このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
「ノーアウト満塁は意外に点にならない」
◆実戦例
一九九三年のプロ野球ペナントレース終盤、ともに優勝を争っていた中日とヤクルトの直接対決。延長戦で、中日がノーアウト満塁のチャンスを迎える。打順は中軸・パウエル、落合、彦野。ここでヤクルトのピッチャー内藤が、三者三振で切り抜けた。
この年は、ヤクルトがセ・リーグのペナントを手にした。
◆解説
得点を入れるには、当然、ランナーがいた方が良い。中でもランナーは得点圏にいた方が、得点は入り易い。もちろんアウトカウントは一つでも少ない方が、得点のチャンスは長く続く。その究極が、ノーアウト満塁である。
しかし、得点をし易いのはランナー一三塁だとよく言われる。ヒットを打って一三塁、ヒットを打って一三塁という状況を続けていくのである。一三塁だと、攻撃の策も立て易いという。
一方で、ノーアウト満塁はどうか。「ノーアウト満塁は意外に点にならない」という成句がある。なぜか? 本当ならば、その原因は何か? 根拠はあるのか? 検証してみよう。
◆検証1
ノーアウト満塁というのは大チャンスである。誰もがビッグイニングを期待する。そうであるから、逆に0点、1点で終わると、印象に残る。ことさら大きく取り上げる。
普段からノーアウト満塁は点にならないということはないのに、ノーアウト満塁なのに意外に点にならないという印象を与えてしまう。
かくして、「ノーアウト満塁は意外に点にならない」と言われるのである。
◆検証2
満塁になると、攻撃の策が無い。もう、バッターが打つしかないのである。
例えば、ランナーが一塁や一二塁なら、盗塁やヒットエンドランがある。もちろんバントもある。また、ランナーが三塁にいればスクイズがある。
満塁だと当然、盗塁はない。フォースプレーになるのでスクイズも難しい。相手をかく乱するような策は、ほとんど立てられないのである。
したがって、点を取るにはバッターが打つしかない。バッターにプレッシャーがかかることになる。
また、バッターが打っても、ランナーを容易に動かせないため、単打であると、1点しか入らないことが多い。
ヒット以外、犠牲フライや内野ゴロで1点を取ると、例えば1アウト一二塁などとなり、得点のチャンスは一気に中途半端なものになる。2点目を取るのは容易ではない。
ノーアウト満塁のチャンスといえども、案外に得点になりにくいものなのである。
かくして、「ノーアウト満塁は意外に点にならない」と言われるのである。
◆検証3
満塁になると、守備側はタッチプレーからフォースプレーになるため、守り易くなる。
ノーアウト満塁になる場合、大抵の場合はヒットを立て続けに打たれたのではなく、守備の乱れや、ピッチャーの制球難によるものである。
したがって、満塁になってしまえば、守備は守り易いので、大量点になるほどの乱れは生じにくい。
ピッチャーの制球も、押し出しを与えるわけにはいかないので、開き直ってストライクを投げることになる。ストライクを投げても、そう簡単にはヒットは打たれないもの。せいぜい内野ゴロの間に1点を与える程度で済むということが多い。
ノーアウトであると、目先の1アウトを取ろうという意識になり、1点は与えても確実に1アウトを取るという意識になる。さらに、内野ゴロで併殺が取れれば、1失点で済むことになる。
ノーアウト満塁のピンチといえども、案外に大量失点にはなりにくいものなのである。
かくして、「ノーアウト満塁は意外に点にならない」と言われるのである。
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