その1
*すっかりエンドウマニア
エンドウと言えば16番の老舗メーカー。
そのエンドウがNゲージに参入していたのは、もう20年も前のことになります。
ことあるごとに書いているとおり、(ディテール以外の)製品の品質、
特に走行性は、プラ製の他社製品にはない、すばらしいものがあります。
それに気づいてからというもの、エンドウの虜になった私、
少しずつではありますが、エンドウ製品を増備してきました。
そしてついに・・・・ネットオークションでEF57のジャンク品を入手しました。
もちろん美品を手に入れられればそれにこしたことはないのですが、
美品ともなると、希少性のためか、当時の発売価格以上の値がつくこともしばしばなんです。。。
しかしこれは、片側デッキ紛失、片側パンタ上半分紛失、カプラー折損、塗装剥がれという状態のためか、
わずか数百円という価格で落札できました。
購入時の姿。片側デッキ部紛失、片側パンタ上半分紛失、塗装一部剥がれ、
「はと」マーク貼りつけ、カプラー折損という悲惨な状態。
手に入れてみると、幸いにも動力は健在。ぎこちない動きでしたが、なんとか走りました。
屋根上モニター&ベンチレータ部の一体ダイカスト部品(!)がきれいな状態なのも、ラッキーです。
エンドウEF57はここが弱点で、このダイカスト部品が劣化、変形した個体をたまに見かけるのです。
左写真:PS16らしきものの流用パンタは、片側上半分がありません。
右写真:変形を免れたダイカストパーツ(色が剥げて灰色が露出しているところ)
*再生するぞ!
こんな状態のものを再生させるとは、やっぱり物好きではあります。
しかし・・・どうすれば直るのか、最近のパーツを流用できないか、弱点を克服するにはどうしたらよいか、
いろいろ考え、試行錯誤することが楽しいのです。
検討した結果、以下の作業をすることにしました
・走行性の復活
分解して徹底的に清掃すれば、ぎこちない動きは復活するはず。
エンドウの動力機構は、単純な構成ですが信頼性の高いものなので。
・弱点の改善
「甘いディテール」「幅広車体」「超腰高」という、典型的なエンドウの特徴(弱点)を兼ね備えた同車、
かつて同社のEF58で行ったように、車高を下げ、 銀河モデルやKATOのパーツを利用して、
細密化することにしましょう。
・破損部の修理
KATO製EF57の先台車パーツが手に入ればいいのですが・・・
紛失したデッキを自作するとなると、手すりの製作が大変そうです。
パンタは、KATOのPS14に交換できるよう、パンタ台周りを加工しましょう。
*走行性を復活させるのは・・・お掃除が基本
まずは動力の完全分解です。
分解しました
ボディと下回りを接続する、2本のネジを緩め、上下を分解。
左右ダイカストを留めるネジを緩め、動力部を分解。
取り外した台車の裏にあるネジを外し、台車もバラバラにします。
このとき気づいたのですが、デッキ部パーツは、先台車にゴム系接着剤で固定されているんですね。
ちょっとオドロキです。
台車を分解してみると・・・案の定、ダイカスト部分は真っ黒、ギアには大量の糸くずが絡まっていました。
電気接点はユニクリーナーやペーパーで磨き、ギアに絡まった糸くずを、爪楊枝で取り除きます。
車輪の汚れも、ユニクリーナーで拭き取ります。
ボディ側のダイカストも汚れを拭き取り、モーターの接点も磨きました。
ここまでやって動力を組み直してみると・・・おお!低速から滑らかに走り出しました。
思ったとおり、汚れていただけです。
まずは走行性復活、大成功です。
尚、一軸に付いているゴムバンドは、やや緩いかなとは思ったものの、
予想していたような劣化は見られなかったので、そのまま利用しています。
もし劣化していたら、KATOの電機用が使えると思います。
バラした台車。糸くずを取り除き、ダイカストや車輪をピカピカに磨いています。
*エンドウの弱点を改善
続いて、エンドウの弱点を改善することにしましょう。
スケールより幅の広いボディの修復は困難ですが、
甘いディテールの改善や、高過ぎる車高の改善は可能です。
①.ボディの分解
ボディにはめ込まれている窓ガラスパーツ、側面ベンチレータパーツを外します。
側面ベンチレータパーツは、窓の一部を兼ねており、
ダイカストと車体の固定、ダイカストとボディの絶縁もになっている、重要なパーツです。
さらに屋根上の避雷器とダイカストのパーツを取り外し・・・・って、
このとき知ったのですが、ダイカストパーツは・・・なんと!
真鍮を削り出した避雷器で、ボディに固定されているんです!
ダイカストの上から差しこまれた避雷器が、屋根の裏で潰されていて・・・全く抜けません!
