このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


ひ と り ご と


   『急行はまなす』を文化遺産に!


 思い立って、知るヒトぞ知る 『急行はまなす』 に乗ってきました。座席客車つまり機関車に牽引される列車で、しかも急行、さらにそれが定期夜行列車。以前は当たり前だったこういう列車も今ではとうとうただこれだけになってしまいました。

 JRに奇跡的に残された最後の列車、青森−札幌間を7時間半かけてひた走る『急行はまなす』に乗ることは、電気機関車ファンのボクにとって夢でした。北海道への新幹線が開通してしまえば、この列車もやがては消え行く運命なのでしょう。

 熱海を夕方に発ち、『特急踊り子』『東北新幹線はやて29号』『特急つがる29号』と乗り継ぎ、青森駅に降り立ったのは22:18でした。目的の『はまなす』はすでにホームに入って、発車を待つ乗客に暖房を提供してくれていました。閑散としたホームに14系客車の床下から発電機の轟音がとどろいています。この超レアー列車がホームで出発を待っていて、それが毎晩当たり前に繰り返されているのです。それにしても青森駅にはなんと夜行急行が似合うことか。

 この列車には寝台車、座席車のほかにカーペット車両も連結されています。数人のお客さんが寝転がっていました。B寝台はカーテンが下ろされてどのくらいの乗客があるのかわかりません。自由席は指定席よりも空いていたみたいです。

 人気のほとんどない構内をあちこち歩回り写真を撮りました。先頭の機関車はED79の12号機、交流電気機関車独特の赤い車体で、『はまなす』のヘッドマークが誇らしげです。函館までの先達をお任せしました。

  22:45、いよいよ出発です。鉄ちゃんのフラッシュの見送りもありません。静かなものです、ここではこれが日常なのだから。出発後しばらくしてなぜか停車しました。そこへ隣に静々と長大な列車がすれ違いにやって来てこれも停車しました。丸い窓のついた最新車両の寝台特急です。カシオペアかそういうような人気列車です。お互いに記念撮影タイムでした。向こうは銀色の二階建てアメリカンムード、こちらは古びたペシャンコ顔の急行列車。予想外の楽しいひと時でした。

 列車は真っ暗な津軽半島を北上します。何処を走っているのか見当もつきません。長い青函トンネルをくぐりぬけ、見えない津軽海峡を右に延々走り続けると、初めての停車駅は函館です。そこで電気機関車はお役御免、替わって青いディーゼル機関車のDD51が札幌まで引っ張ってくれます。ここからは今までと逆方向に走ります。

 時折過ぎてゆく遠い灯りの他は真っ暗で何も見えません。でもたぶん雪景色なのでしょう。列車はたまに独特のガクンというショックを放ったり、はるかに響く汽笛が長距離列車の雰囲気を高めてくれます。座席はとてもリクライニングが効いて、昔のように腰が痛くなることはあまりありません。光量が落とされた車内灯、十分な暖房とスキットルのウヰスキーが心地よい眠りに導いてくれました。

 長万部・東室蘭・苫小牧・南千歳・千歳・新札幌と停車して終点札幌には6:07に到着しました。完全に特急並みの停車駅です。今年は暖冬とはいえ、雪の中をはるばる走ってきました。ホームの先端は少し積もった雪が完全に氷になっていました。そこで長−い車両のDD51の93号機も写真に収めました。初めての札幌は暁闇の名残でまだ薄暗かったです。ホームを離れ駅の階段を下ってゆくとき、背後で機関車の汽笛がピーッと聞こえました。お疲れ様でした。

 最後の列車は『オホーツク1号』ちょっと懐かしい特急型気動車キハ183系で旭川へ。果てしなく続く雪の原野は、この地方初めてのボクにとって異国を想わせる風景でした。ホント、さすが北海道!広いですね。旭山動物園見学ののち、帰路は旭川空港から羽田までたったの一時間半! スジを通して『寝台特急カシオペア』で帰れないところが貧乏性の旅でした。

 

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