(2004年9月11日)
*前置き・・・(自己満足の記録なのでどうぞ下記、本題!!へ)
Nの世界に初めて足を踏み入れた時の一番の違和感は、
やはり車輌の端に付く世界基準の大きなアーノルトカプラーでした。
しかしこのカプラーは、自動連結は勿論、オプションを線路に装着すれば、
下に伸びたピンを板が上方に持ち上げ、遠方開放操作まで出来るという大変優れたものでした。
Nメーカーは、その機能に加えて、開放した車輌を任意の位置まで押して行き、
そこで放置するという付加価値を兼ね備えさせました。
1970年代後半に発売されたDD13が初めであったでしょうか。
カプラーが上がると、その位置でカプラーの根元の金属棒がカプラーポケットの一部に引っ掛り、
上がった状態で固定されます。
ナックル前方にぶら下るL字型のピンが相手側車両のアーノルトカプラーの掻き取り部を避け、
上昇した形態を保したまま任意の位置まで開放したい車輌を推進、そこで逆転、引き離すと・・・
今度は相手のアーノルドカプラーの掻き取り部にL字型のピンが当たり、カプラーが元の状態に下降する・・・・
などという、かなりシビアな構造に改造したKATO。
ちょうど同じ時期、EF81が初めであったか、マグネットの力で上方に動くストロークを持たせ、
変形させたピンが開放した車輌のカプラーの上に乗り、推進・車輌を開放するTOMIX。
左:KATO UDカプラー 右:TOMIX Mカプラー。
簡単な構造のTOMIXに対して、KATOは根元の金属棒がポケットに引っかかり上昇を保持し、
機関車が離れることで相手側カプラーの掻き取りにピンが当たって下降するシビアな構造。
この事実は使い勝手の差に反映か?
この勝負、開放する工程に電磁石を使用したKATO製はその操作範囲が非常に狭く、
当時の動力では車輌を任意の位置に持ってくるために線路状態、集電状態が要求されました。
その電磁石はレイアウトボードの下にしかつかず、
すぐに発売されたUNITRACKには装備されなかったと記憶します。
しかも当時精度の悪かった他社製アーノルトカプラーには対応できませんでした。
対してTOMIXは構造が比較的簡単で、開放も永久磁石となっており、
組み線路にも開放用線路があって御座敷運転での対応も可能であった為、
未だに電機などにその機能は組み込まれ、継続されています。
しかし、カプラーの首を高く持ち上げる為に、スカートの掻き取り部の形状を凸型にしなくてはならず、
今となってはTN化したときの見た目を損なってしまっています。
さて、このような発展を続けたNのア−ノルトタイプカプラー。
KATO、TOMIXが付加価値をつけ非常に機能的に優れたア−ノルトタイプカプラーを出した裏で、
その数年も前に外観的にも機能的にも、より以上の物を兼ね備えたカプラーが発売されていました。
*現在もマグネマチックカプラーとして製造販売が継承されてるケーディーカプラー
このカプラは上下の動きが全く無く、左右に動きます。その動きは現実的で形状も実感的。
HOの精密な機関車などにこのカプラーが装着されていると、全体の引き締まり感に舌を巻きました。
製品のラインナップにはN用もあり、科学教材社刊の「Nゲージ」に、装着方法も記載されていました。
「Nゲージ」誌面の一部。さすが子供の科学の別冊。 説明も図解・写真入りで懇切丁寧。
所有する機関車に取り付けることが出来る!!
