ローカル駅セクション
*マイクロエースのEF641000は・・・
1980年、旧型電機の置き換え用として国鉄ラストの新造直流電機が登場すると、
EF64の1000番台として、専門誌の紙面に華が添えられました。
私的には0番台とはかけ離れたその容姿についた型式に、疑問を感じていたものでした。
中古で手にした正面作業灯の無いマイクロエース1980年製
当時Nの世界では、しなのマイクロを有井が吸収した(旧)マイクロエースという新生メーカーと、
0番台を発売していたTOMIXがこの国鉄新型電機を製品化しました。
今では身近に感じるこのロコも、当時は使用地区が遠い(上越線)せいか・・・
あまり興味の無い競作だったように感じます。
しかし店頭に並んだそれは、TOMIXは0番台をそのまま1000番台に改造したような設計に対し、
旧マイクロエースは一回り小さく見えてしまうとは言え、
平らに近い屋根など非常に実機に忠実で、興味のある出来だったように記憶しています。
中でも「金属性パーツ使用!」と言う、何なんだろうかと疑問に思ったキャッチフレーズ。
当時ほとんどのメーカーが車体と一体成形で表現していた避雷器に、
銀河モデルが販売していたパーツと同様に、挽物製のパーツを使用していると言う事。
この一筆に対し、パーツ自体のディテールの乏しさの方が先に鼻に付き、
「金属製パーツ?なんか馬鹿にされていないか・・・・?」
・・・とキャッチフレーズが気に入らなかった一輌です。
その後、KATO等老舗メーカーが軟質プラで正確なディテールを備えた避雷器パーツを製品に別付けし、
この製品のセールスポイントの挽物パーツは、
N繁栄期の古き良き時代の、一つのニュースだったのかもしれません。
90年代に入るとマイクロエースも復活し、そのラインアップには、
全く当時同様の外観をもち(今風に正面テールライト横の作業灯の追加はありましたが)、
動力を変更し、価格の跳ね上がったこの製品が加わりました。
(台車枠は新製なのかしら?)
そして・・・避雷器パーツは当時そのままの物がついていて、苦笑してしまいました。
しかし、自分にとっての「思い」は、1980年代に発売されたこの製品の方なのです。。。
*運命的な出会い
そんなことも一切忘れていた2006年1月、中古屋でこの製品に出くわしました。
・・・と同時に過去の記憶が蘇ります。これは懐かしい!!
・動力不調
・正面に汚れ
この2つの注意書きに破格な値段、見るとナンバーは未使用。
車体は非常にきれいなのに片側正面クリームの部分にヘッドマークを装着したと思う、
両面テープの糊の残りが付着しています。
これなら汚れを取ってしまえば新古品でしょう!
何でこの製品が当時の1/4強の価格なの?
今では近くの路線で重連で貨物を引っ張り走る身近な存在だし、
すぐに購入を決意して、店内で試走を開始しました。
ブーン・・・
モータの唸る音にも拘らず、ビクともしないじゃん。
フル電圧に達しても、線路をボッコンボッコン叩いても
唸る車体を押しても突いても・・・ビクともしない。。。。
しかし価格の安さに、そんなことは全く関係なく、レジに並んでしまったのでした。
*不具合の確認。。。
持ち帰って手にするや、当時の製品にしては大変良く出来ている事に感服します。
同時期に生産された同社のEF71・ED78の正面窓周りに感じた、
Hゴムと一緒に正面窓ガラスも陥没すると言うことは無く、
窓ガラスと車体の面一性も当時の製品としては決まっていて、大変いい感じです。
「動力を早く修理したい!」と気持ちがはやったものの、いったん箱に収めようとすると・・・
なんか変。
片側の台車がスムーズに収まってくれません。
カプラーが下を向き、首をかしげた台車が、
ギアが噛んでいるのか固着し、正常な状態に戻ってくれないのです!
「おいおいっ!・・・・」
これには絶句・・・
上:ボディを外しても台車のギアの噛み込みはビクともせずに固着。
下:動力を分解。その構造はスプリング状のシャフトと言い、エンドウ製に酷似
*調査
まずは分解してみました。
この製品は当時のマイクロエース製EF71・ED78のように、
屋根上のパネルを外すと取り付けねじが現れる。。。というような複雑な構造でなく、
オーソドックスに正面窓ガラスパーツの側面窓裏の爪が、
動力ダイカストの裾にはまり、保持する構造でした。
しかしその爪がかなり分厚く、車体を広げるために使用した爪楊枝を深く刺していくと
車体からピキピキという音が聞こえてきます。。。
ヒビは確認できませんでしたが、やっとの思いで外れたボディ。
車体を固定していた爪は、次回メンテナンスの為に薄く削っておきました。
上:ピンボケだけど・・・0.5mm以上は突き出た爪
下:片側で1mm近くボディを開かないと分解できない。。。
ギアが噛み込んだ状態のこの動力は、ギアの山の潰れ・変形・装着違いなどが考えられ、
動力は台車パーツを含め全て分解してみることにしました。
まずは動力・・・モーターからウォームに伸びる、一部スプリング状のシャフトを持つ構造は、
とてもエンドウ製に似ています。
心配された動力側のウォームの山には全く問題が無く、
台車を外した状態で組み上げ通電すると、元気にモーターが駆動することを確認します。
続いて台車。
台車単体ずつを分解前に手で押して転がしてみると、
片方の台車が・・・ギアが引っ掛かるのか全く転がりません。
問題は片側の台車であることが判明したので、すぐに事は解決すると思いました。。。
ところが!
