組み上げたロッド。

*動力の組立と試走
ロッドが組みあがったら、もう動輪がずれたり抜け落ちたりする心配はありません。
ギアカバーを外し、先台車、従台車+テンダーを装着してから、
再度ギアカバーを装着します。

そしてこの段階で、試走させてみます。
ロッドとギアの位相が合っていれば、ちゃんと動くはずです。
モーターの向きがあっていれば、逆走することもないでしょう。
また、清掃とLOCO、グリスの塗布の効果が、実感できるはず。

私のこの車輌も、堅かった走りが嘘のように滑らかになり、低速が利くようになりました。
擦れ音も少なくなっていました。

ボディの組み付けと完成
最後にボディを取り付けます。
分解のときとは逆に・・・先にダイカストの給水温め器部分を差し込んで、キャブ側を入れます。
ボスがうまくはまると、パチンという音とともに、固定されるでしょう。

これで完成。
旧い製品だからと言って、卑屈になることはありません。
ときどきメンテナンスをしてあげれば、まだまだこの先も、活躍してくれるに違いないのです。


左が初回ロット、右が今回メンテナンスしたもの。初期製品は黒光りした艶が綺麗なんです。






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