*TOMIXのサロ112って?
TOMIXの113系は、かっちりとしたディテールや滑らかな走行性を併せ持つ、すばらしい製品です。
ところが・・・'80年代前半にリニューアルされるまでは、
(当時のEF81、キハ58系などと同じく)なぜかステンレス製のスカートを持ち、
実物にあまり似ていない顔、はめ込み部分が合わずに隙間だらけの窓ガラス、騒々しい動力と・・・
お世辞にも「良い」とは言えませんでした。
特に側面窓のはめ込みは・・・大袈裟に表現されたサッシ表現の銀色と、
ボディとの間に大きな隙間が目立つし、
同じようにボディとの隙間が大きいHゴムまで銀色になっているなど、
当時の私にとって、全く購買欲をかきたたせるものではなかったのです。
ただひとつ・・・サロ112を除いては。
旧製品サロ112(奥)とリニューアル品サロ110(手前)
この車両は、元サロ152/サロ163であり、二枚が一組となったサッシレスの一段下降窓は、
急行型グリーン車そのまま・・・
サッシとボディの合いが悪いという、この製品最大の欠点を見せなくて済んでいたからです。
ただ、この1形式だけ買っても仕方ないし、
ほとんど同じ形態をしているKATOのサロ152でいいじゃん!と思ったため、
結局は手に入れることはなかったのです。
また、実車は1980年ごろまでに廃車されてしまったので、
TOMIXが113系をリニューアルする際にラインナップされたのは、
二段窓がずらりと並ぶサロ110・・・113系廃止まで見られたものに代わってしまいました。
*サロ112を入手・・・そして改造箇所を考える
2006年秋、中古模型ショップで、そんなサロ112の「そこそこ美品」を見つけた私。
既に我が鉄道のTOMIXリニューアル113系は、廃車直前の姿で11連化できています。
でも、「旧い絶版製品」が好きな私は、このサロ112が欲しくなってしまいました。
実物編成や時代考証にこだわらなければ、
リニューアル編成の中で活用してみるというのも、模型としてはおもしろいかもしれません。
・・・ということで、そうと決まれば、購入です。
左写真:左がサロ112、右がサロ110。クーラー、ベンチレータの色合いに注意。
右写真:左がサロ112、右がサロ110。サロ11のプラ車輪とグレー色調の下回りに注意。
もちろん、これを最新113系編成に組み込むためには、改造が必要です。
まず何より、連結できなくてはいけません。
リニューアル113系は全てTNカプラー化しているので、サロ112にもTNカプラーを装着させなきゃ。
これは・・・床板の改造が必要でしょう。
続いて見た目では・・・TOMIXは'80年代当時から、クーラーとベンチレータを別パーツにしていますが、
残念ながら屋根板と同じ色になっています(リニューアル品は、屋根とは色が違う)
このままの状態でリニューアル編成に組み込むと、屋根上の見た目の違和感が大きすぎます。
クーラーとベンチレータを最新パーツに交換するか、塗装する必要があるでしょう。
また、小さなことですが、ドアHゴムの銀色も、グレーにしておきたいところです。
*いざ、改造
①TNカプラーの装着
基本的には、
TOMIX、KATO旧製品へのTNカプラー装着
で書いた方法の応用です。
TNカプラーを装着するため、床板の車端部を切り落とします。
室内側に1.0mmプラ板を貼り、このプラ板にあてがうように、TNカプラーを付けました。
TNカプラーの固定は、おなじみ(?)2本の真鍮線です。
真鍮線とTNカプラーの台座部分とでプラ板を挟み込んでいるだけなので、
前後方向には動かすことができ・・・これで前後位置調整できます。
左写真:床板を現物あわせでザクザク切ります。
右写真:プラ板で延長した床板の下からTNカプラーをあてがい、真鍮線を通して固定。
前後方向には動かせるので、微調整がききます。
②室内の加工
床板にTNカプラー装着するのは簡単でした。しかし予想外なことが1点。
ボディは室内床板と一体となっていたんです。
その車端部分が、新たに設けたTNカプラー固定用の真鍮線と干渉してしまったんです。