仕方ないので避雷器をペンチで摘み、グリグリと動かしていたら・・・
しばらくして根元からパキッと折れて、ようやく取れました。
そのとたん、ダイカストも外れました。
エンドウらしい、といえばらしい構造です。
(これで少し屋根が変形しちゃったけど・・・)
これが屋根上の付いているダイカスト部品。
両端の穴に通る避雷器で、屋根に固定されていました。
②.標識灯を削り落とす
正面標識灯は、甘いプレス表現で、全く実感的ではありません。
なのでこれを、銀河モデル製パーツに交換することにしました。
プレスが甘いので、表面からヤスリがけしても穴が開いてしまうなどということはありません。
また、あちこち剥がれている塗装は、最後に全塗装することにしたので、
塗装を気にすることなく作業しました。
余談ですがこの塗装・・・・塗膜が劣化してしまったのか、下地処理が良くない個体なのか、
艶もなく、爪で簡単に塗装が剥がれる状態になっていました。
私の所有する他のエンドウ製品は、極めて強固な塗膜を持っていて、
今でも綺麗な状態を維持しているので、不思議です。。。
標識灯を削り落としたところ。パンタ台の狭さも気になる。。。
③.車高を下げる
エンドウの電機の最大の弱点は、車高でしょう。
EF58を加工し
たときは、ダイカストを削って大変な目にあいました(^-^;
なので今回はダイカストを固定するボディ側・・・側面ベンチレータ部品を削ることにしました。
しかしこれも結構厄介・・・このパーツが、相当に硬い樹脂でできていて、
削るのも切るのも大変だったのです。
無理に折り取ろうとしたら、変なところで折れてしまい・・・修正に時間がかかってしまいました。
しかも、EF58のときのように、簡単には車高は下がりませんでした。
まず・・・ダイカストから飛び出ているモーターが、屋根に干渉しているのです。
EF58の場合は、この部分がモニターの膨らみで逃げられたのに、
EF57はモニターをダイカストで表現しているため、屋根が平らだからです。
そこでボディの屋根に、モーターを逃がすための穴をくり抜きました。
このとき真鍮ボディの弱点が露呈・・・加工の際に屋根が波打ってしまったため、
その修正にも手間取りました。。。
モーターを逃がすために屋根に穴あけ
しかし・・・これでも車高は下がらずです。
ダイカストの両肩が屋根に当たっているのかなと思い、
ダイカストを軽くヤスッてみたものの・・・ほとんど効果がありません。
そこで、どこが当たっているのかを徹底的に調べてみると・・・
なんと、ダイカストの「ヘッドライト点灯パーツがはまる部分」と、
ボディの「パンタ台の裏側部分」が当たっていることに気づいたのです。
パンタ台は、強度を持たせるためか、一枚の板を曲げて作られていて、
屋根表面に出ている脚の部分は、屋根の裏で一枚の板から伸びているのです。
また、ダイカストは、EF57よりも先に発売されたEF58のものをそっくり流用していて、
EF58のオプションだったヘッドライトが付けられるようになっていました。
この両者が接触し、車高を下げられなくなっていたのです。
EF57はヘッドライト点灯は不可能な構造なので、
オプションパーツを差しこむ部分を折り取ってしまうことにしました。
また、それでも一部がパンタ台裏と干渉したので、さらに切削しました。
ここまでの苦労の結果、ようやく1mm強だけ、車高を下げることができたのです!
左写真:EF58の動力(奥)とEF57動力(手前)。
右写真:動力を固定する樹脂パーツを切除、屋根に穴開け、ダイカストを切削しました
*KATO製EF57との比較
「たった1mm強の車高ダウン?」・・・と思うなかれ。
比較のため仮組みし、KATO製品と並べた写真をお目にかけます。
撮影に当たって、欠損パンタの上半分を永大ED75から外したもので代用、
屋根上ダイカストパーツをゴム系接着剤で仮止めし、KATOの避雷器も仮付けしています。
欠損していたパンタの上半分は、仮に永大ED75のものを仮付けしておきました。
パンタ台の幅があまりにも違うKATOのPS14をどうやって付けるか、悩むところです。。。
写真で一目瞭然、エンドウEF57の車高は見事に下がり、
KATOの方がむしろ腰高、と言えるまでになったことがわかると思います。
高さとしては、これで充分でしょう。
(改造前の比較もしておけばよかった。。。)
エンドウのこの動力は、台車枠のディテールがやや小ぶりで、車輪の下の方に付いています。
なので台車とボディの隙間が広く、実際よりも腰高に見えてしまうという弱点もあります。
この修正はかなり困難なので、さっぱりと諦めました。
その代わりに、横から見た時に目立つダイカストを、黒く塗装しようと考えています。
左写真:左がKATO、右がエンドウ改。
エンドウの車幅の広さがよくわかりますが、車高はむしろエンドウの方が低いくらいです。
パンタ台の幅が狭すぎるのも気になります。
右写真:手前がエンドウ改、奥がKATO。車体裾は、エンドウの方が低くなりました。
言うまでもなく、上がKATO、下がエンドウ改。
KATOは例によって長め、エンドウはEF58動力の流用。どちらがスケールに近いのかな?
*残った作業は、難関ばかり・・・
さて、今回の加工はここまでです。
KATO製品と比べて改めて強く思ったのは、パンタ台でした。
ドーンと前に突き出した、迫力あるパンタ台がEF57の持ち味なのに、
エンドウのそれは既存のパンタを流用したため、幅が狭すぎます。
これでは全くEF57に見えません。
KATOのPS14を装着することを前提に、パンタ台を作り直さなければダメでしょう。。。
それに、最大の難関は、やはりデッキです。
踏み板の部分はプラ板で作れますが、問題は複雑な手すりです。
こんな細かいモノをハンダ工作する自信はないので、KATOのパーツを気長に探すか、
細くてしなやかで加工しやすいな素材を探して、試行錯誤するしかないでしょうね。
・・・ということで、完成はいつになることやら。。。