このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


 「代わった所に飛んでいく」



 ◆実戦例

 最も有名なところでは、第78回高校野球選手権大会決勝戦・松山商対熊本工の試合が挙げられる。同点の九回裏、熊本工が1アウト満塁でサヨナラのチャンス。ここで松山商が、守備固めでライトの選手を交代。その直後、そのライトに大飛球が上がった。犠牲フライでサヨナラかと思われたが、見事に捕殺で併殺となった。
 この後、延長戦で松山商が勝ち越し、全国優勝を遂げたのである。



 ◆解説

 代わった所に飛んでいくといわれる。守備側が選手を交代した途端に、決まったように打球がそこへ飛んでゆく。野球を観戦していると、意外とよく起こるものである。そのたびに、テレビでは「代わった所に飛んでいくといいますが……」などと解説している。これも野球での不思議な現象の一つだ。



 ◆検証1

 守備が交代すると、そこに焦点が当たる。そこへ偶然打球が飛ぶと、平凡な普通のゴロでも印象に残る。
 選手交代などしていなければ、平凡なゴロなど印象に残らない。選手交代しても、全く別の方向に打球が飛んでいれば、別段取り上げられることはない。得てして選手が交代して焦点が当たった所へ打球が飛んでいったということで、ことさら大きく取り上げるのである。
 その結果、選手が交代した所に打球が飛ぶという印象が残る。
 かくして、「代わった所に飛んでいく」と言われるのである。


 ◆検証2

 打者としては、守備が代わったばかりの所は狙い目となる。
 代わったばかりだと、野手がまだリズムがつかめてない。ゲーム勘がつかめていない。
 途中交代に限らず、野手は、最初に打球をさばくまではまだ地に足が着いていない。一つ打球をさばいて初めて本来の自分の感覚がつかめる、という。
 最初に打球を捌くまでは、非常に緊張した状態である。そうすると、エラーも出易い。
 また、他の野手が試合に熱中しているのに対し、まだ試合に入りきれていないということも有り得る。ランナーがいれば、状況判断ミスにもつながりやすい。
 従って、打者にとっては守備が代わったばかりの所は狙い目なのである。
 かくして、「代わった所に飛んでいく」と言われるのである。


 ◆検証3

 守備を交代するというのは、守備に不安がある野手を、守備要員に交代するということが多い。
 1点を争う場面では、迎えた打者が、どの方向にどんな打球を飛ばすのかを想定して、それに備えた守備体型を敷く。
 そして、打球が飛ぶであろう方向の野手の、守備範囲や、肩の強さを判断し、より守備力に優れた野手がいれば、その野手に交代ということもある。
 つまり、打球が飛んで来ることを想定して野手を交代しているのである。結果、守備側の策が当たり、想定通りの方向に打球が飛ぶ確率が高い、ということになる。
 かくして、「代わった所に飛んでいく」と言われるのである。



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