・分解して組みなおしても状態は変わらず
・スパーギアの装着位置や向きを変更しても状態は変わらず
上:台車を分解し、再度組んでも同じ。
下:右側ギアのように取り付けをひっくり返してみても同じ。
そこで、ギアの山を確認する為に、車輪までも分解する事としました。
どこかのギアの山が
・変形し片寄っている?
・バリ等が残り長くなっている?
・・・・・・はずだ!
しかし、自分の想像した原因をあざ笑うかのように、全て否定されてしまいます。
分解した車輪の間に表現されたギアを含め、全てのギアを重ね合わしても、
変形などは全く確認できません。
なのに・・・組み直して転がすと、やはり片側の台車のギアが噛みこんでしまいます。
・・・・・・どのギアが悪さをしているんだ!
車輪のシャフトに成型されるギア。
何度車輪を外してして確認したか。。。
解決したとしても車輪の空転が発生しちゃうかも!!なんちって。。。
*もっと調査
次に・・・問題の台車上方の動力ウォームに当たるスパーギアを、
指で押して動かない状態にし、ギアの歯に塗料で印を付けてみました。
反対側に押して、やはり止まってしまう位置にもギアの歯に塗料で印を付けてみました。
前進方向後進方向共に噛見込み止まった所に印をつける。。。
そして2・3度前後にウォームに当たるスパーギアを指で動かすと
完全にギアが噛んでしまい車輪は動かなくなってしまいました。
指で転がしても各歯の並びはとても綺麗なのに・・・・コンマ数ミリの歪みが悪さをしているのか!?
(実はこの写真には、この問題の原因箇所が写っています・・・)
再度台車を分解し、車軸のギアに動力を伝える3つのスパーのみを転がしても、全く問題ありません。
なのに組み付けると・・・
一度動力ダイカストのウォームと噛み合うと、このロコの足回りはびくともしなくなるのです。
完全に途方に暮れ、正常に動く台車と噛み込む台車を眺めていました。。。
そして組んだ台車を裏側にした時・・・この問題は一挙に解決したのです。
*原因が解明!
台車の底には車輪のギアが露出する穴が、一軸ごとに開いています。
正常に動く台車と噛み込む台車を比べると、
明らかに・・・噛み込む台車は穴とギアの間の隙間が無いのです!
写真左・・・正常(右)台車と不正常(左)台車。台車後方の穴とギアの隙間に注目です。
不正常な台車はギアの歯が穴に当たってしまっています。
写真右・・・裏から見た穴にギアの歯が当たっているところ。(赤矢印)
何故このような寸法の差が発生するのか・・・?
台車枠は同じパーツが使用されていると思っていましたが、
左の写真を見ると同じ方向に写真をとっているのに社名の刻印が逆になっています。
2つの台車枠は、別パーツだったのですね。
この問題はギア同士の噛み込みではなく、台車の穴にギアが引っ掛かっていたのでした。
何と言うことでしょう。。。!!
苦労して比較した労力は、いったい何なのでしょう。。。
今の製品では考えられない、とても奇妙な知恵の輪のような・・・
不良である事がまるで正当であるかのような、当時の製品。
「この謎が解けて、初めてあなたはあたしのオーナーになるのです。」
とでも言っているかのような、思い出の製品との出会いと安堵感に包まれた瞬間でした。
べーろぃ〜〜〜〜〜〜〜。
*修理と調整は・・・簡単
原因が判明すれば、後はその患部を手直しするだけです。
台車枠の穴を、ヤスリで広げて組み付けるだけでした。
精密ヤスリをあてがい、20回も往復させれば抵抗の無い転がりが。。。
ついに開放された車軸のギアは軽快に転がり、
ひねくれた性格のロコが急に素直になったように感じます。
*今後
走行性は、エンドウ製と同様の構造でありながら、独特の「雑音に近い」周波数を奏でます。
走行中に、若干の振れも感じさせます。
これはギア比や精度等の問題もありましょうが、
片側のスプリング状のシャフトが多少たわんでいるのが原因と考えています。
モーターのシャフト側へ、ほんの少し差し込んでやると調子が良くなるのでは?と思っています。
上:デフォルメ1色のKATO製品ばかりだった1980年代のNの世界に於いて、「正統派1/150」の一輌。
TOMIXが中心メーカーに成長したためか、それともワールド工芸の謳い文句が奏功したのか・・・
1/150スケールどおりのサイズが強調される昨今のNの世界では、見直しに値するモデルだと思う。
だからマイクロは当時の製品の上回りをそのまま使用して再発売をしたのかな?
下:今回の調整の最中に輪芯に黒を入れ足回りを引き立たせました。
正面に作業灯の無い姿は、当時の製品を象徴する物。
しかし正面手摺り(というかクリームパーツのはめ込み)部分の改善と、
スカートの掻き取り修正、カプラーのボディマウント化は実行したいと考えています。
勿論!避雷器は当時のままで。。。