日本三大珍市名

さいたま市

（2001年5月1日 埼玉県浦和市・与野市・大宮市が合併）
　一般公募では「埼玉市」の意見が多数を占めたが、新市名検討委員会は一次選考で「埼玉」「さいたま」「さきたま」「彩都」「関東」の5案を、二次選考で「さいたま市」を選考し、協議会で決定した。



南アルプス市

（2003年4月1日 山梨県八田村・白根町・芦安村・若草町・櫛形町・甲西町が合併）
　市名は一般公募し、多い順に「南アルプス」「こま野」「峡西」だった。この3候補から協議会委員による投票の結果「南アルプス」に決定した。理由は、
• 南アルプスの麓に位置するこの地域が、地理的にイメージできること。
  
• 6町村がともに共有する南アルプスの豊かな自然と澄んだ空気といった、自然環境の特徴と一致していること。
  
などだが、「長野県側の市町村合併で『南アルプス』の名称を使われるかも。それより先に」の意見も強かった。



四国中央市

（2004年4月1日 愛媛県川之江市・伊予三島市・土居町・新宮村が合併）
　一般公募では「宇摩市」「うま市」「法皇市」の順だったが、新市名候補選定小委員会により「宇摩・うま」「法皇」「ひうち」「四国中央」「東愛媛・東えひめ」の5候補に絞り込まれ、協議会委員による投票の結果「四国中央市」に決定した。理由として、

• 高速道路の結節点でもあり、四国の交流拠点。
  
• 製造品の出荷額が年間六千億円で、高松や松山を抜いて四国一位になる。
  
• 全国からみても、地理的にイメージできる。
  
など。



3市における新市名公募の集計結果

新市名	さいたま市	南アルプス市	四国中央市
集計結果 （1位〜10位） 太字は最終候補に選考された市名	埼玉市 さいたま市 大宮市 彩玉市 彩都市 浦和市 さきたま市 大和野市 彩京市 彩市 関東市（33位）	南アルプス市 こま野市 峡西市 巨摩野市 こまの市 巨摩市 やまなみ市 こま市 あやめ市 みどり市 カナ別1位は「コマノ」	宇摩市 うま市 法皇市 ひうち市 四国中央市 東えひめ市 東愛媛市 えひめ市 瀬戸内市 愛東市

• 新市名の決定について
  
  「平成の大合併」が進み、全国で新しい市や町が雨後のタケノコのごとく生まれている。平仮名、片仮名、合成……。市町名はというと、見た目や語感さえよければ何でもありといった感がぬぐえない。
  
  　新市の名称は、既存の市と同じ名称でなければ自由に決めることができる。平成大合併では、公募で集まった候補を協議会で絞り込んで決めるケースが多い。
  
  　しかし、その選定方法には不透明さが付きまとっているという事実もある。
  
  
  • 埼玉県浦和市、与野市、大宮市による新市は、一般公募では「埼玉市」の意見が多数を占めていたが、「さいたま市」に決まった。
    
  • 岐阜県平田、南濃、海津の3町による新市は、一般公募への応募総数2,500通のうち、3町の郡名である「海津」を希望する意見が500通届きながらも、わずか2件しか住民投票で寄せられなかった「ひらなみ市」に決まった。（3町の頭文字「平」「南」「海」をとったもの）
    
  
  　また、旧市町名を含むかどうかでも判断が分かれる。「人口の多い旧町名になると吸収のイメージがつきまとう」などが主な理由。最優先すべきは一体感の醸成で、いらぬ火種は残すなというわけだ。
  
  「土地の履歴を無視した安易な命名」と地名研究者らは厳しく批判する。香川で誕生した「さぬき」「東かがわ」の両市なども、旧国名や県名を流用した悪例の典型だという。
  　引き換えに、地域に根差した由緒ある地名が多く消えていくことを惜しむ声は強い。
  
  
  

  ひらがな市・ 旧国名や県名を流用	新市名	歴史ある地名
  公募結果を参考に協議会で議論し決める	要点	専門家・研究者が議論し決める
  市に夢や一体感を醸成する。 全国的に注目を浴びる。	利点	地名は歴史や文化・伝統を表す。 地元の慣れ親しんだ地名である。
  地域の歴史や文化を無視。 地域の範囲が曖昧で何県にあるのかすらピンとこない。 住所を書く時にひらがな交じりでバランスが悪い。	欠点	人口の多い旧市町名になると吸収のイメージがつきまとう。 読めない漢字や、常用漢字でも読みづらい場合もある。
  さいたま市（埼玉県） 南アルプス市（山梨県） さぬき市（香川県） ひらなみ市（岐阜県）等々	実例	-

  
  
  　こうして歴史ある地名が消え、妥協の産物として「南アルプス市」（山梨県）「ひらなみ市」（岐阜県）「高原町」（愛媛県）「あさぎり町」（熊本県）などの珍名が次々と産声を上げる。
  　そんな現状に地名研究者はこぞって抗議の声を挙げ、新名称がどの範囲を示すのかをあいまいにする恐れがあると指摘する。確かに、南アルプス市やひらなみ市と聞いても何県にあるのかすらピンとこない。
  
  　合併協議会に地名の専門家が含まれていないことに苦言を呈する研究者も多く、地理・歴史の教員や研究者などで構成する検討会の立ち上げなどを訴えている。