1970年代の初頭に受けたこの感動はすぐに行動に移り、高価なカプラーキットを即購入。
この子供の科学の別冊をマニュアルとして、当時のEF70の台車を共有する、
旧EF65P型の台車に取り付けました。
既製品への加工は、恐らく生涯初めてであったのでは?と思います。
台車ギアを保持するダイカストのスカートに伸びるカプラー保持部を切削するために、
どの位の時間と手の豆を作ったか。。。
小学生の涙ぐましい努力の中、ダイカストを折るなどの事故もありましたが、
広げたスカート開口部の歪み等どこかに追いやってしまうかのように、
苦労した加工による完成後の姿は素晴らしく、まだ所有する車輌が数両の時、
全ての機関車や貨車、客車にこのカプラーを取り付けたい!と思うのでした。。。
しかしその欲望もさすがに贅沢な考えで、
当時の高価なケーディーカプラーの連続購入は出来ませんでしたが。。。。
*KATOのオプション化
時は過ぎ、80年代になって、このケーディーカプラーの代理店販売(?)をしていたKATOが、
簡単な構造でNのカプラーポケットに組み込めるように改造したものをOEM(?)し、
オプションの一部として販売しました。(?は曖昧な記憶なので間違いだったら御免なさい。)
このオプションは価格も若干手頃となり、
全ての機関車・貨車・客車に装備する計画を実現できる希望が沸いてきました。
EF651000番台ではオプション対応の為、スカートのカプラー取り付け口が広くなった程。
KATOの力の入れようにもかなりの物があったかと。。。
そして。。。。
まずは自分も当時リニューアルされたC50にケーディーカプラーを組み込みました。
対する客車は手持ちのスハ43。
C50のテンダー側、スハ43の片側のみをケーディー化し、早速お座敷運転開始です!!
その頃、我がお座敷列車の軌道には、最新鋭のUNITRACKがおごられています!
枕木からバラストまで茶色いモールドのその軌道は、ローカル色の臭いを漂わせます。
その軌道の上を、アーノルトによって連結された3輌編成を
確実にC50・スハ43間のケーディーで連結された機関車が牽引しています。
素晴らしい!
蒸気には想像以上に良く似合う!!
そして当時オプションで発売されていたUNITRACKのマグネット付き線路上では
見事に開放・DU操作が出来、将来のヤードの建設の夢などが膨らみます!!
*不具合の発生
しかし、牽引している連結部分のカプラーを横から見ると、
ナックルが水平でなく、上下方向に互い違いになっていて、
わずかな引っ掛りで客車が牽引されているではありませんか!!
これではいけない!と我が鉄道ではスタンダードゲージまで購入、メンテナンスに投入しますが、
Nのサイズのナックルに続く細い首(?)では、
装着されるカプラーポケットの僅かな歪みでナックルがずれ、
少しの衝撃にそのズレが大きくなってしまいます。
本を数十冊も駆使して作られた高架の軌道や、じゅうたんの切れ目などに架かる段付きに近い軌道では、
哀れ、走行中の自動開放・・・機関車のみが「い〜って行って」しまうのです・・・・
前述したEF651000番台のカプラー周りを大きく掻き取られたスカート形状が継続しなかったのは、
見た目の問題か、この自然開放が問題になったのか。。。
*やっと本題!!
ケーディーカプラー(現マグネマティックカプラー)の走行時の自然開放を改善する!!
こんなに良い製品もNのような小さな世界では
走行中に開放してしまうという欠点を持った愚劣な製品なのか。。。。
KATOやTOMIXがアーノルトで対抗する中、
形状と機能を兼ね備えた製品が思うように機能しないのは非常に惜しい。
なんとかならないかといった考えが使命感のように頭を巡ります。
時は1985年頃だったでしょうか。。。
・横に動く構造が縦にずれる。
・縦のずれを抑える。
・お互いのナックルが上に行かないようにする。
・・・連結されたナックル同士で互いをロックしては?
互いがロックすれば両側共に上方へのずれは無くなり、ナックルは水平を保ちます。
では目立たぬようにロックするにはどうするか?
