このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

スプリングウォーム機のメンテナンス



主題材はEF66(JR貨物更新色)

はじめに・・・
TOMIXが香港製から日本製に切り替えたときから、長年ずぅっと採用し続けた独特の動力装置、
それがスプリングウォーム方式でした。

一般的には、モーターのシャフトからユニバーサルジョイントを介してウォームギアが接続し、
それに接した台車のスパーギアに動力を伝達する・・・・・という伝達方式を用います。
ところがKATOの旧製品(電機)は、ユニバーサルジョイントを省略し、
代わりにカップギアなる「カップの内側に歯が刻んである」ギアを使っていました。
TOMIXの場合も、ユニバーサルジョイントとウォームギアを兼ねた、
一本のスプリングでモーターの動力を伝達するという、思い切った簡素な構造を採用していたのです。
(KATOは電車などは全く別の構造でしたが、TOMIXは全動力に採用するという徹底ぶりでした)

これら・・・一般的な構造よりも簡素化された動力伝達方式は、
縮尺が小さく、安価なNゲージならではの方式と言えるかもしれません。
簡素化することで部品を減らし、組立工数やメンテ工数を減らすことが可能だからです。

スプリングウォームのお掃除
実は・・・最初にスプリングウォーム機のメンテを実施したのは、EF64でした。
1980年頃に購入して以来、実に滑らかで静かな走行性を維持していたのに、
ここ1,2年で急激に衰え、「ギクシャク」した走りになってしまったのです。
いくら車輪を磨いて綺麗にしても、全く改善する気配がありませんでした。
そこで思い切って分解してみたところ、・・・スプリングウォームならでは!の弱点を発見したのです。
慌てて他のロコや電車も見てみると、程度の差こそあれ、全く同じ状態。
「これは定期的なメンテが必須だ」・・・・私はそう結論しました。

ここではTOMIX製EF66を主題材に、その分解方法も交え、スプリングウォームのメンテをご紹介します。


スプリングウォームを使った動力の最終形とも言える、EF66の分解自体は簡単です。
ボディをちょっとふくらまして下回りを外し、下回りにはめ込まれたスカートを外します。
台車は全てのTOMIX機に共通で、つまんでこじれば簡単に取り外せます。


最終形スプリングウォーム動力には、ネジが一切使われていません。
中間台車を外し、床下機器パーツを外し、ヘッドライト基板を外すと、ダイカストが左右に分離、
モーターとスプリングウォームを取り出すことができます。

長いスプリングウォームは、ちょうどウォームギアの働きをするピッチが広くなった部分に、
黒い樹脂性の「筒」がついています。
この筒の中には、大量のグリスが塗られています。
ところで最初にメンテしたEF64の場合は、本来乳白色であるはずのグリスが、
汚れを含み、旧くなって茶褐色に変色していました。

しかも!!黒い筒を取り除いてスプリングウォーム全体を見てみると・・・・
なんと大量の糸くず(綿ぼこり)が、グリスの粘性の助けも借りて、スプリング本体に絡みついていたのです!
これでは快適な走行など、望むべくもありません。
この糸くずを除去することで、以前のような快適さを取り戻したのは、言うまでもありません。


EF66は新しい製品、まだ走行も少ないため、
肉眼で見る限り、上写真左のように、さほどは糸くずが絡んでいるようには見えません。
しかし、拡大してよく見ると・・・・右写真のように、細かい糸くずがまきついているのがわかりました。
(EF64は、肉眼でもすぐに確認できるほど、この何倍も凄い状態でしたが・・・)

スプリングウォームは、その構造上、「ジー」とか「ジャー」とかいうような音が反響しやすく、
またウォーム部分の強度も不足しがちなことから、
樹脂製の筒で覆い、かつ大量のグリスで潤滑させる、という方法をとったようです。
ところがスプリングは「線材」ですから、溝が切ってある通常のウォームギアよりも、
糸状のホコリが巻き付きやすいという弱点があるのは明らかです。
しかも・・・そこには大量のグリスが存在し、その粘度で糸くずを吸い寄せ、絡めてしまう・・・・・
この2つの弱点により、この動力装置は定期的な「糸くず除去作業」を必要とする、
・・・・これが私の結論です。