そこで、「干渉する部分をくりぬく」という対策を施しました。
ピンバイスを使ってたくさんの穴を開けてから、カッターでくりぬき、ヤスリで仕上げています。
そして・・・穴を開けてしまった室内車端部は、
室内側から1.0mmのプラ板をピタリの大きさに切り出して塞ぎます。
デッキと室内の仕切り板も再現しておきました。
これらのプラ板じは、艶消し黒で塗装しています。
また、このプラ板とウェイトも干渉してしまったので、ウェイトはさっぱりと諦めてしまいました。
これでも大丈夫でしょう。
問題があれば、何か積めばいいだけですし。
TNカプラー固定用真鍮線と干渉する部分の床を切り抜き、プラ板で車内側から塞ぎます。
簡単にデッキと車内との仕切りも表現しました。これらは後で黒く塗装しています。
③屋根の加工
リニューアル品と並べて一番目に付くのは屋根・・・クーラーとベンチレータです。
これを最新パーツと交換すれば、色合いもディテールもピタリ!となるはずです。
しかし!!・・・屋根の裏側を見れば、前オーナーが、接着剤をべったりと付けていました。。。
はめ込みだけでは緩くなって取れてしまうので、その対策を施したのでしょう。
それで、なんだか「むしり取る」のも面倒になり・・・装着したままの塗装で済ませることにしました。
ハンブロールは綺麗にできる反面、乾燥が遅くて加工中にべたつくため、
今回は乾燥の早い、タミヤのエナメルカラーを使用しました。
リニューアル品を参考に調合したグレーを、面相筆で塗っていきましたが、
クーラーもベンチレータも屋根から浮いて装着されているので、意外と塗りやすかったです。
ただ、もうちょっと艶を出した方が、リニューアル品サロ110とと雰囲気が似たかもしれません。
手前がクーラーとベンチレータを塗り分けたサロ112。奥はサロ110
若干色合いは違いますが、違和感はかなり軽減されています。
④窓の加工
(上に書いたように)車端部の室内の床がプラ板の厚み分だけ上がった結果、
窓ガラスと干渉してしまうため・・・窓ガラスの一部をカットします。
その他、トイレ窓を裏から白く塗り、ドア窓Hゴムをグレーにしています。
ちょっと工夫したのはHゴム。
銀色塗装はぽってりと盛られていて、塗料の乗りも悪いので、
ヤスリで全て落とし、かつ表面を平らにして、
クーラー、ベンチレータ用に調合した同じグレーを、面相筆で塗っていきました。
トイレ窓を裏から白く塗装し、ドア窓のHゴムをグレーに塗装しなおしました。
⑤幌の装着
リニューアル製品にあって、旧製品にないもの・・・最後は幌。
パーツBOXを引っ掻き回したら出てきた、KATOの何かのASSYパーツを使いました。
旧製品は幌本体が付いていない代わりに、台座の部分が大きくなっているので、
軽くヤスリをかけて背を低くし、接着面積を増やした上で、
ゴム系接着剤を用いて装着しました。
リニューアル品と連結させると、直線部分では幌同士が接触していますが、
TNカプラーはカーブでは連結間隔が広がるので、問題はないようです。
幌を接着
⑥台車の塗装
旧製品の台車や床下は、黒というより濃いグレーとなっていて、
その差もリニューアル品との違いを目立たせています。
なので、台車も艶消し黒を軽く塗っておきました。
尚、車輪も当時はプラ車輪ですが、これはそのままにしています・
ちなみにサロは空気バネ台車を奢っているはずなのに、旧製品は普通車の台車を流用しているので、
いずれは台車を交換しようかとも考えています。
*そして・・・
以上のように、比較的簡単な加工で、
旧製品のサロ112をリニューアル編成に組み込むことができるようになりました。
屋根色やクーラー、ベンチレータの色合いが違うとかいう見た目、
側面行先表示器がないとか、グリーン車帯が残っているとかいう、
JRマーク付きの113系末期には似つかわしくない姿であるのは承知です。
でも、もしサロ152改造のサロ12がずっと残っていたら、こんな感じになったはず、
グリーン帯が廃止されなかったらこうだったはずと、
模型ならではの遊び心も加え、この編成に組み込んで使用するつもりです。
幌が密着していい感じ!