お互いの相手方ナックルをお互いのナックルの中でロックするには如何ようにするか。
見た目を考慮すると、カプラーの裏側のみでその機構を考案せねばなりません。
対象部位が決定したところで、当時検討したの下の絵です。
当時検討した絵。暇だったんですね〜・・・
こうして絵にすると、お互いをロックする部位はナックルの先端にしか無いことがわかりました。
お互いのナックルの先端裏側に設けた突起が、走行と同時に相手のナックルの先端の下に入り、
カプラーの取り付け部の歪みによってナックルが上下にずれる現象を互いが抑える。
作画では中々理に適っています。早速下記の様に実験しました。
突起はプラ片の接着も考えましたが、強度的にも作業的にも今一つでしたので、
・ナックルの根元付近の肉厚部に0.3mmの穴を開け
・L型に曲げた真鍮線より腰の強い0.3mmの洋白線を差し込み、突起の役目としました。
この位置は互いにロックをかける角度を産み出す最良の位置で、
線材を差し込む事で調整も可能となりました。
・差込み調整後は抜け防止に微量の瞬間接着剤を使用。
取り付け穴はカプラー上面に貫通はしていません
絵では上手く行きそうなこの構想も、現実にはどうか?
当鉄道の試験車輌に選ばれたのが、車重の軽い2輌の関水金属製タキ3000です。
両車は片側のみケーディー化され、お互いがケーディ同士で連結。
そして手持ちの多くのトレーラー、PC.FCそしてDCを繋げた30輌もの混合編成に組み込まれ、
あらかじめ用意された状態の悪い軌道を牽引されます。
組み込まれる位置はロコ側、編成の中程、後端の3パターンを課せられました。
その結果は、走り始めると同時に判明します。
・どの位置に連結されようが
・どの状態の軌道状を通過しようが、
牽引される間に於いて、互いのナックルはガッチリと噛み合い、上下のずれは皆無に等しくなりました。
状態は当初の計画以上の結果を実現させてくれたのです。
左上:進入 左下:接触
右上:連結 右中:加速 右下走行中
関係ないけど・・・タキ3000の床板上滑り止めの模様。恐ろしく良く表現されている。
DD51からオーバー表現になったのが残念。
走行時カプラーを横から見た状態。多少のずれも牽引されるとがっちりと噛み合わさる
*時は流れ。。。
発展したNの世界では、ビデオがVHSとベーターに別れたように、
TOMIXとKATOが形状の優れた独自のTN・KATOカプラーを開発し、対立してしまいました。
国際規格を実現したKATOの思いも、現在の競争社会ではどうする事も出来なかったのか。。。
機能性を考えるとKATOカプラー、車体のグレードアップにはTNカプラー、
とユーザーの選択範囲はある意味で広がり、
LM328iはKATOカプラーを優先させながらも、反対側はTNカプラーというように、
ここ数年に増えた車輌の走行に対応させています。
自分はTNカプラー用の編成にはTNを履いたロコ、KATOカプラー用にはKATOカプラーを履いたロコ、
といった具合に考え、KATOカプラーとTNカプラーを2つ持つ、
編成の牽引側のカプラーで編成への対応をしていますが、今後どのように方向が変わるか分かりません。
そんな中、KATOカプラーは現マグネマティックカプラーと連結が可能。
まだまだ自分自身も自動開放機構の良さの有る、旧ケーディーカプラーの機能は、
見捨てる事が出来ないのです。
今回の「20年前の考案」に関しては、
・機関車用のばかデカイKATOカプラーにはロック機構が邪魔をして連結できないのでは?
・重連運転をしたときに速度の違う動力の前後へのズレが生じた時にこのロック機構は対応できるのか?
・機関車用オプションのマグネマティックカプラーには、
線材を突き刺す為の0.3mmの穴を開ける部位が段付きになっているようで、
果たして穴を開けることが出来るのか?
・・・等の問題点を抱えていますが、まずはその昔、
小さなお座敷鉄道での大変効果のあった事例を報告致しました。。。。
このカプラーは半世紀も前?に、贅沢なモデラーの夢を叶えようと苦心して開発された、
ケーディと言うメーカーの思いが滲み出ています。
是非、Nの世界でもHO同様に広く使われている事を個人的に望みたいのです。。。
*応用として
LM328Iから、現KATOカプラーについても走行中の自然開放事故のケースが多い、
との報告を受けました。
この応用が利かないか?