さて、分解さえしてしまえば、作業自体は簡単です。
スプリングに絡んだ糸くずを、爪楊枝やピンセットで、丹念に取り除くだけですから。

ぱっと見はきれいだったEF66でも、片側だけで下写真のような収穫がありました。。。
これを見ると、やっぱりときどきお掃除してあげたいと思いますね。



さて、グリスの扱いですが・・・
騒音を減らし、磨耗を防ぐ意味では、あった方がいいに決まっています。
しかし、糸くずの絡みつき対策としては、無い方がよいのです。
旧くなり汚れを含んで劣化したグリスは、逆効果にもなりかねないし。
ですから、ある程度旧いグリスは拭き取り、新しいグリスを充填し直すのがベストでしょう。

しかし私は手元にグリスがないので・・・旧いグリスは拭き取って、そのまま組み立ててしてしまいましたが、
今のところ、それで音が大きくなったとか、走行に支障が出たとかは感じていません。
また、比較的新しい製品は、なるべく糸くずだけを除去し、グリスは残すようにしています。

車種、ロットによる、分解方法の違い
同じスプリングウォーム方式の動力とは言え、長年にわたり作られ続けてきたので、
車種により・・・いや同一車種でも製造ロットによって、様々な構造をしています。
とても全ては紹介できませんので、ここでは3つ、分解方法をご紹介します。

ED751000

基本的にはEF66と同じ、最終形の動力です。
ネジを全く使っていないので、簡単にばらすことが可能です。
EF66の説明に、特に追加することはないでしょう。
EF30なども同じです。

DF50(初期製品)
ナンバーが印刷されていて、ヘッドライトが電球の時代のロットは、
ネジがたくさん使われていて、構造も複雑です。
この分解方法を理解するまで、最初は結構な時間がかかりました。。。


まずは屋根の黒いパーツを取り外します。
屋根上の突起(煙突?)に指をかけ、スライドさせると・・・簡単に取り外すことができるんです。
(このマジックが、なかなかわからなかった!)
屋根パーツの下から現れたネジ2本を緩めれば、ボディと下回りを分離できます。


ヘッドライト基板をダイカストにとめるネジが、左右のダイカストの固定も兼ねています。
このネジを外すと、ダイカストを取り除き、モーターとスプリングウォームを取り出すことができます。

ダイカストは、あくまで通電とウェイトの役目を果たしているのであって、
モーターや台車は、樹脂製の「床板」に固定されているんですね。
ここが樹脂だから、音が反響して大きいのでしょうか?

スプリングウォームはこの樹脂製床板に作られた溝状の部分に収納され、
ここに大量のグリスが盛られていました。
・・・しかも大量の糸くずとともに。。。。

EF64

上に紹介したED75とDF50の中間的な構造です。
ボディは簡単に取り外せますが、その下から・・・・なんと8本!ものネジが登場します。
このネジを全て取り外さないと、モーターは現れません。
・・・・かなり面倒です。


このEF64の動力部構造は、かなり複雑です。
ダイカストの上に通電用のプリント基板が載り、それを黒い金属パーツで押えています。
8本のネジは、スカート一体となっている台車固定用の床下樹脂パーツの固定も兼ねているし、
中間台車を固定している樹脂パーツは、モーターとダイカストの間のスペーサーにもなっているのです。
今まで紹介した中では一番、お金も手間もかかっていると思われます。

初期DF50の構造は、床板全体が樹脂になっていたため、走行音の反響が気になりました。
それを改善するため、スプリングウォームとモーターをダイカストの中に「封印」し、
なおかつ振動を抑える目的で、大量のネジを使ってがっちりと組み上げたのではないかと想像します。
確かに・・・・このEF64も、同じ構造をしたEF71初期製品も、
スプリングウォームとは思えないほど、静かな走行性を確保しているのです。
しかしこれでは、明らかにコストがかかります。
以降の製品では、ネジを使わず、はめ込みだけで組み上げる簡素な構造となり、
それとともに、また独特の「ジャー」という音が復活していきました。

終わりに
長年にわたり、様々な動力で使われ続けたスプリングウォーム方式。
当初、私はその「ジャー」という音が嫌で、なかなか買わなかったものですが、
生産されなくなった今では、その音も懐かしく思えるようになりました。

簡素な構造であるがゆえに、メンテナンスは必要です。
でもメンテナンスさえすれば、所期の性能を簡単に維持・復活させることが可能なこの動力方式は、
永遠のライバルであったKATOのカップギア動力と同様、
これからも長く付き合っていきたいと思っています。






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