・KATOカプラーの特徴
横移動のストロークをナックル内で生み出しています。
このストロークがある為に2軸貨車等曲線によるカプラーの外への膨らみにも十分に対応する。
KATOが、TNカプラーのようにディテールを重視しなかった理由が想像できます。
形状をそこそこに自連カプラーの良さを十分に模型に応用、
アーノルドカプラーを小さく連結間を狭めながらも走行第一のバランスを保っています。
・KATOカプラーのロック機構
その特徴から、上記したケーディカプラー(現マグネマティックカプラー)と同箇所に線材を差し込んでも、
カプラーの横移動が大きいので、ナックルは設けた線材をすり抜けてしまいます。
ケーディーと同じように調整するも横移動が大きく、まるでロックしない
従って、線材の位置を変更しなくてはなりません。
ケーディカプラーに対して肉厚なKATOカプラーは、差し込み箇所を選択する位置が広く取れ、
ナックルを掴むハンドの部分を選択しました。
ここに線材を差し込むことにより、一度連結すると、TNカプラーのように簡単には開放しなくなります。
開放時は、ナックル同士強く押し付けると上下にすべりはずれます。
実際の走行ではこのような状態にはかなりきついS字しか想定できず非現実的なので
今回試した位置はロック機構として妥当のようです。
左:KATOカプラー用に設けた位置。
右上:連結状態
右下:開放時の取り扱い。ナックルを押し付ける
・ロック機構を設けたケーディ(現マグネマティック)とKATOカプラーの連結
KATOカプラーの特徴は軌道上でケーディ(現マグネマティック)カプラーとの共存が出来る事。
今回の実験に使用した2種類を連結させると、
お互いに設けた線材によるロック機構がバッティングします。
先にも書いたようにKATOカプラーは肉厚。
KATOカプラーの方は線材をナックル内の真ん中までの位置でカットすれば対応できると考えます。
左上:進入 左中:接触 左下:挿入
右上:連結 右下:裏から見た連結状態
ご覧の様にKATOカプラーに設けたロック機構の線材が長いと、
ケーディー側の線材の中側に入ったりして連結しない
車両を持ち上げても、まるでTNのようにがっちりと。。。
*最後に。。。
HG仕様と謳って高価格のTOMIX製品。その作りこまれた製品は素晴らしい。
マイクロエース製品は、
前身のしなのマイクロがマイクロエースと社名変更した時に製品化した10系客車他、
プラ製品はテールライト付きなのに安価な設定で、ロコも他社より安かった。。。
現行の中国生産体制になって発売されたD51シリーズも、
当初は安価な設定だったのに・・・今では高価になってしまっています。
しかし、多種・少量の製品群は確実にNの世界に花を沿え、ブランドとして確立し、
乱れのない塗り分けや、緩衝材とこすれて塗装が剥がれるのを防止するために牽かれるビニールなど
動力、形態、その他の進化・発展は素晴らしい。
対してKATO製品に関しては、
安い価格、形態・ディテール・走行性を追求した製品。
Nを開発した時に、この世界の諸先輩達の考えを基本とし、
日本の居住空間に走らせる事を前提に繊細なディテールをも確立。
その基本を崩さぬように、現状に至っていると思います。
今後、他メーカーの戦略に対してどう展開するのか。。。
実に30数年前からKATO製品のお世話になっている自分にとって、
基本は崩して欲しくない反面、常に先端を走って完璧な製品を送り出して欲しい。。。
ケーディーカプラーにはメーカーに
今回の報告する部位に、板状の成形を加えて改良を施して欲しいと長年思っていましたが、
今回LM328iからの指摘でKATOカプラーとの共存を検討すると、線材での対応しか考えられません。
まだまだ機関車用の大きなKATOカプラーとの検討もしなくてはなりませんが、
ケーディー(現マグネティック)とKATOの基本概念が集約されたKATOカプラー共に、
当鉄道は走行時の自然開放での事故を、まずは以上のように改善しており、
また解決して行きます。。。。!!